9 / 51
11
しおりを挟む
ドアのすみっこで、スマホをいじる気も起きなくて、ヒコたんの方をただ眺める。
ヒコたんの腕や肩、足や腰に、採寸する女子の手が触れては、何やら話しこんでヒコたんは笑う。
(触んな触んな触んな触んな触んな触んな触んな触んな)
あー、だからやっぱり嫌なんだよ、こう言うイベント事は。なんで、ヒコたんが他の人間と仲良くしてる様を見なきゃなんないわけ?まじうぜえ。
ベタベタとヒコたんに這いずりまわる他人の手がキモくてキモくて仕方ない。
しねしねしね、ブスどもが調子乗んな。
いつもは俺の身体を抱いてんだぞ、ヒコたんの身体は。
彼の体を知ってるこその優越感と他人に取られて独占欲を踏み躙られた感覚。
(…まじ胸糞悪い、やっぱ帰ろうかな。)
そう思うと、頭を俯かせて、体育座りのまま床を見下ろした。
「なに?雅彦盗られたの?ゆりちゃん」
急に揶揄うような声がふってきた。
反射的に顔をいきおいよくあげれば、ドアの隣で、かったるそうな駿喜が壁にもたれかかっていた。
「なんだよ、なんの用だよ。ヒコたんは今忙しいの」
「なにあれ?採寸??なんか衣装でも着るの?」
「…ッチ」
俺の話なんか初めから聞き流して、自分の聞きたいことだけを問うてくる駿喜にイライラとする。なんでこう言う時に限って、めんどくさいやつに絡まれるわけ。
おれが答えるつもりなく無言でいると、駿喜は勝手に答えを導き出したのか、黒板を顎で指しながら言った。
「あぁ。文化祭のやつね?なになに?…メイド喫茶?え?もしかして雅彦、メイド服きんの?」
「まじウケる、超似合いそうじゃん」と笑う駿喜に本当にイライラする。
お前もセンスねーバカかよ。
駿喜はジーッと雅彦を見ては、フン、と鼻を鳴らして笑った。
「へえ~メイド喫茶とかありがちじゃん。しかも男がメイド服着るとかマンガかよ。もっと別の発想なかったの?」
(…コイツ独り言をペラペラとうるせえな)
短気な俺はそのまま駿喜の顔を睨みつける。
「俺が決めたわけじゃんだけど!なんなら反対だわ。てか、そう言うお前んとこは何やるんだよ」
「ん?俺んとこはお化け屋敷だよ」
「…はぁ?アンタんとこの方がもっとショボいじゃん」
「さぁ~ただのお化け屋敷をするつもりでは全くないけど?ゆりちゃんも見にきてよ」
俺の視線で何を言いたいのかわかったのか、駿喜はそう勝手に答えて、またおちょくったように片眉を上げた。
自信満々な感じが余計腹立つわ。一回しね!
俺はやっぱりむかつくから駿喜を無視することにして、ポケットからスマホを取り出す。
ヘラヘラしたやつが一番信用ならなくて嫌いなんだよね。
駿喜を無視して、とりあえずSNSを開いていると、近くにいたクラスメイトたちがこちらへ寄ってきた。
「駿喜くん、どうしたの?何か用事?」
「あ、うん、そうなんだよね。雅彦に話があったんだけど、文化祭の準備してる感じ?」
「そうなの!」
「ウチら、メイド喫茶をやるんだけど~……」
駿喜はたまたま寄ってきた化粧派手女たちと話を始める。そのまま俺を無視して、教室の中へと入っていった。
駿喜の方を横目で伺って、クラスの集団に溶け込んでいくのを見届けると、はぁっと思いっきりため息を吐く。
背が少し高くて、少し明るめの茶色に染めた髪を緩くセットした様子は、まじで嫌なきぶんになるほど、元カレに似てる。てか、元カレが地下アイドルだったんけどさ。
軽そうだけど柔らかい物腰とやけに機敏に気付く気遣いが女にウケるらしくて、俺がいながら他の女にメシとか金援助してもらってた。
あれのせいで俺はどっぷりメンヘラ漬けですよ。女の子にお金とか出してもらうのもアイツのせいで平気になったんだよな。
てか、アイドルのくせに男に手を出してくんなよな。
ヒコたんの採寸はいつになってもおわんないし、駿喜のせいで精神状態劣悪なため、床に置いたカバンを拾い上げてはそのままドアの方から出ていく。
一瞬振り返ろうか、と思ったが、クラスメイト達の笑い声が聞こえてきて、俺はやっぱり振り向かないことにした。
ヒコたんの腕や肩、足や腰に、採寸する女子の手が触れては、何やら話しこんでヒコたんは笑う。
(触んな触んな触んな触んな触んな触んな触んな触んな)
あー、だからやっぱり嫌なんだよ、こう言うイベント事は。なんで、ヒコたんが他の人間と仲良くしてる様を見なきゃなんないわけ?まじうぜえ。
