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1年生編5月
◆生徒会選挙、いざ参る
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中間考査終了後、一日置いて生徒会選挙が行われる。
生徒会に立候補する生徒はやる気に満ち溢れ、場合によっては緊張しているようだが、それ以外の生徒は自分には関係ないといったスタンスだ。
「涼子ちゃんは大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。昨夜も飲みながらテレビ観ていたし」
「飲みながら?」
「あ、ジュースね。ジュース。あいついつか虫歯になるよ」
魔女に人間の法は関係ない、それに外見年齢と実年齢はイコールではないため、アルコールを摂取しても問題ない。涼子は赤ワインが好きなようで、自宅にはワインクーラーを設置し、いつもボトルで埋まっている。
「生徒会書記に立候補致します一年八組の吉川涼子と申します」
涼子が壇上で作り上げた笑顔を作るとところどころから歓声が上がった。
「何、演説じゃないの?」
「涼子ちゃんは、テスト前の活動でファンを多数獲得したみたいだよ。一年生初のファンクラブだって」
「何やってんだ、あいつ」
海と涼子が出会った時は、戦闘狂で有名だった。スピーチで民衆を味方につけるのではなく、力で従わせて楽しんでいたのだから。
一体何をどうしたら彼女をここまで変えられるのか。
「以上で吉川涼子の演説を終わりと致します」
一礼をして顔を上げた彼女と目が合う――合わせてきた。昔の性格のことを周りにバラしたら許さないと言っているようにも見える。海には関係のないことだ。
涼子の後はあまり印象に残らない演説が続き、最後の生徒会長立候補者だけが記憶に残ることになる。演説は立候補者と応援演説者の二人によって行われるが、立候補者である男子がバスケットボールを持って壇上に現れ、それを応援演説者である牧瀬礼奈に取り上げられるというやり取りから始まるのだ。
「とうちゃん、真面目にやってって言ったよね? 真面目にやるって言ったから、私は応援演説を引き受けたのよ」
「とうちゃんって呼ぶのやめろ!!!」
二年生あたりから「夫婦漫才は余所でやれ」とヤジが飛んでくる。
「……この学校大丈夫か」
生徒会長に立候補しているのは彼一人のみ。信任投票になるそうだが、嫌われているわけでなければ当選は確実であろう。
「賑やかだねぇ」
侑希は笑って言うが、どうも海は笑えない。
人間界に対するイメージはもう少し大きなくくりで、政治のイメージが強い。この学校の生徒会メンバーが将来の日本を担うわけではないと分かっていても不安だ。
「お手伝いありがとうございました」
勝ち誇った顔で、当選の報告をしに隣のクラスまでやってきた涼子を見るとなおのこと不安になる。彼女が一体何を企んでいるのか、海はまだ知らない。
「似合います?」
彼女の左腕には生徒会と白地で書かれた赤い腕章。
「血の色みたいだ」
「カイには聞いた私が愚かでしたわ」
「似合うよ、涼子ちゃん」
「ありがとうございます。侑希、この学校で困ったことがあれば私に言ってください。この権限でなんでもお助け致します」
「職権乱用だろ、それ」
生徒会に立候補する生徒はやる気に満ち溢れ、場合によっては緊張しているようだが、それ以外の生徒は自分には関係ないといったスタンスだ。
「涼子ちゃんは大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。昨夜も飲みながらテレビ観ていたし」
「飲みながら?」
「あ、ジュースね。ジュース。あいついつか虫歯になるよ」
魔女に人間の法は関係ない、それに外見年齢と実年齢はイコールではないため、アルコールを摂取しても問題ない。涼子は赤ワインが好きなようで、自宅にはワインクーラーを設置し、いつもボトルで埋まっている。
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「涼子ちゃんは、テスト前の活動でファンを多数獲得したみたいだよ。一年生初のファンクラブだって」
「何やってんだ、あいつ」
海と涼子が出会った時は、戦闘狂で有名だった。スピーチで民衆を味方につけるのではなく、力で従わせて楽しんでいたのだから。
一体何をどうしたら彼女をここまで変えられるのか。
「以上で吉川涼子の演説を終わりと致します」
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涼子の後はあまり印象に残らない演説が続き、最後の生徒会長立候補者だけが記憶に残ることになる。演説は立候補者と応援演説者の二人によって行われるが、立候補者である男子がバスケットボールを持って壇上に現れ、それを応援演説者である牧瀬礼奈に取り上げられるというやり取りから始まるのだ。
「とうちゃん、真面目にやってって言ったよね? 真面目にやるって言ったから、私は応援演説を引き受けたのよ」
「とうちゃんって呼ぶのやめろ!!!」
二年生あたりから「夫婦漫才は余所でやれ」とヤジが飛んでくる。
「……この学校大丈夫か」
生徒会長に立候補しているのは彼一人のみ。信任投票になるそうだが、嫌われているわけでなければ当選は確実であろう。
「賑やかだねぇ」
侑希は笑って言うが、どうも海は笑えない。
人間界に対するイメージはもう少し大きなくくりで、政治のイメージが強い。この学校の生徒会メンバーが将来の日本を担うわけではないと分かっていても不安だ。
「お手伝いありがとうございました」
勝ち誇った顔で、当選の報告をしに隣のクラスまでやってきた涼子を見るとなおのこと不安になる。彼女が一体何を企んでいるのか、海はまだ知らない。
「似合います?」
彼女の左腕には生徒会と白地で書かれた赤い腕章。
「血の色みたいだ」
「カイには聞いた私が愚かでしたわ」
「似合うよ、涼子ちゃん」
「ありがとうございます。侑希、この学校で困ったことがあれば私に言ってください。この権限でなんでもお助け致します」
「職権乱用だろ、それ」
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