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ジリジリジリジリ……。
目覚まし時計がなっている。
……が。
俺がきちんと目覚まし時計なんてものを持ってるわけがない。
はー、うるせー。誰だよこんな朝早くにセットしたやつ。
ジリジリジリジリ…とまだ鳴っていたが、俺はまどろっこしくて布団にさらに潜る。まだ後ろで時計が鳴り響いている。
ジリジリジリジリ………カチッ。
ふと、目覚ましの音が止んだ。あ、やったーこれでうるさくない。
だが、それと同時に勢いよく布団を捲り上げられた。
「うわッッッッ、さむっ!!!」
「おい、もう時間じゃん。いい加減起きろよ」
「え…?ヤダヤダ……まだ寝る」
「お前、俺より家出るの早いだろうが…。起!き!ろ!」
「ぎゃあー!!」
せめてものと掴んでいた布団を完全に奪われてしまった。しかし朝は辛い。クソみてえな学校なんか俺は行きたくないんだ。
俺は意地になって掛け布団なしのままその場で丸く縮こまった。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ」
「はぁ…。うるせーーー」
「ふぎゅ!?」
突然横腹に衝撃が走る。
どうやら隣でベッドに座っていたやつが寝転がってる俺の体を踏みつけたようだ。グイッと横腹に足がめり込む。絶対痛いやつだろうが!
しかし、奴は気にせずそのまま俺を踏み抜くと、ベッドから降りて部屋からさっさと出て行ってしまった。
うぅ~……痛い……。
結局俺は痛みによってすっかり目が覚めてしまう。
「幸のばかー…」
寒くなったベッドの上で俺はやっと起き上がったのだった。
俺は心変わりしたことがある。
「ヒコたんと関わらない」
この前まではそんなこと一生考えないと思っていたことだが、今はもうその決心がついた。
俺はいわゆるヒコたんに依存していた。
それがいやってほどあの文化祭で知らしめられたわけだ。なんせヒコたんにほっとかれただけで死のうとした。まじでバカじゃん。
本当に今まではまともじゃなかった。
家庭環境がクソだから小学生の時からこんな感じだったけど、ヒコたんという依存場所ができてからは周りとの関わりも断ち切ってまるっきりヒコたんだけに固執していた。
ヒコたんは初めからそんなこと望んでなかったのに、俺が勝手にそんなふうになっていた。
そしてそれを全て教えてくれたのは幸だった。
幸は文化祭の日から俺の面倒を見てくれた。正直、駿喜のことがあって家に上がるのは拒否していたのだが、そうすると最初の5日間、幸は俺を家に置き、自分はホテルやネカフェに寝泊まりしててくれた。幸がそんな優しい態度に出たことも驚いたが、それ以上に幸が雅彦と関わることにコンプレックスを抱いていたことも驚いた。別に大きな仲違いをしているわけではないから自由に家を出入りしたり遊ぶのも別に気まずい仲ではない。ただ、幸がヒコたんに対して変に敏感だった。
俺には基本冷たいのに、なぜか無駄に構ってくるし、ご飯とか作るの下手くそだし、めちゃくちゃバンドオタクだし、片耳だけピアス空け過ぎだし、なんかヒコたんと色々違う。幸はヒコたんのことが嫌いというわけではないが、どこか避けてる節もこの生活で垣間見え、あえてヒコたんと違うやり方で俺と関わろうとしているように感じた。
まあ、直接本人に聞いたわけじゃないし、あくまで俺が感じただけでしかないけど…。
それでも、幸は思ったよりもいい奴だ。見た目が女みたいなだけで、中身はむしろ男らしい。しかも、自分より歳下かと思ってたが、3つも年上で大学生だったのにも驚いた。だからか、どこか俺たちよりも垢抜けてかつ自立している。なんていうか、恥ずかしいが、俺が関わってきたなかで一番まともな人間。幸に対して悪い印象は全くなかった。
まあそんな感じで気付けば幸と過ごして10日が過ぎようとしていた。
「裕里お前寝癖すごい。まずは顔洗ってきたら」
「うぅ…。てか、それよりも俺を踏みつけたこと謝れよ!」
「は?むしろ逆。起こしてやったんだよ、バカ」
ペシっと額を叩かれる。猫背だったから、幸の手の届く位置におでこがあったらしい。クソ、俺より背が低いくせに生意気な。
それでもなぜか幸は居心地がいい。幸は正直なことしか言わないし、俺が傷付く線引きを言わずも理解して、うまく避けてくれる。距離感がちょうどいい、というのだろうか。
まあ、そういうわけだからか、10日間一緒にいても嫌な気にならないし、実際、幸の家から一切出て行こうとしていない自分がいる。最近なんか気づいたらベッドで一緒に毎晩寝てるし(エロいことはもちろんしてない)。なんか一人で家にいるより、元カレやヒコたんといるときより、正直に生き生きと生きてる。少し前向きになれてる。
幸はいい友達。自分の言いたいことも言えるし、幸も気なんか使わず馬鹿正直に話してくれる。そんなあっけらかんとした感じだけど、傷は負っていて、その傷元は同じ。ヒコたんの振られ仲間。
幸がキッチンに向かおうとした後ろ手で俺の後頭部の髪をふわりと撫でる。不意な触れ合いにドキリとした。思わず幸の方を見ればクスッと幸が笑った。
「寝癖直してやるから早く顔洗ってきなよ」
「うん…」
そう、幸とはそういう関係。
ジリジリジリジリ……。
目覚まし時計がなっている。
……が。
俺がきちんと目覚まし時計なんてものを持ってるわけがない。
はー、うるせー。誰だよこんな朝早くにセットしたやつ。
ジリジリジリジリ…とまだ鳴っていたが、俺はまどろっこしくて布団にさらに潜る。まだ後ろで時計が鳴り響いている。
ジリジリジリジリ………カチッ。
ふと、目覚ましの音が止んだ。あ、やったーこれでうるさくない。
だが、それと同時に勢いよく布団を捲り上げられた。
「うわッッッッ、さむっ!!!」
「おい、もう時間じゃん。いい加減起きろよ」
「え…?ヤダヤダ……まだ寝る」
「お前、俺より家出るの早いだろうが…。起!き!ろ!」
「ぎゃあー!!」
せめてものと掴んでいた布団を完全に奪われてしまった。しかし朝は辛い。クソみてえな学校なんか俺は行きたくないんだ。
俺は意地になって掛け布団なしのままその場で丸く縮こまった。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ」
「はぁ…。うるせーーー」
「ふぎゅ!?」
突然横腹に衝撃が走る。
どうやら隣でベッドに座っていたやつが寝転がってる俺の体を踏みつけたようだ。グイッと横腹に足がめり込む。絶対痛いやつだろうが!
