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㉑決意と覚悟

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 次の日の学校にて
「籠屋先生、友達は大丈夫だったんか」
教頭は廊下で俺に出くわし声をかける。
「はい、二本とも足は折れていましたけど、元気です」
「よかったな」
「でも、さぼった分は次の会議はお前進行な」
やさしい教頭の罰を受け入れる。
「はい」
「素直でよろしい」
教頭先生、嫌、四谷先生は優しい。

そして、三ヶ月が過ぎた
病院の部屋で六人が話している。
「足のギブスは取れたんですね」
ギブスのとれた足は細かった。非常に。やっぱりしんどいよな。
「おうよ」
「リハビリは大変だけどな」
頑張っている景色がみれる。
「それで、お前らに話がある」
深刻な面持ちで言葉を普段選ばない優さんが言葉を選んでいる。
「お前もいてくれ」
「俺はな、考えたんだ」
「うん、考えたんだ」
「でな、俺は家族の笑顔を取ることにする」
どういうことかが景には分からなかった。
「俺は、もうバイクには乗らん」
「えっ、どうして」
四人は言葉をシンクロさせる。
「考えてみたら、俺がいなくてもこのツーリング仲間の絆は続くだろ」
「だって、バイクの洗車どこでやる」
「でも、優さんはいいんですか、自分のバイクがないのに洗車している所見たら。嫌でしょ」
「いや、どうだろ」
「絶対に嫌ですよ」
この人は何を言うんだ。待って、まず、状況を整理してから。
「行きたいでしょ。ツーリング」
景の言葉は続く。
「まあ、悪いな」
「もう俺は決めたんだ」
「家族が大事なんだ」
「俺が諦めればそれでいい」
神部さんの気持ちは固いようだ。それは、表情からも読み取れるくらいに怖かった。人が何かを決めるときには、いくつかの顔を見せるが神部さんは怖い顔である。それが、本当に正しいのかそれは、俺達にも分からない。
「それに、お前たちは俺の所に来てくれるだろ」
「はい」
「それでいいんだ」
「話は終わり」
「リハビリは三週間いるから、三週間後に俺の家来いよ」

「復帰記念パーティーするからよ」

「急ですね」
俺は動揺している。声が出なかった。出るはずもなかった。
優さんの決意が固いのは分かっていた。でも、このままじゃダメだとも感じる。
何もなかったことに、嫌、皆は分かっている。
こいつは、やせ我慢している。
その直感が後で大変なことになる。

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