私は2度世界を渡る

リサ

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2度目の異世界編

28.招かれざる訪問者達

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 読者の皆様1週間ぶりです!

 最近何かと忙しくてパソコンを触れなかった作者です・・・・ >︿<

 これからもっと忙しくなりそうなので、更新をしばらくの間週1にしようと思います。
 毎週月曜日に更新しようと思っています。時間は出来るだけ0:00に固定できるようにします!

 誠に勝手ながらよろしくお願いします!!!

――――――――――――――――――――

 ルイを送り届け森に戻った翌日、奏は久しぶりにフードを脱ぎ髪と目の色をもとに戻して綺麗な滝がある場所に来ていた。


「よし! 始めますか!」


 奏は1番下の滝壺の冷たい水の中に手を入れた。相変わらず痺れそうなほどの冷たさだが、手に魔力を這わせるように流していく。火魔法を応用して手に接している水だけを瞬間的に温めていく。ここには魚も住んでいるので、生態系を壊さないための配慮だ。体から離れた水はすぐ元の水温に戻る。
 ひと肌ほどの水温に感じるくらいに魔力を調節すると、奏は靴を脱いで魔力を全身にまとい滝壺に飛び込んだ。


 最初は深くまで潜ってみた。
 滝壺は思っていたよりもずっと深い。しかし水はどこまでも澄んでいて魚が身を翻すたびに、水中に差し込む光が反射し宝石のようだ。今度は目を閉じて耳を澄ませてみる。音を発するものが周辺にあまりないせいか、水の中はすごく静かだ。

 澄んでいて時折きらめく静かな世界に1人だけ。そう錯覚させるほど美しい空間だった。


 ある程度潜ると今度は下から水面を見上げてみた。
 空の青さと不規則に走る黒い線が陽の光に照らされながら不規則に形を変えていて面白い。光が少し眩しいが、潜っている景色とはまた違った美しさだ。
 そのまま力を抜いて体を浮上させ、水面から顔を出した。ぬれた顔が外気に冷やされ、体の温かさと相俟ってとても心地がいい。奏は気持ちよさそうに息を吐いた。


 服は装備を兼ねているので着たままだが、魔法で水の抵抗を受けないようにしているので泳ぐことには問題ないし溺れることもない。水から出ても風と火魔法を使って一瞬で乾かすので風邪の心配もいらない。
 魔法のなんと便利なことか。


(魔法使いをパーティーに入れておけば楽なのに。)
 
 他の冒険者にはさして興味はなかったが、ギルドで見た限りは魔法使いの冒険者は全体的に少ないように見えた。保有魔力量が多いものも中にはいたが、魔法は使わず自前の武器で戦っているようであった。野営の時は使うかもしれないが・・・・・・・。

 実際に魔法を主軸に使う冒険者は絶対数的に少ないのだ。誰しも魔力は持っているが、実践で使えこなせるほどの量と技術を持っていない。戦えるほど魔法を使いこなせれば、職に溢れることはないという世知辛い事実ゆえでもあるが・・・・・・。
 誰だっていつ死んでもおかしくないうえに安定しない職より命の危険がなく高給取りの職の方がいい。

 そもそも、魔法を発動するときは必ず詠唱が必要なのだ。当たれば処理確定な魔法使いは冒険者の間では重宝されるが、詠唱している間に魔物を倒したほうが圧倒的に早い場合が多いこともあって、魔法は使えるが主に武器で戦っている者も多いのだ。
 勿論そんなこと奏が知っているはずもなく、他の冒険者が知れば一緒にするなと逆切れされそうなことを考えている。

 知らぬが仏というのか、知らなくてもいいのか・・・・・・・・絶対に後者である。



 この場所はピクニックに行ったときに見つけて、今ではお気に入りの場所の1つとなっている。そのためここには白金の縄張りの1つに加わった。

 魔物は相手の強さを敏感に感じることが出来る。ある程度強い魔物は自分から近づいてくるが弱い魔物は自分からは近づかないので、討伐依頼の時は少し面倒だが、こういった時は楽でいい。それに白金は魔の森で最も強い魔物で森の主のような立ち位置なので、縄張り内であれば白金の主である奏に襲ってくる魔物はそうそういない。
 その上、魔の森はあまり人間が来ないため大変過ごしやすい。昨日までは珍しく#他人__ルイ__#もいたが、基本的には誰も来ない。そしてルイは怪我が回復したばかりだ。流石に昨日の今日でここにはこないだろう。

 つまり、人が絶対に来ない快適空間。奏はそれを堪能中なのだ。白金は奏と会った開けた場所でひなたぼっこ中である。


(人がいないって最高。)

 この考えが甘かった。数分後、こんなことを考えていた自分を思いっきり引っ叩きたくなるとは、夢にも思わなかったのである・・・・・。




 

 奏はしばらくの間泳いでいた。数時間ほどして滝壺から出ると、魔法でさっと濡れた体を乾かす。


(まだあそこにいるかな。)

 今日は風もなく、日向にいれば暖かすら感じる。こんな日のひなたぼっこはさぞ気持ちのいい事だろう。奏は日差しの中でまどろむ白金を想像し、目を細めた。そして1つ頷くと白金のいる場所へと向かった。

