私は2度世界を渡る

リサ

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過去編 (完結)

10.魔王討伐

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 度重なる嫌がらせの中、奏が城の中で1番危機感を感じたのは貞操だった。城中のと言ってもいいぐらい、男の近くにいるとそういう視線を受ける(主に騎士団員から)。実際襲われかけたことも何度もある。そのたびに一緒にいる誰かに、襲おうとしている人から見て同じようなことをしようとしている人が自分に見える幻術をかけて難を乗り切っていた。
 奏の幻術に引っかかるたびに、彼らは男色という噂が立った。


(関係ない人には幻術かけてないから、そう見えるよねぇ。)

 噂の的にされた彼らは、とても恥ずかしそうである。ちょっと、いや、かなりいい気味だった。

 このことを含めても今までのことを思い返してみても、奏が簡単にやられるか弱い精神は持っていないことはわかってきたかと思う。そうやってやっとのことで地獄を切り抜けて行くこと1年。簡単な激励式の後、奏たちは魔王討伐の旅に出た。


(ほんっとう地獄! まさか城での嫌がらせがまだかわいいと思える日が来るなんて思わなかった!!)

 道中のことは、今までのことからある程度想像できるだろう。しかし、現実はその予想を軽く超えていった。

 奏はある程度は覚悟していた。王女様達はおそらくというか絶対、贅沢に慣れきり何不自由なく暮らしてきただろうから。奏も飢えとは無縁で生きて来たので、とやかく言えた義理ではないので、多少は我慢しようと思っていた。しかし、もう少し順応性を身に着けろと思ってしまうのだ。
 
 そんな奏の心中を知らないどころか知ろうともしないオウコウキゾクサマ達はというと・・・・・・・。


「おい! こんな固いところで寝られるか! 適当な動物殺して毛皮持ってこい!!」
「な、何ですのこの粗末な料理は!! もっと食べられるものを用意しなさいよ。もんっ等に使えないわね!」
「ひ! た、たすけ・・・・・。わ、私はこんなところで死んでいい人間ではな、ないのですよ!」
「む、無理。こ、怖いよ・・・・・・・。」


 永遠とこの調子である。
 野宿は嫌だと駄々をこね、ご飯はいつも食べているのではないと嫌だといい。魔獣が出ても震え上がって奏しかまともに戦えない。これが旅の序盤だったらまだあきらめもつくが、今はもう旅に出て3か月が過ぎた。もういい加減慣れてきてもいいはずなのだが・・・・・・。

 他の3人は仕方ないかもしれないが、騎士見習いであるキースは少しは慣れろと言いたくなった。しかし、騎士団所属と言っても騎士と見習いとでは仕事内容が大きく異なる。
 正式な騎士は遠征訓練などで野営を行うが見習いはしないらしい。それ故、キース本人も野営の経験はなかった。
 だったら今のうちに慣れて置けば今後何かと役に立つだろうにと思いはするが、本人によると、”成功すれば英雄になるからそんなものは必要ない”とのことだった。失敗しでもしたらどうするのだろうか・・・・・・・・。
 



 魔獣というのは、魔石を核として動いている生き物のことである。弱いのだと、スライムやゴブリンがいる。魔石や毛皮はお金になるので、皆魔獣を倒したら必ず回収してる。強い魔獣の魔石や毛皮ほど高額になるので、誰もが一攫千金を狙って命を懸けて魔物と戦うのだ。
 ちなみに魔獣には知能がある。知能が高ければ高いほど希少価値は高くなるので、奏も命がけで倒しているのだ。
 余談だが、大抵の間数は人に害をなすが、ごく少数ではあるものの人間と共存している魔獣も存在している。





 奏たちは旅の途中、立ち寄って街などで魔石やを売ってお金を得ていた。しかし、奏の下にくるお金はほとんどなかった。すべて奏が手に入れた魔石なのにもかかわらず、クリスティーナたちはこの時だけ“同じ目的で旅をしている仲間”と言い、ほとんどの収入を奪ってしまうのだ。
 しかし奏はこうなることを予測して、お金に変える分とは別に亜空間に大量に保管しているので、魔王討伐が終われば姿を消してその後換金することが出来る予定である。なのでなんら問題はなかった。

