病み病みぴんくめろめろピース

COCOmi

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「あーあ、まりめろのストラップ無くした。
本当、最悪。絶対あいつが引っ張ったせいじゃん。クソ萎える」


俺は抑えきれないイライラとモヤモヤと口に残った他人の感触に、感情が抑えきれなくなる。
ムカムカして近くにあった机をガン、と蹴り上げた。



………本当無理。ヒコたんに連絡しよ。

そう思ってスマホの画面を開くが、ヒコたんは部活に行ってしまったことを思い出し、メッセージを送る気が失せてしまう。本当タイミングが悪い。まじでみんな死ねばいいのに。


結局、俺はヒコたんの部活が終わるまでと、誰もいない教室で小1時間ほどずっとスマホをいじっていたが、ヒコたんから「今日帰るのは10時頃になる」と連絡が来て、渋々家へ帰ることにした。

本当は帰りたくない。なんなら、10時までヒコたんを待つ気だった。
それでも、ヒコたんには家へ帰れと散々言われ、ヒコたんの家に泊まりたいと駄々を捏ねても今日はヒコたんの親が帰ってくるなどと言われてしまえばそれまでで。俺は家に帰るしか選択肢は残されていなかった。







まだ夕方だからか、辺りはまだ暗くない。
2日ぶりに触った家のドアの感触を感じながら、家の中へと入る。 

ただいま、なんて言わない。どうせ親が帰ってきている訳もないし帰ってきてたところでわざわざそんな挨拶言わない。



案の定、親はまだ帰ってきてなくて、玄関は真っ暗のままだった。俺は靴を脱ぐとリビングなど寄らずにそのまま自分の部屋へ向かう。

自分の部屋に入ればきっちりと鍵を閉めて、灯りもつけずにベッドへそのまま倒れた。


本当に嫌だ。家なんて嫌いだ。

晩ご飯を買い忘れたことにため息がついた。こんな家、食事を用意してくれる訳もない。親がいつ帰ってきて何をしてるかなんて知らないし、何日も帰ってこないことなんてザラにある。だから俺も別に家へ帰ってこないし、家に帰ってきたところですることなんて何もなかった。


(お金…あといくら手持ちあったっけ……)

だいぶしばらく親が帰ってきてないせいで、財布の金はほぼ底をつきかけていた。金を置き忘れる、なんてのもアイツラはしょっちゅうだ。
バイトしようにも、俺の精神状態はこんなんだし、まともに学校も行けてない。こんなの生きてなくても良くない?あーあ、早く死にたい。…でもヒコたんに死ぬなんてダメって言われてたんだった。ヒコたんだけが俺をこの世に生かしてくれる神様。



半ば無意識にスマホを開いていた。ベッドへうつ伏せになりながら、片手でスマホを弄る。
ツイッターを開いて通知を確認していると、ダイレクトメッセージが何件か来ていた。ぽちぽちと画面を開く。


『ゆりちゃん今日も可愛かった!好き!』
『これってゆりちゃんですか?隣の男の人イケメンですね。<画像添付>』
『ねえ、エロイプしよ?ウチ、顔とかも全然見せれるし、一緒にODもイケるよ?』
『ゆりちゃん、この前はありがとう。まりめろのカバン欲しいって言ってたよね?よかったらこれ使って。324××××…』


俺は一番最後に目に入ったメッセージを開く。

(なに?あ、これ、ギフトカードじゃない?ちょうど金欠だったんだよね。ラッキー)

俺はギフトカードの番号を速やかにコピーし、さっさとその番号を登録して、金をゲットする。

そうしてると、続け様にメッセージがまた飛んできた。

『ゆりちゃんご飯食べれてる?私奢るから、また一緒に遊ぼうね』


……あ、お礼。言わなきゃ。


『ギフトカードありがとう~!まりめろのカバン買う!買う!一番に見せるね!』
『うん、また遊ぼ~!』

俺は慌てて適当に文章を書き、ウサギの絵文字を添えて送信。


あれ?てか、この女誰だっけ。

なんて思ってたら、勝手に画像を送信されて、女と俺のツーショット自撮りが出てきた。

その写真を見て、このやり取りしている女のことを俺は思い出した。


あー、この前カラオケ行ったやつじゃん。話聞いてたら急に泣き出してセックスしよって言ってきた構ってちゃん女かよ。そういえば、確か、パパ活かコンカフェかなんかやってるからお金あるとか言ってたな…。

まあ、あの時は誰がこんな地雷女とセックスしてやるか、って思って、上手く受け流して断ったけど…。

そんな悪態を吐いていると、メッセージがまた受信され、『ゆりちゃん好きだよ、愛してる』って女は言ってきた。
うわっ、まじ?根暗そうだったし、やっぱりメンヘラ女じゃん。


「まあいっか。えーと。俺も、好き、だ、よ」

そう文字を打って送信しようと指を滑らす。

しかし、俺は打つのを躊躇った。この女は地雷だからこそたくさん貢いでくれるし、たくさん構ってくれる。それにこんなメッセージ、ご機嫌とりのためなら、いろんな男や女にいくらでも言ってきた。


……でも、好き?

俺が好きなのはヒコたんだ。ヒコたんだけだ。
お前なんかじゃない。

俺に必要な人はヒコたん、ただ1人だけなんだ。



「……好き、とか気軽に言うんじゃねえよ。嘘つき」

俺は勢いよくスマホを投げ捨てた。

はぁ、なんて苦しくため息が漏れる。どうせあいつらは自分のために俺を利用する。信じてはダメだ、あいつらに依存しては、絶対ダメだ。また、壊れる。俺を、ぐちゃぐちゃにされる。 




「もうヤダ…ヒコたん早く会いたい…会いたいよ…ギュってしてよ……俺にはヒコたんだけなんだよ…」

俺だけの神様。虐められて、大切なものなんか何もなくて、ただ死のうとしていた俺を救ってくれた唯一1人だけの神様。何度でも言うが、俺は彼のために生きている。彼が生きてくれ、というから俺は生きているんだ。ヒコたんがいなければ俺はもう生きる理由はない。ヒコたんしか信じられる者はいない。


「ヒコたん…、でも、俺死にたいよ…」

どうして独りになるとこんな虚しい言葉しかでてこないんだろう。自己嫌悪。絶望。人間への不信感。
だから、家なんて嫌いなんだ…こんな場所から早くいなくなりたい。ヒコたんのいる、暖かいところに居たい。暗くてジメジメとした、こんなクソみたいな自分が見えない、明るくて眩しすぎる世界へ。



しかし、真っ暗な部屋の中。
俺は何も考えたくなくて目を閉じた。

そうすれば、身体はだんだんとベッドへ重たく沈んでいく。俺はそのまま意識を手放すように微睡んで、静かに眠った。


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