ベタベタとヒコたんに這いずりまわる他人の手がキモくてキモくて仕方ない。
しねしねしね、ブスどもが調子乗んな。
いつもは俺の身体を抱いてんだぞ、ヒコたんの身体は。
彼の体を知ってるこその優越感と他人に取られて独占欲を踏み躙られた感覚。
(…まじ胸糞悪い、やっぱ帰ろうかな。)
そう思うと、頭を俯かせて、体育座りのまま床を見下ろした。
「なに?雅彦盗られたの?ゆりちゃん」
急に揶揄うような声がふってきた。
反射的に顔をいきおいよくあげれば、ドアの隣で、かったるそうな駿喜が壁にもたれかかっていた。
「なんだよ、なんの用だよ。ヒコたんは今忙しいの」
「なにあれ?採寸??なんか衣装でも着るの?」
「…ッチ」
俺の話なんか初めから聞き流して、自分の聞きたいことだけを問うてくる駿喜にイライラとする。なんでこう言う時に限って、めんどくさいやつに絡まれるわけ。
おれが答えるつもりなく無言でいると、駿喜は勝手に答えを導き出したのか、黒板を顎で指しながら言った。
「あぁ。文化祭のやつね?なになに?…メイド喫茶?え?もしかして雅彦、メイド服きんの?」
「まじウケる、超似合いそうじゃん」と笑う駿喜に本当にイライラする。
お前もセンスねーバカかよ。
駿喜はジーッと雅彦を見ては、フン、と鼻を鳴らして笑った。
「へえ~メイド喫茶とかありがちじゃん。しかも男がメイド服着るとかマンガかよ。もっと別の発想なかったの?」
(…コイツ独り言をペラペラとうるせえな)
短気な俺はそのまま駿喜の顔を睨みつける。
「俺が決めたわけじゃんだけど!なんなら反対だわ。てか、そう言うお前んとこは何やるんだよ」
「ん?俺んとこはお化け屋敷だよ」
「…はぁ?アンタんとこの方がもっとショボいじゃん」
「さぁ~ただのお化け屋敷をするつもりでは全くないけど?ゆりちゃんも見にきてよ」
俺の視線で何を言いたいのかわかったのか、駿喜はそう勝手に答えて、またおちょくったように片眉を上げた。
自信満々な感じが余計腹立つわ。一回しね!
俺はやっぱりむかつくから駿喜を無視することにして、ポケットからスマホを取り出す。
ヘラヘラしたやつが一番信用ならなくて嫌いなんだよね。
駿喜を無視して、とりあえずSNSを開いていると、近くにいたクラスメイトたちがこちらへ寄ってきた。
「駿喜くん、どうしたの?何か用事?」
「あ、うん、そうなんだよね。雅彦に話があったんだけど、文化祭の準備してる感じ?」
「そうなの!」
「ウチら、メイド喫茶をやるんだけど~……」
駿喜はたまたま寄ってきた化粧派手女たちと話を始める。そのまま俺を無視して、教室の中へと入っていった。
駿喜の方を横目で伺って、クラスの集団に溶け込んでいくのを見届けると、はぁっと思いっきりため息を吐く。
背が少し高くて、少し明るめの茶色に染めた髪を緩くセットした様子は、まじで嫌なきぶんになるほど、元カレに似てる。てか、元カレが地下アイドルだったんけどさ。
軽そうだけど柔らかい物腰とやけに機敏に気付く気遣いが女にウケるらしくて、俺がいながら他の女にメシとか金援助してもらってた。
あれのせいで俺はどっぷりメンヘラ漬けですよ。女の子にお金とか出してもらうのもアイツのせいで平気になったんだよな。
てか、アイドルのくせに男に手を出してくんなよな。
ヒコたんの採寸はいつになってもおわんないし、駿喜のせいで精神状態劣悪なため、床に置いたカバンを拾い上げてはそのままドアの方から出ていく。
一瞬振り返ろうか、と思ったが、クラスメイト達の笑い声が聞こえてきて、俺はやっぱり振り向かないことにした。
0
お気に入りに追加
178
あなたにおすすめの小説


久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、

Original drug
佐治尚実
BL
ある薬を愛しい恋人の翔祐に服用させた医薬品会社に勤める一条は、この日を数年間も待ち望んでいた。
翔祐(しょうすけ) 一条との家に軟禁されている 平凡 一条の恋人 敬語
一条(いちじょう) 医薬品会社の執行役員
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる