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第五章 魔王、帰る
おまけ
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「なあ、珠美」
「なに、ラース」
「虎の姿にならないと駄目か?」
「うん。寝るときは虎のラースがいい」
「そうか……」
「うん」
「なあ、珠美」
「なに、ラース」
「たまには人の姿のままでも――」
「やだ。虎のラースがいい。もふもふは正義だよ」
「…………絶対か?」
「……。じゃあ私がハタチになったら」
「ハタチ?」
「二十歳。あっちの世界では、二十歳で大人とみなされるの」
「今珠美は十九歳だったな? あと何か月だ?」
「……ないしょ」
「珠美?!」
「心の準備ができたらね!!」
「……なんだ。顔が赤いぞ、珠美」
「うるさい!」
「ほう……ちゃんとわかってはいるんだな?」
「うるさいうるさいうるさーい!」
「ははは! それならいい。ちゃんと待つよ」
「ぐぅ……! いつかそのラースの大人の余裕、なくしてやるから」
「馬鹿だな。おまえに対してはいつも余裕なんかないさ」
「うそだぁ」
「本当だよ。珠美には最初から最後まで、かなう気がしない」
「じゃあいい。許す」
「ははは! じゃあ明日な」
「は?! 何の話?! 待つって言ったじゃん」
「待つさ。別に何もしなければいいんだろ?」
「いや、その、だって、」
「まあ、少しずつな。ゆっくりとだ」
「……うん。ラース、おやすみなさい」
「ああ。ゆっくり寝ろ」
「ラースの胸の中が、一番、……、あったかい……」
部屋の中には静かに繰り返される寝息と、ラースの大きな深いため息だけが響いた。
それから小さく笑った声が、「おやすみ」と呟いた。
「なに、ラース」
「虎の姿にならないと駄目か?」
「うん。寝るときは虎のラースがいい」
「そうか……」
「うん」
「なあ、珠美」
「なに、ラース」
「たまには人の姿のままでも――」
「やだ。虎のラースがいい。もふもふは正義だよ」
「…………絶対か?」
「……。じゃあ私がハタチになったら」
「ハタチ?」
「二十歳。あっちの世界では、二十歳で大人とみなされるの」
「今珠美は十九歳だったな? あと何か月だ?」
「……ないしょ」
「珠美?!」
「心の準備ができたらね!!」
「……なんだ。顔が赤いぞ、珠美」
「うるさい!」
「ほう……ちゃんとわかってはいるんだな?」
「うるさいうるさいうるさーい!」
「ははは! それならいい。ちゃんと待つよ」
「ぐぅ……! いつかそのラースの大人の余裕、なくしてやるから」
「馬鹿だな。おまえに対してはいつも余裕なんかないさ」
「うそだぁ」
「本当だよ。珠美には最初から最後まで、かなう気がしない」
「じゃあいい。許す」
「ははは! じゃあ明日な」
「は?! 何の話?! 待つって言ったじゃん」
「待つさ。別に何もしなければいいんだろ?」
「いや、その、だって、」
「まあ、少しずつな。ゆっくりとだ」
「……うん。ラース、おやすみなさい」
「ああ。ゆっくり寝ろ」
「ラースの胸の中が、一番、……、あったかい……」
部屋の中には静かに繰り返される寝息と、ラースの大きな深いため息だけが響いた。
それから小さく笑った声が、「おやすみ」と呟いた。
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ビルドアップ令嬢からこちらへ流れてきました!
まだ読みはじめですが、読みやすいしタマ様の扱いにもほっこりしてます!
ラースさん………ここにもマッチョな方が……。
(すっと額縁を取り出して)『筋肉は裏切らない』
大事に続きを拝読させていただきます!
お読みいただき、また嬉しい感想をありがとうございます!
こちらは細マッチョでも隠れマッチョでもなく本物?のマッチョです。
こちらはあちらほどは糖度は高くなく(たぶん)、恋愛はゆっくり進行ですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
筋肉は裏切らない!
完結おめでとうございます。とっても面白かったです!
チートを使わない魔王業とか、珠美とラースがお互いに意識していくところとか本当にツボでした。
珠美とラースのこれからとか、もう少し見たかったので、終わってしまって残念な気持ちもありますが…
微力ですが、締め切りぎりぎりでファンタジー大賞にも一票入れさせていただきました。
佐崎さんの他の作品も、全部ではないですが色々読ませていただいて、
どれも好みの作品だったので、これから佐崎さんの紡いでいくお話も楽しみにしたいと思ます。
素敵なお話、ありがとうございました!
丁寧な感想と、なにより長い物語を最後までお読みいただきありがとうございます。
もう少し見たかったと言っていただけてとても嬉しいです!
投票もありがとうございます。とても力になりました。
他の作品もお読みいただきありがとうございます。
これからも楽しんでいただけるような作品を書いていきたいと思いますので、お付き合いいただければと思います。
ラースの闘いは続く(笑)
ラースの孤独な戦いを見守っていただきありがとうございます。
決着はつくはず。です!