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第二章 しがない村民なのにお城とか
9.聖女の祈り
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「ではまず、両膝を床につきます」
『アレクシア、床に膝をついて』
『ええ、痛いじゃん。待って、敷く物用意するから』
『そんな暇ないわよ! 次行くよ!?』
「そこから片膝を立てます」
『やっぱり片膝は立てていいんだって!』
『なによ! 早く言いなさいよ! だけどやっぱり片方の膝にだけ負荷かかるよね、なんか下に敷くのにちょうどいいのなかったかなあ。ねえ、ユリシア知らない?』
『お父さんの冬の帽子でも膝にかぶせておきなさいよ!』
「次に――」
『わかった探すねー』
『いやもうほら次だって、次!』
「右の人差し指と中指を揃え、額に当て、神に呼びかけます」
『ええ? でも冬物は屋根裏に仕舞ってあるから』
『じゃあお父さんの農作業用の厚い靴下でいいから!!』
「『神よ、祈りを聞き届けたまえ』と。はい、復唱を」
『やだよ絶対やだ! あ、じゃああれだ、タオルとかでいっか、片膝だもんねー』
『神よ、祈りを聞き届けたまえ!』
『急に何言ってんのユリシア』
あ間違えた。
『早く、あんたが言うのよ!』
『ハイハイ、タオルあったから今やるって』
大司教が振り返ってじっと私を待っていた。
はっ。
そうだった、まだ口に出して言ってなかった。
「か、神よ、祈りを聞き届けたまえ」
「ユリシア殿。少し早いですかな? 初めてですし、もう少しゆっくりお教えした方がよろしいでしょうか」
「あ、はい、すみませんがよろしくお願いします。なにぶん初めてですので」
簡単な言葉も復唱できない残念な頭だと思われただろう。
だがしかしいくら蔑まれてもいい。怪しまれさえしなければ。
横目にも、壁際にじっと立って見守るリヒャルトが不審げに眉を顰めているのがわかる。
何をしているんだと言いたいのだろう。
わかってる。
わかってるけど遠距離通信がもどかしい。
『アレクシア? ちゃんと今の言えた?』
『はいはい、今言ったって』
本当かどうか実に疑わしい。
「では続けます。次に両手をまっすぐに天に向け、」
ちらりと私が続くのを待ってくれる。
「二度平伏します。はい、一回、二回」
『両手を上にあげて、二回おじぎして!』
『ええ? 片膝立ててるのに? ぐえってなるけど』
しまった。説明が漏れた。
私は実際に見ているから何気なく大司教が膝を下ろしたのを真似をしていたけど、アレクシアにはそれも言葉で伝えなければならない。
忙しい。
あっちとこっちに意識を向けなければならず、何で私がこんな目にあっているのかと不思議に思ってしまったけれど、今はそんな場合ではない。
『その膝は下ろしていいから、手を伸ばしたままおじぎ』
『え、手は上のまま? それとも頭と一緒に下げるの?』
『下げる!』
「ここで神に祈りを捧げます。言葉はご自由に、ただし神への敬いをもって、切なる願いを聞き届けていただくのだという意識を忘れずに――」
『祈っていいって!』
『おじぎしたまま? 頭あげていいの? 手は?』
あーーー! ややこしい!
『頭起こして、手は祈るみたいに指を組み合わせて、両膝ついたまま祈る!』
『やっぱ両膝じゃああぁん。タオル折り畳んで敷いちゃったからもう片膝が痛いよお。そんな長時間膝ついてられないよ。この床、板だよ、板』
『わかった! タオル敷き直していいから!!』
こんなんで本当に神に祈りが届くのだろうか。
『アレクシア、床に膝をついて』
『ええ、痛いじゃん。待って、敷く物用意するから』
『そんな暇ないわよ! 次行くよ!?』
「そこから片膝を立てます」
『やっぱり片膝は立てていいんだって!』
『なによ! 早く言いなさいよ! だけどやっぱり片方の膝にだけ負荷かかるよね、なんか下に敷くのにちょうどいいのなかったかなあ。ねえ、ユリシア知らない?』
『お父さんの冬の帽子でも膝にかぶせておきなさいよ!』
「次に――」
『わかった探すねー』
『いやもうほら次だって、次!』
「右の人差し指と中指を揃え、額に当て、神に呼びかけます」
『ええ? でも冬物は屋根裏に仕舞ってあるから』
『じゃあお父さんの農作業用の厚い靴下でいいから!!』
「『神よ、祈りを聞き届けたまえ』と。はい、復唱を」
『やだよ絶対やだ! あ、じゃああれだ、タオルとかでいっか、片膝だもんねー』
『神よ、祈りを聞き届けたまえ!』
『急に何言ってんのユリシア』
あ間違えた。
『早く、あんたが言うのよ!』
『ハイハイ、タオルあったから今やるって』
大司教が振り返ってじっと私を待っていた。
はっ。
そうだった、まだ口に出して言ってなかった。
「か、神よ、祈りを聞き届けたまえ」
「ユリシア殿。少し早いですかな? 初めてですし、もう少しゆっくりお教えした方がよろしいでしょうか」
「あ、はい、すみませんがよろしくお願いします。なにぶん初めてですので」
簡単な言葉も復唱できない残念な頭だと思われただろう。
だがしかしいくら蔑まれてもいい。怪しまれさえしなければ。
横目にも、壁際にじっと立って見守るリヒャルトが不審げに眉を顰めているのがわかる。
何をしているんだと言いたいのだろう。
わかってる。
わかってるけど遠距離通信がもどかしい。
『アレクシア? ちゃんと今の言えた?』
『はいはい、今言ったって』
本当かどうか実に疑わしい。
「では続けます。次に両手をまっすぐに天に向け、」
ちらりと私が続くのを待ってくれる。
「二度平伏します。はい、一回、二回」
『両手を上にあげて、二回おじぎして!』
『ええ? 片膝立ててるのに? ぐえってなるけど』
しまった。説明が漏れた。
私は実際に見ているから何気なく大司教が膝を下ろしたのを真似をしていたけど、アレクシアにはそれも言葉で伝えなければならない。
忙しい。
あっちとこっちに意識を向けなければならず、何で私がこんな目にあっているのかと不思議に思ってしまったけれど、今はそんな場合ではない。
『その膝は下ろしていいから、手を伸ばしたままおじぎ』
『え、手は上のまま? それとも頭と一緒に下げるの?』
『下げる!』
「ここで神に祈りを捧げます。言葉はご自由に、ただし神への敬いをもって、切なる願いを聞き届けていただくのだという意識を忘れずに――」
『祈っていいって!』
『おじぎしたまま? 頭あげていいの? 手は?』
あーーー! ややこしい!
『頭起こして、手は祈るみたいに指を組み合わせて、両膝ついたまま祈る!』
『やっぱ両膝じゃああぁん。タオル折り畳んで敷いちゃったからもう片膝が痛いよお。そんな長時間膝ついてられないよ。この床、板だよ、板』
『わかった! タオル敷き直していいから!!』
こんなんで本当に神に祈りが届くのだろうか。
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