18 / 26
第二章
第9話
しおりを挟む
ラグート邸に戻り、手当てを終えたスフィーナを前に、グレイグは他に怪我はないかと全身くまなく確認し、それからほっと息を吐いた。
だが、顔を上げたときにはその目は厳しいものになっていた。
「何故あんな無茶をした」
「心配かけてごめんなさい。だけど確証が持てなければいつまでも埒が明かないと思ったのよ。たくさんの人がいる中だから、あとからでも確認できる目印があった方がわかりやすいし」
怪我をした男三人とイザベラは、両腕に怪我を負っていた。
それはダスティンがあたりをつけていたのと同じ顔触れだ。ゲイツをけしかけたのは彼らに違いなかった。
スフィーナは、サナの無念の分も、せっかく加護を与えてくれた女神に報いるためにも、やられてからやり返すだけではなく、その指輪の効果を最大限に利用したかったのだ。
「スフィーナを狙おうとする動きは既に察知しているからあたりはつけられたとアンリーク伯爵も言っていただろう! 何もその身に怪我まで負うことはない!」
「あのお義母さまのことだもの。また陽動も含まれていたかもしれないじゃない。二重に確認できた方が確かでしょう。何の関係もない人に冤罪を着せるわけにはいかないわ」
「だとしても……。俺はスフィーナに怪我を負わせたくはなかった。その気持ちもわかってくれ」
グレイグはスフィーナの包帯の巻かれた左腕に視線を落とし、苦しげに眉を顰めた。
馬車に乗っている間も、ラグート邸に戻ってからもずっと怒っていたグレイグのそんな姿に、スフィーナは「ごめんなさい」と声を落とした。
相談もせずに独断で行動したことは申し訳ないと思っている。
だが相談したところで、却下されただろうことは目に見えている。
グレイグも、ダスティンも、スフィーナを守るためにしていることであって、スフィーナを危険にさらすつもりはないとわかっていたから。
それはとても嬉しいし、ありがたいことだ。
だが自分のことなのに、いつも傷つかずに守られているばかりなのは嫌だったのだ。
「勝手なことをしたとはわかっているわ。でもそのために護身術も教えてもらってたし、想定される攻撃に対する身のかわしかたは何度もグレイグと練習していたし」
「その通りだ。かわすために、無事であるために必死で教えこんだんだ。狙われたという事実それだけでじゅうぶんだったんだからな」
スフィーナは言い返そうと口を開き、痛ましげに顔を曇らせるグレイグの顔を目の当たりにして口を閉じた。
「――心配をかけてごめんなさい」
しゅん、と言葉尻をすぼめれば、グレイグは腹の底から吐き出すように、肩ではあと息を吐いた。
「いや、いい。謝ってほしいわけじゃない。ただ、もっと自分を大事にしてほしいだけだ」
「ありがとう。だけど私だって、グレイグやお父様のことが大事なの。これ以上二人を危険にさらしたりしたくはなかったの。そう思う気持ちはグレイグと同じでしょう?」
そっと見上げれば、グレイグがやれやれと頬を緩めたのがわかった。
「もうわかったよ。とにかくスフィーナが無事でよかった。だけど頼むから、もう危険なことはしないでくれ。スフィーナを失ったら、俺もアンリーク伯爵も何のためにここまで頑張ってきたのかわからなくなるから」
「うん。ごめんね。ありがとう」
グレイグはそっとスフィーナを抱きしめた。
背中に回された手は震えていた。
グレイグも派兵を知った時のスフィーナと同じ。
スフィーナを失うことを恐れていたのだとわかった。
「ごめんね」
何度もそう言って、スフィーナはきつくグレイグを抱きしめ返した。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
その後。ダスティンは怪我を負ったイザベラや、母親に怪我を負わせてしまい動揺していたミリーを邸まで連れ帰り、様々な事後処理を終えた夜中にラグート邸へとやってきた。
勿論スフィーナはひどく怒られた。
「だがまあ大きな怪我にならずに済んでよかった」
「グレイグと訓練したもの」
「慢心は油断を生むぞ。まだ油断はできん。ミリーが相当荒れておったからな」
グレイグとスフィーナは顔を見合わせた。
「最初はスフィーナを悪女とのたまったゲイツに便乗するように、あれこれとスフィーナが何をやらかしただのと吹聴しておったのだが。しばらくしてヘイムート公爵が会場に戻ってきてな」
ヘイムート公爵は会場に残った人々に向かって騒がせたことを謝罪し、事の次第を話した。
ゲイツを辺境の地ガルシアに送り込んだのはヘイムート公爵自身であること。