しかし、奴は気にせずそのまま俺を踏み抜くと、ベッドから降りて部屋からさっさと出て行ってしまった。
うぅ~……痛い……。
結局俺は痛みによってすっかり目が覚めてしまう。
「幸のばかー…」
寒くなったベッドの上で俺はやっと起き上がったのだった。
俺は心変わりしたことがある。
「ヒコたんと関わらない」
この前まではそんなこと一生考えないと思っていたことだが、今はもうその決心がついた。
俺はいわゆるヒコたんに依存していた。
それがいやってほどあの文化祭で知らしめられたわけだ。なんせヒコたんにほっとかれただけで死のうとした。まじでバカじゃん。
本当に今まではまともじゃなかった。
家庭環境がクソだから小学生の時からこんな感じだったけど、ヒコたんという依存場所ができてからは周りとの関わりも断ち切ってまるっきりヒコたんだけに固執していた。
ヒコたんは初めからそんなこと望んでなかったのに、俺が勝手にそんなふうになっていた。
そしてそれを全て教えてくれたのは幸だった。
幸は文化祭の日から俺の面倒を見てくれた。正直、駿喜のことがあって家に上がるのは拒否していたのだが、そうすると最初の5日間、幸は俺を家に置き、自分はホテルやネカフェに寝泊まりしててくれた。幸がそんな優しい態度に出たことも驚いたが、それ以上に幸が雅彦と関わることにコンプレックスを抱いていたことも驚いた。別に大きな仲違いをしているわけではないから自由に家を出入りしたり遊ぶのも別に気まずい仲ではない。ただ、幸がヒコたんに対して変に敏感だった。
俺には基本冷たいのに、なぜか無駄に構ってくるし、ご飯とか作るの下手くそだし、めちゃくちゃバンドオタクだし、片耳だけピアス空け過ぎだし、なんかヒコたんと色々違う。幸はヒコたんのことが嫌いというわけではないが、どこか避けてる節もこの生活で垣間見え、あえてヒコたんと違うやり方で俺と関わろうとしているように感じた。
まあ、直接本人に聞いたわけじゃないし、あくまで俺が感じただけでしかないけど…。
それでも、幸は思ったよりもいい奴だ。見た目が女みたいなだけで、中身はむしろ男らしい。しかも、自分より歳下かと思ってたが、3つも年上で大学生だったのにも驚いた。だからか、どこか俺たちよりも垢抜けてかつ自立している。なんていうか、恥ずかしいが、俺が関わってきたなかで一番まともな人間。幸に対して悪い印象は全くなかった。
まあそんな感じで気付けば幸と過ごして10日が過ぎようとしていた。
「裕里お前寝癖すごい。まずは顔洗ってきたら」
「うぅ…。てか、それよりも俺を踏みつけたこと謝れよ!」
「は?むしろ逆。起こしてやったんだよ、バカ」
ペシっと額を叩かれる。猫背だったから、幸の手の届く位置におでこがあったらしい。クソ、俺より背が低いくせに生意気な。
それでもなぜか幸は居心地がいい。幸は正直なことしか言わないし、俺が傷付く線引きを言わずも理解して、うまく避けてくれる。距離感がちょうどいい、というのだろうか。
まあ、そういうわけだからか、10日間一緒にいても嫌な気にならないし、実際、幸の家から一切出て行こうとしていない自分がいる。最近なんか気づいたらベッドで一緒に毎晩寝てるし(エロいことはもちろんしてない)。なんか一人で家にいるより、元カレやヒコたんといるときより、正直に生き生きと生きてる。少し前向きになれてる。
幸はいい友達。自分の言いたいことも言えるし、幸も気なんか使わず馬鹿正直に話してくれる。そんなあっけらかんとした感じだけど、傷は負っていて、その傷元は同じ。ヒコたんの振られ仲間。
幸がキッチンに向かおうとした後ろ手で俺の後頭部の髪をふわりと撫でる。不意な触れ合いにドキリとした。思わず幸の方を見ればクスッと幸が笑った。
「寝癖直してやるから早く顔洗ってきなよ」
「うん…」
そう、幸とはそういう関係。
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