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本編
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食堂の定食を買おうと並んでいると、スッと背の高い影がかかる。
「あ、鮫原先輩。あれ?生徒会の先輩たちはいいんですか?」
てっきり鮫原先輩もあの揉みくちゃ生徒会の中にいると思ってた。
鮫原先輩はおそらく凌駕達の騒いでる方を見たのだろう。大きくため息をついた。
「いや、あいつら待ってたらいつまでたっても朝飯食べられないだろ?仕方ねえから俺はこっちで食事頼みに来た。アイツらの分も金貰ってるし」
そう言って財布を見せてくる鮫原先輩。さすが鮫原先輩、気がよく回る。しかし、この人が有能なせいで、生徒会一勢が余計ポンコツになっていっているような気もするが。
ある意味パシリを任されたような鮫原先輩と一緒にレーンへ並ぶ。受け取り口へ着いては食事を受け取った。持ち運べなかった食事はスタッフさんが一緒に運んでくれる。生徒たちが長テーブルで食事をとっている中、奥の円卓テーブルへ寄った。大概生徒会の食事スペースはそこと決まっているのだ。そちらの方へ向かっていくと既に先約がいたのか、席に座っている人物があった。
「あ、河上先輩…」
「どうも、先に頂いています」
いつの間にあの騒ぎの中から抜け出したのか、河上先輩が席で黙々と料理を食べていた。
しかも料理も自分で先に運んできていたようだ。どのタイミングで食堂の料理受け取っていたんだ、忍者か。
持ってきた料理を各々の席の前に置いていく。
鮫原先輩が隣を譲ってくれたため、俺はそこの席で食べることにした。ちなみに反対側の隣に座っているのは河上先輩だ。
「相馬ぁ~っ、やっとご飯食べれるよ~……は?!てかなんで相馬の両隣埋まってんの!?」
「凌駕さん、いつもこの席ですよね。会長と鮫原の隣です」
「いや、河上、そうだけど!でもさ!相馬俺と鮫原の隣に座れば良かったんじゃん!」
「それだと兄の隣に座りたいであろう鮫原先輩に悪いんで」
「気を遣わせてすまんな、相馬」
「いえいえ」
「えー!?相馬、いつも反抗するのに、なんでそういう時だけ気遣えちゃうのー?!でもいい子!兄ちゃんはお前のそういうとこ好き!…うー、だったら、だったら、反対側は?!」
「は?俺の隣はおめえだろうが」
「………みたいなので」
「…チッ、クソボケ会長」
凌駕は小声で「ファック会長」と再度呟いた。凌駕はいつも榊原会長には反抗的な態度を見せるが、実際には逆らえないのか素直に自分の定位置につく。いや、もう一度「ファック会長…」とは呟いていていた。
「ファック会長だと下ネタになるよ~」なんて下世話なツッコミをする満木先輩もこちらの方へ戻ってきて、席につく。
生徒会一同はテーブルを囲んで全員揃った。河上先輩は先に食べていたが、皆でいただきますと手を合わせ、朝ごはんをようやく食べ始めたのであった。
黙々と食べながら、相馬の頭の中はぼんやりと今日はなんの魚にしようかと考えていた。昨日は鯖だったからマグロでもいいかもしれない。人気トピックスだから図書室に本もたくさん置いてあるだろう。
相馬がポケーッと考えながら朝ごはんを咀嚼していると、それに気づいたのか凌駕は鮫原を無理矢理越えてちょっかいをかけてきた。
「相馬~またお魚のこと考えてる?今お前が食べてるのはキャベツだぞ~?可愛いな~?キャベツもっと食べるか?」
「りょうちゃんも可愛いよ~~はーいピーマンあげる~」
「満木てめえはピーマン食いたくねえだけだろ」
「え、なんでバレたの?あれ、俺らってもしかして以心伝心?相思相愛?」
「うるせえよボケ!」
「わっ、ピーマンこぼすな凌駕」
「なんで俺を怒るんだよ鮫原!満木がゼッテー今の悪いでしょ!」
「りょうちゃんがピーマン食べてくんないからじゃん~はい、あーん」
「誰がお前とあーんなんてやるか!」
「ギャーギャーうるせえぞ、てめえら。凌駕は俺の鶏食うんだよ」
「は?会長の?ヤダに決まってんじゃん」
「俺のが食えねえのか?いつもは大きく口開けて、美味しそうに食べてんのによぉ」