ゲイツが派兵されたことにスフィーナは全くの無関係であること。
「アホ息子のやらかしたことの収拾をつけるのは当然のことだな。ヘイムート公爵がまだまともな人間でよかった」
「まあ、公爵の大きすぎる抑圧がああいった息子が育ってしまった一つの要因ではあると思うがな。私も人のことは言えまい。イザベラが罪をおかしたとて、その子であるミリーには罪はないと、スフィーナと分け隔てなく育てたつもりだったが、あれはどんどん思わぬ方向にばかり歪んでいき、結局は空虚ばかりを胸に抱えた寂しい人間になってしまった」
ヘイムート公爵が事の次第を話しに戻る前から、会場にはゲイツを唆したのはミリーなのではないかとあちこちで囁かれていたのだという。
ヘイムート公爵を唆したのは、スフィーナではなくミリーなのではないか。
グレイグよりも自分の婚約者であるゲイツが優れていると知らしめたかったのではないか。
それがうまくいかなかったから、今度はゲイツを唆して腹いせにスフィーナを害そうとしたのではないか。
そう考えた方が彼らにとって自然だったのだ。
何故なら学院に通う子息子女はミリーが普段スフィーナを貶めるために、ありもしない悪行を吹聴して回っていることを知っているからだ。
これまでミリーは口で貶めるだけだったから周囲も聞き流していたが、さすがに今回のことは行き過ぎであり、ミリーがアンリーク家の次期当主となったとしても付き合いは控えたいとまで聞こえてきたそうだ。
「ミリーも躍起になって声を張り上げていたがな。イザベラの手当の方が先だと宥めて、なんとか家に連れ帰った。馬車の中でいろいろと話をしたが、もう聞く耳は持たなかった。サナの願いでもあったから、ここまで見捨てずに来たつもりだったが。あれはもう、来るところまで来てしまったかもしれんな」
ダスティンは組んだ手の上に視線を落とした。
スフィーナは何と言っていいのかわからなくなったが、ダスティンはすぐに顔を上げた。
「まあ、無謀なスフィーナのおかげでやっとあちらの片は付きそうだ」
ダスティンが名を挙げたのは、三人。
やはりスフィーナが会場で顔を確認した男たちだった。
ロクに話したこともない。挨拶すら交わしたことがあるかも定かではなかった。
そんな人たちに、他人の領地であるのに欲し、勝手に疎ましがられ、害されようとしていたのかと思うと腹が立った。
「明日、それぞれに不正の疑いで国の手が入ることになっている。勿論国王了承の元だ。いずれも黒いものばかり隠しこんでいる輩でよかったというべきか。牢に入ればそれまでだ」
「国王? まさか、そんなところまで絡んでいたとは」
グレイグが呆気にとられたように呟いたが、スフィーナの驚きはそれ以上だった。
「お父様、いつ陛下とそんな親しい仲に?」
「不断の努力で、というのは半ば冗談だが。モルント鉱山を外交に利用してもらう」
「外交に?」
「売るのは情報だよ。他国から観光と称して、『良質なダイヤモンドやピンクダイヤモンドが採れた歴史的な鉱山』がどんなところか、地質やら何やら採掘できそうな条件を探りに来る。一般の国民にとってはただの観光だが、山も土地もたくさん持っている国は、自国のどこかに採れる可能性が高い場所がないか、知りたいのさ」
なるほど、とスフィーナは頷いた。
舌を巻くと言うのはこういうことを言うのだろう。
「国が関わるなら、もうモルント鉱山が一貴族に狙われることはなくなるのね」
「ああ。イザベラに繋がりがある者たちを排除したところで、モルント鉱山を狙う者は後を絶たない。だから根本的に対応しなければならなかった。おかげでここまで時間がかかってしまったが、それも明日で終わりだ」
あと少し。
明日になれば、全て片が付く。
ダスティンの言葉は心強くはあったが、スフィーナは一人ベッドに横になってもなかなか寝付けなかった。
あの義母が、ミリーが、大人しくされたままにしているだろうか。
スフィーナには、このまま終わるとは思えなかった。
だが、顔を上げたときにはその目は厳しいものになっていた。
「何故あんな無茶をした」
「心配かけてごめんなさい。だけど確証が持てなければいつまでも埒が明かないと思ったのよ。たくさんの人がいる中だから、あとからでも確認できる目印があった方がわかりやすいし」
怪我をした男三人とイザベラは、両腕に怪我を負っていた。
それはダスティンがあたりをつけていたのと同じ顔触れだ。ゲイツをけしかけたのは彼らに違いなかった。
