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⑭甘え方と我儘

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回想から現在へ

「何だ、籠屋」と時が籠屋に声を何度もかけている。

バイクで道路を走っている。走っている最中に俺は何を考えている。事故ったらどうするんだ。過去は過去だ。あの時からだ俺の世界が少し変わったのは。
「話を聞いているだけか」
北条が言葉を交わす。
「何か話せよ」
「神部さんが退屈してるだろ」
渡辺渉がせかしてきた。
「そうだな」
「籠屋が高校生の時にゲームの大会で三位になった話はどうですか」
って、渉がなぜ俺の話すテーマを決める。
「何、自慢話かよ」
「でも、聞いてみたい」
顔の表情が分からないが声の感じだと好感触の予感がする。渉に言われて話すのは癪にさわるが仕方ない。
「ごきぼうとあらば」
「じゃ、お願いするか」
「あれは・・・・」


時は過ぎ、話は変わって
ツーリングに三回行き。
籠屋の世界は変わり始めている。そんな中で神部さんがある言葉を出す。
「来週は俺の家に集合な」
「籠屋は初めてで場所分かんないよな」
「渉、頼める」
「了解」
渡辺は軽く返事をする。
「お土産で、どんなつまらないものを持ってくるかな」
神部優が声のトーンを一つあげて籠屋に聞こえるように話した。
「それは、百貨店の美味しいデザートですよね」
よだれを垂らしている時をよそめに、何か持っていかないといけないのか。そういう経験がない籠屋は困ってしまうと機転を利かせて、神部優が一人事のように話してくれる。でも、今の籠屋には分からない。だから、皆に聞こえる声で話している。誰かが意図を気づいてフォローを入れてくれると分かっているんだ。このチームを信頼している神部だからこそできる。裏技なのだ。
「持っていかないとダメなパターンですか」
籠屋はすでに困っていた。
「そうなるかな」
「俺は、そうだな」
「困るな」
「困るのは籠屋だよ」
渡辺がフォローを入れる。
「嫌、何がいいか言っておいた方が楽かと」
「まあ、リクエストは聞きます」
籠屋の代わりに渡辺が答えている。ああ、困っている、困っている。そんなに考えることじゃないからな。まあ、礼儀としてお土産は持っていくんだぞと齢二十五歳の籠屋に分かるようにみんなはふるまってくれている。


そして、神部の家に集まる日
バーベキューもするということなので値段が一番高いお肉を近所のスーパーから買っておいた。
「よお、籠屋早い」
渡辺は颯爽とバイクで現れた。バイクのエンジンを切ってバイクからは降りることはしないようだ。
「だから、五分前行動だって」
「めんご」
「行くぞ」
渡辺はバイクのエンジンを入れた。籠屋はバイクに乗りヘルメットをかぶりエンジンを付けた。
バイクで繁華街を通り抜けて集合住宅が立ち並んでいる景色を見ながら通って行った、バイクだと、四十分くらいで着いてしまう。案外近いんだ。と考えていると。庭から声が聞こえた。
「やっと来たか」
神部優さんの横に。奥さんと息子さんがいる。
「初めてだろ」
「俺の奥さんの歩だ」
「いつもお世話になっております」
神部歩さんは妊婦だ、言葉を出しながら、動きづらそうにこっちに来てくれている。
「はい、お世話しております」
ここは、ぼけた方がいいと神様からの信託というかなんというか、ぼけてしまおうと考えが思いついてしてみる。
「何だと」
「あっはははは」
全員が笑った。
何なんだこの感じ、皆を笑わすってこんなに気持ちいいんだ。始めての感情だ。やみつけになりそうだ。
「いつの間にそんなぼけるということを覚えているんだ」
一番驚いていた神部優さんの心の声が出てしまっている。
「じゃ、これ、お土産のお肉です」
皆の目の色が変わる。
「サンキューな」
「其処等へんにバイク置いて」
その指定された場所には神部優さんのバイク以外が置いてあった。距離をある程度とり置く。
「俺が見てやろう」
「今日は洗車だけやろうかと」
「ねじのゆるみで事故になった奴がいる」
「見てやる」
こういう所を見習いたい。親分肌の優さんは結構なおせっかいだ。でも、その分気持ちいいくらいに素直な性格だ。それも相まって、喧嘩をする人もいるみたいだ。嘘がつけないというかお世辞を言えない性格である。でも、優しい。ここの誰よりも心が綺麗なんだ。
「それも込みの肉だ」
神部さんは言葉を出しながら、目が肉になっている。
「じゃ、お願いします」
こういう時は素直に甘えるのが一番だ。それが、この優さんとの付き合い方だ。
「子供たちの面倒を見てくれ」
「分かりました」
お願いがストレートで嬉しいのは誰でもである。
「何して遊ぼうか」
この子は七歳の守君だ。
「ゲーム」
「ゲームがいいよ」
ゲームも色々そろえてあるな。
子供の趣味だな。
この子は対戦型のゲームか、レース系のゲームか。
「じゃ、対戦型のスマラクでもしようか」
「うん」
目が綺麗だ。小さい子は目が綺麗な子が多いい気がする。それは、純粋な子が多いいから。
これから大人になり悪い遊びを覚えて、だんだんと純粋な気持ちやら等が無くなっていって目が綺麗じゃなくなる。汚くなるんだよね。そう、濁るんだ。今が一番この子にとって大事な時だ。こんなにみんなから愛されて過ごすなんて親に感謝しなさいよと教師っぽく言ってもいいが言わなくても神部優さんの子供が悪くなるはずがない。
きっと・・・・。
「僕は」
「スターレットがいい」
「じゃ、俺は、ブートウにしておくか」
ゲームを始めると本気モードに突入している。
結果、
「強――い」
「何で、これはね。ここのボタンをこのタイミングで押すと戦いやすくなるだろ」
「えーーーー」
「教えて」
子供のだだは久しぶりだった。姉ちゃんの子供を見た時以来だ。
「いいよ。案外簡単だし」
何か人にものを教えるのは案外嫌いじゃない。むしろ教えたい。これもツーリング行きだして、自分の何かが変わった気がする。教えてその人がお礼を言う瞬間が俺は好きだ。教師は俺の転職かも知れないと最近考え出した。今まではそういうように感じられなかった。
そう考えれるようになったのはツーリングに行きだしてからだ。

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