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④病みと過去

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 数十分後
「って森林地帯にきたんじゃない」
気づいたら周りは草木が生えている道に変わっていた。
「そうだな」
「彼女を乗せて走る前の予行練習」
「てへぺろ」
「うわーー、男がやるとキモイ」
「それに、俺の予想とドンピシャ」
「そればかりじゃないんだ」
慌てて渡辺はフォローを入れた。
「お前って昔の事故を気にしてるんだろ」
言葉を出しながら運転している。道には車の影は全くなくなった。
「まあね」
少し昔の記憶が蘇りトーンが一段階落ちた。
「それって病んでるのと同じだと感じたんだ」
渡辺渉が籠屋景に対して心配している。だから、これきっかけでも変わってくれるようにと。「一番の見ごろなこの日にしたんだ」
渡辺は心の中で言葉を続ける。きっとお前は変わらないかもしれない。でも、いいんだ。いつか変わってくれることを。期待してこの景色を見せる。俺はこの景色のおかげで世界が変わった。だから、籠屋景も変わって欲しい。それは、俺のただの願望だ。と渡辺は心の中で思った。言葉に出そうとせずにこの光景で感じて気づいてほしかった。
「だからお前にこの景色を見せたかったんだ」
見たまえ、この世界を変える景色を。
少しでも気持ちが変わることを込めてこの景色を見せるんだ。

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