スフィーナは、サナの無念の分も、せっかく加護を与えてくれた女神に報いるためにも、やられてからやり返すだけではなく、その指輪の効果を最大限に利用したかったのだ。
「スフィーナを狙おうとする動きは既に察知しているからあたりはつけられたとアンリーク伯爵も言っていただろう! 何もその身に怪我まで負うことはない!」
「あのお義母さまのことだもの。また陽動も含まれていたかもしれないじゃない。二重に確認できた方が確かでしょう。何の関係もない人に冤罪を着せるわけにはいかないわ」
「だとしても……。俺はスフィーナに怪我を負わせたくはなかった。その気持ちもわかってくれ」
グレイグはスフィーナの包帯の巻かれた左腕に視線を落とし、苦しげに眉を顰めた。
馬車に乗っている間も、ラグート邸に戻ってからもずっと怒っていたグレイグのそんな姿に、スフィーナは「ごめんなさい」と声を落とした。
相談もせずに独断で行動したことは申し訳ないと思っている。
だが相談したところで、却下されただろうことは目に見えている。
グレイグも、ダスティンも、スフィーナを守るためにしていることであって、スフィーナを危険にさらすつもりはないとわかっていたから。
それはとても嬉しいし、ありがたいことだ。
だが自分のことなのに、いつも傷つかずに守られているばかりなのは嫌だったのだ。
「勝手なことをしたとはわかっているわ。でもそのために護身術も教えてもらってたし、想定される攻撃に対する身のかわしかたは何度もグレイグと練習していたし」
「その通りだ。かわすために、無事であるために必死で教えこんだんだ。狙われたという事実それだけでじゅうぶんだったんだからな」
スフィーナは言い返そうと口を開き、痛ましげに顔を曇らせるグレイグの顔を目の当たりにして口を閉じた。
「――心配をかけてごめんなさい」
しゅん、と言葉尻をすぼめれば、グレイグは腹の底から吐き出すように、肩ではあと息を吐いた。
「いや、いい。謝ってほしいわけじゃない。ただ、もっと自分を大事にしてほしいだけだ」
「ありがとう。だけど私だって、グレイグやお父様のことが大事なの。これ以上二人を危険にさらしたりしたくはなかったの。そう思う気持ちはグレイグと同じでしょう?」
そっと見上げれば、グレイグがやれやれと頬を緩めたのがわかった。
「もうわかったよ。とにかくスフィーナが無事でよかった。だけど頼むから、もう危険なことはしないでくれ。スフィーナを失ったら、俺もアンリーク伯爵も何のためにここまで頑張ってきたのかわからなくなるから」
「うん。ごめんね。ありがとう」
グレイグはそっとスフィーナを抱きしめた。
背中に回された手は震えていた。
グレイグも派兵を知った時のスフィーナと同じ。
スフィーナを失うことを恐れていたのだとわかった。
「ごめんね」
何度もそう言って、スフィーナはきつくグレイグを抱きしめ返した。
・・・◆・・・◇・・・◆・・・
その後。ダスティンは怪我を負ったイザベラや、母親に怪我を負わせてしまい動揺していたミリーを邸まで連れ帰り、様々な事後処理を終えた夜中にラグート邸へとやってきた。
勿論スフィーナはひどく怒られた。
「だがまあ大きな怪我にならずに済んでよかった」
「グレイグと訓練したもの」
「慢心は油断を生むぞ。まだ油断はできん。ミリーが相当荒れておったからな」
グレイグとスフィーナは顔を見合わせた。
「最初はスフィーナを悪女とのたまったゲイツに便乗するように、あれこれとスフィーナが何をやらかしただのと吹聴しておったのだが。しばらくしてヘイムート公爵が会場に戻ってきてな」
ヘイムート公爵は会場に残った人々に向かって騒がせたことを謝罪し、事の次第を話した。
ゲイツを辺境の地ガルシアに送り込んだのはヘイムート公爵自身であること。
ゲイツが派兵されたことにスフィーナは全くの無関係であること。
「アホ息子のやらかしたことの収拾をつけるのは当然のことだな。ヘイムート公爵がまだまともな人間でよかった」
「まあ、公爵の大きすぎる抑圧がああいった息子が育ってしまった一つの要因ではあると思うがな。私も人のことは言えまい。イザベラが罪をおかしたとて、その子であるミリーには罪はないと、スフィーナと分け隔てなく育てたつもりだったが、あれはどんどん思わぬ方向にばかり歪んでいき、結局は空虚ばかりを胸に抱えた寂しい人間になってしまった」
ヘイムート公爵が事の次第を話しに戻る前から、会場にはゲイツを唆したのはミリーなのではないかとあちこちで囁かれていたのだという。
