呪いの騎士と生贄の王女

佐崎咲

文字の大きさ
上 下
7 / 16

第六話 証明の続き

しおりを挟む
「あ?」

 唐突な言葉に、頭が回らない。

「そうしたら自由になれるでしょ。それからやりたいことを考えたらいいよ。――まあ、代わりに自由じゃないことも付いて来るけど、それはまあ成功報酬ってことで諦めてもらおうかな」

 何やら後半は意味がわからないが、自由の意図はなんとなく汲み取れた。

「呪いなんてないって証明するってことか?」
「いや。呪いがあるのかないのか、どっちでもいい。はっきりさせるんだよ」
「どっちでもいいって、お前な。他人事だと思いやがって……」

 ロードは呆れたが、ウィルは平然と言った。

「呪いがあるってわかったら、発動条件をおさえればいいでしょ。そしてそうならないようにすればいい。要は、付き合い方がわかればいいんだよ。包丁が武器にも道具にもなるのと同じ。少なくとも、今みたいに普通に暮らせることは実証済なんだからさ」

 呪いなんてないと思いながらも、あったらどうしようと恐れていた。
 だがそう言われると、なんということもないように思えてしまう。

「でも、どうやって?」
「あとは危機的状況に陥っても発現しないって立証できれば完璧かな? 『ない』ことは証明できなくても、一通りの生活をしていて呪いを恐れる必要はないってわかれば、みんな安心してロードに近づけるし、ロードも安心して近づけるでしょ」

 その言葉に、ロードは目を見開いた。
 そんなことは考えてもみなかった。
 どうしたらいいのか考えたことはあったけれど、ないことの証明なんてできないと、いつもそこで終わってしまったから。
 それに、それは一人でできることではなかったから。

「騎士団で生活していても呪いなんて起きてないことは、みんな知ってるはずなのに、全然態度が変わらないしね。まだ怖いんだったら、徹底的に可能性を潰すよ。手始めに、みんなの前でハグしようか?」
「阿呆……」

 ウィルが言うと冗談に聞こえないから困る。

「ロードが安心できるまでは、勝手に触ったりしないよ。だけどいつかもう大丈夫って思ったら――」

 何を言い出すのか眉を顰め身構える。

「腕相撲でもしようか」

 ため息を吐き出したロードに、ウィルは楽しげに笑った。

 だがそんな日は来ないまま、二人の企みは途絶えた。
 ある日ウィルが修練中に倒れたのだ。
 苦しそうに息をするウィルを抱きかかえようとした手をはっとして引き戻し、立ち尽くすロードにウィルは言った。

「ついに、限界が来たみたい……。あーあ、まだこれからだったのに」

 それきり、ウィルが第三騎士団の修練場に姿を現すことはなかった。
 騎士団長にウィルの容態を尋ねても『問題ない』とだけ返されたが、はぐらかされているのがわかった。
 しかしその後、一通の手紙が届けられた。
 差出人の名前はなかった。
 ただそこには、『証明の続きは、また今度』とだけ書かれていた。
 それから一年が経ったが、ウィルとはまだ会えていない。

 だが、ウィルが証明しようとしてくれていたその続きを、今魔王討伐を持って果たそうとしている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば
恋愛
ビリビリッ! 「む……、胸がぁぁぁッ!!」 「陛下、声がでかいです!」 ◆ フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。 私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。 だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。 たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。 「【女体化の呪い】だ!」 勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?! 勢い強めの3万字ラブコメです。 全18話、5/5の昼には完結します。 他のサイトでも公開しています。

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

転生先は推しの婚約者のご令嬢でした

真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。 ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。 ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。 推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。 ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。 けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。 ※「小説家になろう」にも掲載中です

処理中です...