 木漏れ日の中、枝から枝へと飛び移っていく。森特有の少しひんやりした空気が泳いだ後の気怠い体に当たり、とても気持ちいい。

 魔の森に住み始めて知ったことだが、森の中は地面を走るより枝の上を走ったほうが速いのだ。
 森の道。と言っても獣道だが、当然ながら木の根っこや岩があったりなどして、人間の奏には歩きづらいものがあった。その点、木の上はそう言ったものが一切ない。時折木の葉が視界を遮ることはあるが、慣れてくると気にならなくなってくる。

 本当は昨日ルイを送る時に木の上を走っていこうと思ったが、ルイを乗せる白金の顔を見て断念した。木の上の道は障害物が少なく楽な道ではあるが、当然ながら常に落下の危険が付きまとうのだ。
 白金であれば、戦えない人間1人背負っていても問題なく進める。しかしあの顔からして、途中で絶対にわざと振り落とそうとしていたに違いない。あわよくば落下ついでにそのまま死んでくれたらラッキー程度のことは思っていたかもしれない。
 ルイを乗せたままいつもより大きく動く白金を見て、自分の英断は正しかったと確信したほどである。
 


 ガサガサ。

 近くの茂みで音がして奏は立ち止まった。


(魔物が来たのかな? それにしては気配が違う?)

 最短距離で白金のもとへ向かっているため、今と通っている場所は普段通らない道だ。そんなことがあってもおかしくはない。それに魔物独特の気配は感じなかった。もしかしたらまだ出会っていない魔物なのかもしれないと、少しわくわくしながら木の上からそっと覗き込んでみた。


(何でここにいるの!?)

 そこには森の外まで送り届けたはずのルイがいた。
 奏はすぐにこの場から離れなくてはと思い、気配を消してその場から離れようとした。しかし、相当焦っていたのか、近くの枝にぶつかってしまった。
 ぶつかった枝は近くにあった枝にあたり、その場所だけ不自然に音が出てしまった。こうなっては気配を消しても気づかれてしまう。気づかれてないことを祈りながらルイを確認すると、驚きに目を開いて固まっているルイと目が合ってしまった。
 ルイは奏から目をそらさず呆然と呟いた。


「君は・・・・・・あなた様は神の愛し子か?」

(何がどうしてこうなった!!!)

 奏は心の中で絶叫した。
 なぜこんなことが起こったのかは明白だ。ここはあまり人が来ない場所だから大丈夫だと、高を括っていた。ここ最近は何故か魔物の出現率が下がってきているので、運が良ければ森の奥まで戦闘を行わずに来ることも可能なはずだ。
 その可能性を頭から否定していたのは、完全な奏の慢心だった。

 奏は苦虫をかみつぶしたような気持で頭で必死にどうやって乗り切るか考えるが、一向に良い案は浮かんでこない。ルイは終始固まったまま微動だにしない。
 どれくらいの間お互いそうしていただろうか。不意に、ルイの後ろの茂みが揺れ、見慣れぬ色の髪が葉の間から少し見えた。


 ルイから目を離さず視界の端で様子をうかがうと、表情がめったに変わることのない奏の眉が動き眉間に皴を作る。


「いた! お前な、返事くらいしろよ。」
「あ、あぁ、悪い。」
「? どうしたんだ? まぁ、いいや。おーい、カイン、ローズ! クラスト見つけたぞー-!」
「ちょっ! まっ・・・・・。」


 ルイは慌てて止めようとしたが、間に合わなかった。赤髪の青年が茂みの向こう側に向かって仲間らしき人物を呼んだ。
 まだ仲間がいたかと焦ったが、幸いにも赤髪の男はこちらに気づいていなかった。ここで全員殺せば魔物の仕業に見せかけられるのでは? という物騒な発想が出て来るが、速攻それは却下した。
 貴族がこの森で死んで大勢の調査団やらなんやらが森に押しかけてくるなど、想像しただけでも嫌だった。


「よく見つけたね、アラン。さぁクラスト、言い分言い訳を聞かせてくれるかい?」
「そんな物聞く必要ありません! 今回こそビシッと言うべきです!」


 アランと呼ばれた赤髪の青年が出て来た茂みから、また2人が姿を現した。
 細身で金髪碧眼の青年と水色の柔らかそうな髪と少し勝気な薄紫の瞳の少女だ。どちらも見た目はルイと同年代に見えるし、服の価値はよくわからない奏でですら高価なものだと分かる装備を着ている。
 何か4人の記憶を消す方法はないかと、奏は考えるように顔を少し下に向けた。それにつられるように奏の長い髪が肩からこぼれ落ちる。

 奏はその髪を耳にかけようとしてあれ? と思った。自分の手にある髪の色は偽りの金色ではなく黒い・・・・・・・・のだ。


(私、いつからこの色だった・・・・・・・・?)



――――――――――――――――――――

 読んでくださりありがとうございます!☆*: .。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

 感想お待ちしています! いただいた感想には、基本的にすべて返事を書かせていただきます。また、『登場人物のこういったものが読みたい!』 『別の視点から見た話が読んでみたい!』 と言ったリクエストをいただけたら、番外編として書きたいと思っております。

 たくさんの感想&リクエストお待ちしています! 
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