ヘイムート公爵を唆したのは、スフィーナではなくミリーなのではないか。
グレイグよりも自分の婚約者であるゲイツが優れていると知らしめたかったのではないか。
それがうまくいかなかったから、今度はゲイツを唆して腹いせにスフィーナを害そうとしたのではないか。
そう考えた方が彼らにとって自然だったのだ。
何故なら学院に通う子息子女はミリーが普段スフィーナを貶めるために、ありもしない悪行を吹聴して回っていることを知っているからだ。
これまでミリーは口で貶めるだけだったから周囲も聞き流していたが、さすがに今回のことは行き過ぎであり、ミリーがアンリーク家の次期当主となったとしても付き合いは控えたいとまで聞こえてきたそうだ。
「ミリーも躍起になって声を張り上げていたがな。イザベラの手当の方が先だと宥めて、なんとか家に連れ帰った。馬車の中でいろいろと話をしたが、もう聞く耳は持たなかった。サナの願いでもあったから、ここまで見捨てずに来たつもりだったが。あれはもう、来るところまで来てしまったかもしれんな」
ダスティンは組んだ手の上に視線を落とした。
スフィーナは何と言っていいのかわからなくなったが、ダスティンはすぐに顔を上げた。
「まあ、無謀なスフィーナのおかげでやっとあちらの片は付きそうだ」
ダスティンが名を挙げたのは、三人。
やはりスフィーナが会場で顔を確認した男たちだった。
ロクに話したこともない。挨拶すら交わしたことがあるかも定かではなかった。
そんな人たちに、他人の領地であるのに欲し、勝手に疎ましがられ、害されようとしていたのかと思うと腹が立った。
「明日、それぞれに不正の疑いで国の手が入ることになっている。勿論国王了承の元だ。いずれも黒いものばかり隠しこんでいる輩でよかったというべきか。牢に入ればそれまでだ」
「国王? まさか、そんなところまで絡んでいたとは」
グレイグが呆気にとられたように呟いたが、スフィーナの驚きはそれ以上だった。
「お父様、いつ陛下とそんな親しい仲に?」
「不断の努力で、というのは半ば冗談だが。モルント鉱山を外交に利用してもらう」
「外交に?」
「売るのは情報だよ。他国から観光と称して、『良質なダイヤモンドやピンクダイヤモンドが採れた歴史的な鉱山』がどんなところか、地質やら何やら採掘できそうな条件を探りに来る。一般の国民にとってはただの観光だが、山も土地もたくさん持っている国は、自国のどこかに採れる可能性が高い場所がないか、知りたいのさ」
なるほど、とスフィーナは頷いた。
舌を巻くと言うのはこういうことを言うのだろう。
「国が関わるなら、もうモルント鉱山が一貴族に狙われることはなくなるのね」
「ああ。イザベラに繋がりがある者たちを排除したところで、モルント鉱山を狙う者は後を絶たない。だから根本的に対応しなければならなかった。おかげでここまで時間がかかってしまったが、それも明日で終わりだ」
あと少し。
明日になれば、全て片が付く。
ダスティンの言葉は心強くはあったが、スフィーナは一人ベッドに横になってもなかなか寝付けなかった。
あの義母が、ミリーが、大人しくされたままにしているだろうか。
スフィーナには、このまま終わるとは思えなかった。
17
お気に入りに追加
2,757
あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

ヴァカロ王太子のおもてなし ~目には目を、婚約破棄には婚約破棄を~
玄未マオ
ファンタジー
帝国公女アレンディナの婚約者は属国のヴァカロ王太子であるが、何かと残念な人だった。
公務があるので王宮に戻ってくるのはその日の夕方だと伝えているのに、前日やってきた義姉夫婦のおもてなしのサポートをしなかったアレンディナをけしからん、と、姉といっしょになって責め立てた。
馬鹿ですか?
その後『反省?』しないアレンディナに対する王太子からの常識外れの宣言。
大勢の来客がやってくるパーティ会場で『婚約破棄』を叫ぶのが、あなた方の土地の流儀なのですね。
帝国ではそんな重要なことは、関係者同士が顔を合わせて話し合い、決まった後で互いのダメージが少なくなる形で発表するのが普通だったのですが……。
でも、わかりました。
それがあなた方の風習なら、その文化と歴史に敬意をもって合わせましょう。
やられたことを『倍返し』以上のことをしているようだが、帝国公女の動機は意外と優しいです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる