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☆☆☆☆☆☆☆
「はい、ゆりちゃん拭いて」
「いらないっ。てか、なんで俺がお前の家に連れて来られなきゃいけねえんだよっ!?やめろよ!!」
「あーうるさいうるさい。水飛び散るから早く拭いて」
「わぶっ…!」
駿喜が持っていたタオルを思いっきり顔面に押さえつけられる。
そしてそのまま、駿喜は近寄ってくるとタオルで髪の毛をワシャワシャと掻き回して拭かれる。まるで犬を扱っているような仕草に、俺は犬じゃねえ!と吠えた。
なぜか俺は駿喜の家に連れてこられていた。
無理矢理手を引っ張られて、散々歩かされたと思えば、見知らぬ家の前。中に入らされて玄関でワーギャーと駿喜と戦っていた。
しかし、相変わらず駿喜にはこういう騒ぎ方は効かないようだ。
駿喜は「はいはい」と俺の怒りも無視し、無理矢理玄関から押し上げて家の中へ俺を連行する。
そしてあっという間に風呂場の方へなぜか到着すると、勢いよく脱衣所に押し込められた。
「お風呂沸かすから入りな。寒いでしょ」
「えっ、はっ!?ふ、風呂!?」
「そのまんまだと絶対風邪引くじゃん。びしょびしょのままだとこっちも困るし」
「いや、待って。いきなり人ん家の風呂とか」
「あー、人の家だと気になる感じ?俺は気にしないけどー。あ、それなら俺と一緒に入る?」
「は!?ふざけんなッッ!なんでそうなるんだよっ!」
「じゃあさっさと入ってよ。俺も寒いし」
駿喜はそう言うなり、バタンッと脱衣所の扉を閉じてしまう。
そんなんだったらお前が入ればいいじゃん!なんで俺に構うわけ!?
シャーーッ、と言うお湯の沸く音が浴室から聞こえてきた。本当に風呂に入れる気らしい。
「ほんとに…アイツ、いきなりなんなの…」
雨の中無理矢理拾われたかと思うと、仲良くもないのに家にまで連れてきて、風呂にまで入らせてくる。駿喜の考えてることは、本当にわからない。マジで頭おかしいんじゃないか、アイツ。
……でも、あのまま独りぼっちだったら、俺はどうなってたかわからない。
ふと気づいた、ぽたぽたと自身の髪から垂れる水滴の音。
俺は諦めのため息を吐いて、服を脱いだ。
○○○○○○
「……ねえ、服どこにやったわけ」
「あ、マジで風呂に入ったんだ。しかも俺の服着てるし」
「着る物ないんだから着るしかないだろ…ッ!」
結局風呂に入ってしまった俺はホカホカのまま風呂場を出てくると、制服や靴下など着ていた一式が全て無くなっていた。その代わりに、トレーナーと下着がちょこんと置いてあり、してやられたと脱衣所で頭を抱えた。
いつの間に服をすり替えたんだとか、俺の裸見てないだろうなとかごちゃごちゃ言いたいことはあったが、とりあえず服を返せと駿喜に詰め寄る。
「いま服洗ってるから無理だよ。それに下着までびしょびしょだったし。替えの下着置いといたでしょ?」
「………チッ」
「なに?嫌なら、自分の服に着替える?もっとびしょびしょになってると思うけど」
「こ、これでいいしッ!」
せっかく暖まった身体なのに、それこそびしょびしょの制服なんて着たら風邪を引く。
俺は着ているトレーナーをギュッと掴んで、空いていたソファにドスン!と座った。
駿喜は俺の行動に気にしていないのか、ダイニングキッチンへと向かう。
「ゆりちゃん、ご飯食べていく?てか、雨やばいし泊まって行ったら?」
「…は!?い、いやだ!なんでお前ん家に泊まらないといけないわけ」
「風呂にまで入ったくせに。でも、どうせ、雅彦に振られたかなんかされたんでしょ?一年前もあんな風にずぶ濡れで落っこちてなかった?」
「は?」
一年前…?もしかしてあの時のこと?
でもなぜ駿喜が知っている。
--確かに俺はちょうど一年前、元カレに我慢の限界を感じて爆破した挙句、家を飛び出した。
このままさっさと死にたいと、道端で蹲ってた時にヒコたんに拾われたのだ。
あれがヒコたんと初めて出会ったときだ。ヒコたんは俺に優しく手を差し伸べてくれた。
……昔のことを思い出し、胸がギリギリと痛む。今はヒコたんはそばにいないのだ。
落ち込んで黙っていると、駿喜はその様子にため息をつき、いきなり顔面に何か投げつけてきた。
「ギャッ!て、テレビのリモコン投げつけるなッ!!」
「テレビ点けて。とりあえず飯作るけど、何がいい?」
「おい!まずは謝れッ…!!」
そう怒鳴るも、テレビ早くつけてよ~と文句言ってくる駿喜。
コイツ俺の話全く聞かねえし……。
ウンザリとした結果、大人しく俺がテレビをつけると、駿喜は納得したのかキッチンの方へ向かう。
「じゃあ、今日はカレーかなー」
駿喜の上機嫌な声が部屋に響いていた。
「はい、ゆりちゃん拭いて」
「いらないっ。てか、なんで俺がお前の家に連れて来られなきゃいけねえんだよっ!?やめろよ!!」
「あーうるさいうるさい。水飛び散るから早く拭いて」
「わぶっ…!」
駿喜が持っていたタオルを思いっきり顔面に押さえつけられる。
そしてそのまま、駿喜は近寄ってくるとタオルで髪の毛をワシャワシャと掻き回して拭かれる。まるで犬を扱っているような仕草に、俺は犬じゃねえ!と吠えた。
なぜか俺は駿喜の家に連れてこられていた。
無理矢理手を引っ張られて、散々歩かされたと思えば、見知らぬ家の前。中に入らされて玄関でワーギャーと駿喜と戦っていた。
しかし、相変わらず駿喜にはこういう騒ぎ方は効かないようだ。
駿喜は「はいはい」と俺の怒りも無視し、無理矢理玄関から押し上げて家の中へ俺を連行する。
そしてあっという間に風呂場の方へなぜか到着すると、勢いよく脱衣所に押し込められた。
「お風呂沸かすから入りな。寒いでしょ」
「えっ、はっ!?ふ、風呂!?」
「そのまんまだと絶対風邪引くじゃん。びしょびしょのままだとこっちも困るし」
「いや、待って。いきなり人ん家の風呂とか」
「あー、人の家だと気になる感じ?俺は気にしないけどー。あ、それなら俺と一緒に入る?」
「は!?ふざけんなッッ!なんでそうなるんだよっ!」
「じゃあさっさと入ってよ。俺も寒いし」
駿喜はそう言うなり、バタンッと脱衣所の扉を閉じてしまう。
そんなんだったらお前が入ればいいじゃん!なんで俺に構うわけ!?
シャーーッ、と言うお湯の沸く音が浴室から聞こえてきた。本当に風呂に入れる気らしい。
「ほんとに…アイツ、いきなりなんなの…」
雨の中無理矢理拾われたかと思うと、仲良くもないのに家にまで連れてきて、風呂にまで入らせてくる。駿喜の考えてることは、本当にわからない。マジで頭おかしいんじゃないか、アイツ。
……でも、あのまま独りぼっちだったら、俺はどうなってたかわからない。
ふと気づいた、ぽたぽたと自身の髪から垂れる水滴の音。
俺は諦めのため息を吐いて、服を脱いだ。
○○○○○○
「……ねえ、服どこにやったわけ」
「あ、マジで風呂に入ったんだ。しかも俺の服着てるし」
「着る物ないんだから着るしかないだろ…ッ!」
結局風呂に入ってしまった俺はホカホカのまま風呂場を出てくると、制服や靴下など着ていた一式が全て無くなっていた。その代わりに、トレーナーと下着がちょこんと置いてあり、してやられたと脱衣所で頭を抱えた。
いつの間に服をすり替えたんだとか、俺の裸見てないだろうなとかごちゃごちゃ言いたいことはあったが、とりあえず服を返せと駿喜に詰め寄る。
「いま服洗ってるから無理だよ。それに下着までびしょびしょだったし。替えの下着置いといたでしょ?」
「………チッ」
「なに?嫌なら、自分の服に着替える?もっとびしょびしょになってると思うけど」
「こ、これでいいしッ!」
せっかく暖まった身体なのに、それこそびしょびしょの制服なんて着たら風邪を引く。
俺は着ているトレーナーをギュッと掴んで、空いていたソファにドスン!と座った。
駿喜は俺の行動に気にしていないのか、ダイニングキッチンへと向かう。
「ゆりちゃん、ご飯食べていく?てか、雨やばいし泊まって行ったら?」
「…は!?い、いやだ!なんでお前ん家に泊まらないといけないわけ」
「風呂にまで入ったくせに。でも、どうせ、雅彦に振られたかなんかされたんでしょ?一年前もあんな風にずぶ濡れで落っこちてなかった?」
「は?」
一年前…?もしかしてあの時のこと?
でもなぜ駿喜が知っている。
--確かに俺はちょうど一年前、元カレに我慢の限界を感じて爆破した挙句、家を飛び出した。
このままさっさと死にたいと、道端で蹲ってた時にヒコたんに拾われたのだ。
あれがヒコたんと初めて出会ったときだ。ヒコたんは俺に優しく手を差し伸べてくれた。
……昔のことを思い出し、胸がギリギリと痛む。今はヒコたんはそばにいないのだ。
落ち込んで黙っていると、駿喜はその様子にため息をつき、いきなり顔面に何か投げつけてきた。
「ギャッ!て、テレビのリモコン投げつけるなッ!!」
「テレビ点けて。とりあえず飯作るけど、何がいい?」
「おい!まずは謝れッ…!!」
そう怒鳴るも、テレビ早くつけてよ~と文句言ってくる駿喜。
コイツ俺の話全く聞かねえし……。
ウンザリとした結果、大人しく俺がテレビをつけると、駿喜は納得したのかキッチンの方へ向かう。
「じゃあ、今日はカレーかなー」
駿喜の上機嫌な声が部屋に響いていた。
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