「は!?なにそれ?!ホント相馬の前でマジやめて!ヤダヤダ!食べない!会長からのなんて食べないから!食べない!食べないってば!!んぐぉ!」
会長から無理矢理鶏肉を刺したフォークごと、口の中へ凌駕は突っ込まれる。別に、会長からそうやって餌付けされてる話はよく聞くし何度か見たことあるからそんなに恥ずかしがるものでもないと思うが…。
また変なこと言うと兄が絡んでくるから、相馬はなるべく大人しく荒波立てず静かに食事を勤しむことにする。
騒がしいから反対側をちらりと見れば、河上先輩は食事を済ませたのか目を閉じて、我関せずと静かに座っている。すごい、この人の精神力がとんでもなく強い。
ちょっと波長が似てそうな予感に河上先輩へ心なしか好感を得ていると、鮫原先輩が急に立ち上がって他の生徒会軍団の騒ぎを止めた。
「おい、今日はそんなことしてる場合じゃねえだろ。何のために早起きしたんだよ」
「え?俺は相馬とご飯を食べに」
「オイ。そもそも早起きすることに意味があっただろ、凌駕」
「……あ、あーっ。忘れてた、そうでしたそうでした」
凌駕が何かを思い出したように椅子に座る。榊原会長と満木先輩も何か心当たりがあったのかあっさり座り直した。鮫原先輩も彼らの様子を見て着席する。
「……彼は今日の9時ごろに到着するみたいです」
「9時?HRの時間か…そろそろじゃないか」
「はい。手続きは既に済ましているようで、直接向かってくるようです。ちなみに寮への荷物は正午過ぎに届く予定です」
いつのまにか目を開けていた河上先輩は淡々と何かの報告をし始めた。鮫原先輩を始め他のメンバーも少し難しい顔をしてそれを聞いている。どことなく、急に硬い雰囲気になった彼らに俺は少し戸惑った。
会長もピリリとした空気を含ませていたが、わかっていたかのように淡々と口を開く。
「まあ、準備は済ませているんだろ、河上」
「はい。指定の場所3箇所は抑えてあります」
「会長。それでも早く備えておくには越したことはないと思います…もう向かった方がよいのでは」
「…ああ、わかってる」
榊原会長は鮫原先輩の言葉を聞いては少し機嫌悪そうに返事した。眉根がとても寄っていて、何だか不愉快そうだ。
「…あの、何かあるんですか」
「…ああ、いや、こちら生徒会の話だ。相馬はゆっくり食べてもらって構わない」
隣に座る鮫原先輩へ聞くと、そう答えられた。
それを見ていた凌駕は鋭い目つきを一瞬見せたが、はあっとため息をついて面倒くさそうに俺の方を向いた。
「実は、今日転入生がやってくるらしいんだよ」
「おい、凌駕」
「鮫原、このぐらいの情報ならいいでしょ。どうせ相馬のクラスに入るみたいだし」
転入生?しかも自分のクラスに。
驚いた顔をする俺に、凌賀は頬に手を突きながら、こちらを見て続けた。
「季節外れの転入生。そのお手伝いを俺ら生徒会がするってことになってね。だから今日は朝早くから準備をしなきゃいけないの。せっかく久々に相馬が一緒にご飯食べてくれたのにさ~!あんまりいられなくてホントごめんね?寂しかったらいつでも生徒会おいで?」
「いや、大丈夫。もう十分」
「お兄ちゃんは全然十分じゃないんだよぉ~…」
すかさず俺の元へ這い寄ろうとしてきた凌駕を、グググと満木先輩が背後から羽交い締めにした。笑顔なのにとてつもない馬鹿力で凌駕を抑え込んでいる。
「あ、りょうちゃん時間みたい~!お仕事だからそろそろ行こうね~」
「クソ!ボケ!満木はなせッ!お前らのせいで相馬とまだ話もまともにできてねえんだよ!」
「りょうちゃん今回はイイじゃん。ね?俺が遊んであげるから」
「お前とは絶対ヤダ!」
「おい、俺はメシ全部食えてねえぞ」
「会長残りはお運び致しますので、行きましょう」
「は?……わかった。凌駕、後でそれ食わせろよ」
「いや、何で俺がやらないといけないわけ!?ほんとヤダヤダ、相馬、相馬ぁ~」
涙をこぼしながら大声で俺の名を叫んで引きずられていく凌駕を見届ける。俺もちょうど朝食を食べ終わった頃だったし、別れるにはタイミングが良かっただろう。あの感じだと兄からもしばらくラインが来ないし、いろんなことがちょうどいい。
凌駕の叫び声を鼓膜からシャットダウンした相馬は、HRまで時間があるから図書館に寄ろうと決めたのであった。
「あ、鮫原先輩。あれ?生徒会の先輩たちはいいんですか?」
てっきり鮫原先輩もあの揉みくちゃ生徒会の中にいると思ってた。
鮫原先輩はおそらく凌駕達の騒いでる方を見たのだろう。大きくため息をついた。
「いや、あいつら待ってたらいつまでたっても朝飯食べられないだろ?仕方ねえから俺はこっちで食事頼みに来た。アイツらの分も金貰ってるし」
そう言って財布を見せてくる鮫原先輩。さすが鮫原先輩、気がよく回る。しかし、この人が有能なせいで、生徒会一勢が余計ポンコツになっていっているような気もするが。
ある意味パシリを任されたような鮫原先輩と一緒にレーンへ並ぶ。受け取り口へ着いては食事を受け取った。持ち運べなかった食事はスタッフさんが一緒に運んでくれる。生徒たちが長テーブルで食事をとっている中、奥の円卓テーブルへ寄った。大概生徒会の食事スペースはそこと決まっているのだ。そちらの方へ向かっていくと既に先約がいたのか、席に座っている人物があった。
「あ、河上先輩…」
「どうも、先に頂いています」
いつの間にあの騒ぎの中から抜け出したのか、河上先輩が席で黙々と料理を食べていた。
しかも料理も自分で先に運んできていたようだ。どのタイミングで食堂の料理受け取っていたんだ、忍者か。
持ってきた料理を各々の席の前に置いていく。
鮫原先輩が隣を譲ってくれたため、俺はそこの席で食べることにした。ちなみに反対側の隣に座っているのは河上先輩だ。
「相馬ぁ~っ、やっとご飯食べれるよ~……は?!てかなんで相馬の両隣埋まってんの!?」
「凌駕さん、いつもこの席ですよね。会長と鮫原の隣です」
「いや、河上、そうだけど!でもさ!相馬俺と鮫原の隣に座れば良かったんじゃん!」
「それだと兄の隣に座りたいであろう鮫原先輩に悪いんで」
「気を遣わせてすまんな、相馬」
「いえいえ」
「えー!?相馬、いつも反抗するのに、なんでそういう時だけ気遣えちゃうのー?!でもいい子!兄ちゃんはお前のそういうとこ好き!…うー、だったら、だったら、反対側は?!」
「は?俺の隣はおめえだろうが」
「………みたいなので」
「…チッ、クソボケ会長」
凌駕は小声で「ファック会長」と再度呟いた。凌駕はいつも榊原会長には反抗的な態度を見せるが、実際には逆らえないのか素直に自分の定位置につく。いや、もう一度「ファック会長…」とは呟いていていた。
「ファック会長だと下ネタになるよ~」なんて下世話なツッコミをする満木先輩もこちらの方へ戻ってきて、席につく。
生徒会一同はテーブルを囲んで全員揃った。河上先輩は先に食べていたが、皆でいただきますと手を合わせ、朝ごはんをようやく食べ始めたのであった。
黙々と食べながら、相馬の頭の中はぼんやりと今日はなんの魚にしようかと考えていた。昨日は鯖だったからマグロでもいいかもしれない。人気トピックスだから図書室に本もたくさん置いてあるだろう。
相馬がポケーッと考えながら朝ごはんを咀嚼していると、それに気づいたのか凌駕は鮫原を無理矢理越えてちょっかいをかけてきた。
「相馬~またお魚のこと考えてる?今お前が食べてるのはキャベツだぞ~?可愛いな~?キャベツもっと食べるか?」
「りょうちゃんも可愛いよ~~はーいピーマンあげる~」
「満木てめえはピーマン食いたくねえだけだろ」
「え、なんでバレたの?あれ、俺らってもしかして以心伝心?相思相愛?」
「うるせえよボケ!」
「わっ、ピーマンこぼすな凌駕」
「なんで俺を怒るんだよ鮫原!満木がゼッテー今の悪いでしょ!」
「りょうちゃんがピーマン食べてくんないからじゃん~はい、あーん」
「誰がお前とあーんなんてやるか!」
「ギャーギャーうるせえぞ、てめえら。凌駕は俺の鶏食うんだよ」
「は?会長の?ヤダに決まってんじゃん」
「俺のが食えねえのか?いつもは大きく口開けて、美味しそうに食べてんのによぉ」
「は!?なにそれ?!ホント相馬の前でマジやめて!ヤダヤダ!食べない!会長からのなんて食べないから!食べない!食べないってば!!んぐぉ!」
会長から無理矢理鶏肉を刺したフォークごと、口の中へ凌駕は突っ込まれる。別に、会長からそうやって餌付けされてる話はよく聞くし何度か見たことあるからそんなに恥ずかしがるものでもないと思うが…。
また変なこと言うと兄が絡んでくるから、相馬はなるべく大人しく荒波立てず静かに食事を勤しむことにする。
騒がしいから反対側をちらりと見れば、河上先輩は食事を済ませたのか目を閉じて、我関せずと静かに座っている。すごい、この人の精神力がとんでもなく強い。
ちょっと波長が似てそうな予感に河上先輩へ心なしか好感を得ていると、鮫原先輩が急に立ち上がって他の生徒会軍団の騒ぎを止めた。
「おい、今日はそんなことしてる場合じゃねえだろ。何のために早起きしたんだよ」
「え?俺は相馬とご飯を食べに」
「オイ。そもそも早起きすることに意味があっただろ、凌駕」
「……あ、あーっ。忘れてた、そうでしたそうでした」
凌駕が何かを思い出したように椅子に座る。榊原会長と満木先輩も何か心当たりがあったのかあっさり座り直した。鮫原先輩も彼らの様子を見て着席する。
「……彼は今日の9時ごろに到着するみたいです」
「9時?HRの時間か…そろそろじゃないか」
「はい。手続きは既に済ましているようで、直接向かってくるようです。ちなみに寮への荷物は正午過ぎに届く予定です」
いつのまにか目を開けていた河上先輩は淡々と何かの報告をし始めた。鮫原先輩を始め他のメンバーも少し難しい顔をしてそれを聞いている。どことなく、急に硬い雰囲気になった彼らに俺は少し戸惑った。
会長もピリリとした空気を含ませていたが、わかっていたかのように淡々と口を開く。
「まあ、準備は済ませているんだろ、河上」
「はい。指定の場所3箇所は抑えてあります」
「会長。それでも早く備えておくには越したことはないと思います…もう向かった方がよいのでは」
「…ああ、わかってる」
榊原会長は鮫原先輩の言葉を聞いては少し機嫌悪そうに返事した。眉根がとても寄っていて、何だか不愉快そうだ。
「…あの、何かあるんですか」
「…ああ、いや、こちら生徒会の話だ。相馬はゆっくり食べてもらって構わない」
隣に座る鮫原先輩へ聞くと、そう答えられた。
それを見ていた凌駕は鋭い目つきを一瞬見せたが、はあっとため息をついて面倒くさそうに俺の方を向いた。
「実は、今日転入生がやってくるらしいんだよ」
「おい、凌駕」
「鮫原、このぐらいの情報ならいいでしょ。どうせ相馬のクラスに入るみたいだし」
転入生?しかも自分のクラスに。
驚いた顔をする俺に、凌賀は頬に手を突きながら、こちらを見て続けた。
「季節外れの転入生。そのお手伝いを俺ら生徒会がするってことになってね。だから今日は朝早くから準備をしなきゃいけないの。せっかく久々に相馬が一緒にご飯食べてくれたのにさ~!あんまりいられなくてホントごめんね?寂しかったらいつでも生徒会おいで?」
「いや、大丈夫。もう十分」
「お兄ちゃんは全然十分じゃないんだよぉ~…」
すかさず俺の元へ這い寄ろうとしてきた凌駕を、グググと満木先輩が背後から羽交い締めにした。笑顔なのにとてつもない馬鹿力で凌駕を抑え込んでいる。
「あ、りょうちゃん時間みたい~!お仕事だからそろそろ行こうね~」
「クソ!ボケ!満木はなせッ!お前らのせいで相馬とまだ話もまともにできてねえんだよ!」
「りょうちゃん今回はイイじゃん。ね?俺が遊んであげるから」
「お前とは絶対ヤダ!」
「おい、俺はメシ全部食えてねえぞ」
「会長残りはお運び致しますので、行きましょう」
「は?……わかった。凌駕、後でそれ食わせろよ」
「いや、何で俺がやらないといけないわけ!?ほんとヤダヤダ、相馬、相馬ぁ~」
涙をこぼしながら大声で俺の名を叫んで引きずられていく凌駕を見届ける。俺もちょうど朝食を食べ終わった頃だったし、別れるにはタイミングが良かっただろう。あの感じだと兄からもしばらくラインが来ないし、いろんなことがちょうどいい。
凌駕の叫び声を鼓膜からシャットダウンした相馬は、HRまで時間があるから図書館に寄ろうと決めたのであった。
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