 少し大きな町へ行けば後先考えずに買い物三昧などなど・・・・・。当然出発時にはあった金貨の山も旅が中盤に差し掛かるころには底をつきかけていた。しかし、奏がそれを諌めると文句を言ってくるのにもかかわらず、旅の終盤で所持金がなくなったのは奏がしっかりしていなかったからだと文句を言ってくる始末。
 旅の途中で彼らを見捨てなかった奏は褒められてもいいだろう。


 そんなこんなありながら、ようやく魔王との対決が始まった。流石に魔王というべきか、ほかの4人も今回ばかりは真剣に戦闘に参加した。





 激しい戦闘の末、ズタボロになりながらもやっとのことで魔王を倒すことに成功した。


(・・・・・これで、自由だ。)

 奏はほっと息をついた。

ドスッ!

 奏の背中に衝撃とともに鋭い痛みが走った。奏は衝撃でその場に膝をついた。あまりの痛みで体がしびれ動きが鈍くなっていくのを感じながら、そんな体に鞭打って後ろを振り返った。そこには奏の血で濡れた短剣を持った王女が勝ち誇った笑みをたたえて立っていた。


「やっと・・・・やっと化け物を2匹・・・・・・倒せましたわ! わたくしたちがこの国どころか、この世界の人間ですらないあなたをいつまでも生かしておくとお思いでしたの? 魔王が倒された今、あなたなど用済みですわ!」

 
 王女はその場で蹲る奏を蹴り倒すと、刺した傷を靴でぐりぐりと踏みつけた。
 その言葉を聞いて、痛みにうめくことしか出来ない頭の中で奏の頭は絶望よりもやっぱりなという感情がしめていた。
 今までの扱いや騎士団長と宰相の話を聞いて、魔王を倒した自分は城に着く前に消される殺されるか飼い殺しの2択だということは予想はしていた。だから討伐後すぐに姿を消す計画を立てた。しかし、もしもという感情を捨てきれなかった。まぎれもない奏の甘さが招いた感情だった。その分ショックではある。それと同時に、やり場のない怒りや虚しさもわいてくる。
 高笑いしながら去っていく彼らを、ぼやけていく視界で見ながら奏は願った。


(もし神というものが存在するのなら、私をこんな目に合わせた彼らや、この世界のすべてのものに耐え難い苦しみを!・・・・・そしてできることなら、私と同じような人を出さないように、異世界から召喚する技術をすべて消してほしいな。あとは、もし、次があるなら、つぎこそは、穏やかに,くらした、い。)
 
 そこから奏の意識は闇の中に完全に引きずり込まれていった。
意識を失う直前、誰かに頭を優しく撫でられた気がした。





ー-------------------

 奏の意識がなくなる直前、光の中から女性が現れた。その女性は、奏の頭を優しくなでた。すると奏でが負っていた傷がすべて、跡形もなくふさがっていった。


「迎えに来るのが遅くなってすまぬ。よく耐えてくれたの。次目覚めたときは、お主は妾の世界・・・・におる。今はゆっくり眠るがよい。向こうでまた会おうぞ。我が愛し子よ。」


 女性は、奏の頭を優しく撫でながら言った。奏を見つめる眼差しは、優しさや慈しみで満たされていた。そして女性は片手をあげおもむろに振ると、奏の体は光に包まれて消えた。


 奏が消えたことを確認すると女性は立ち上がり、王女たちが去っていったほうをにらみつけた。そこには、奏に向けていた優しさや慈しみといった感情は一切なかった。あるのは純粋な怒気と殺意のみだった。そしてゆっくりと口を開いた。

「おのれ、・・・・・・おのれおのれおのれおのれ! よくも、・・・・よくも妾の大切な愛し子をあのような目に合わせたな!! 奏が願うまでもない! 奏をあのような目に合わせた奴ら全員、死ぬほうがましだと思うほどの苦痛をくれてやる!!!」





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※この度、「ファンタジー小説大賞」にエントリーさせていただきました。

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