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あなたが好きなのは金髪の彼ですか? それとも銀髪の彼ですか?
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今日こそ伝えなきゃ。
あなたが好きって。
だけど今は追いかけてくる影から逃げなければならない。
捕まったら、私は――。
だから。
◇
「あなたが記憶を失う前に好きだったのは美しく輝く金髪のローレンスですか? それとも神秘的な銀髪のイージスですか?」
斧じゃないんだから。
目覚めた私が思わずツッコんだその言葉に自分で驚く。
それ何の話だっけ。
えっと……。
待って。
おかしくない? その質問。
だって私は、三日間という些か長すぎる寝坊から目覚めたばかり。まだたったの三十分しか経っていなくて状況把握もロクにできていない。
それどころか、さっきまで自分の名前も、ここがどこかもわからなくなっていたのだから。
最初、そう告げても枕元にいたこの長い黒髪で銀縁眼鏡をかけたこの男の人は、「何の茶番を」としばらく取り合ってくれなくて、やっと私が嘘を言ってるわけじゃないとわかってもらえたのが十分くらい前。
そしたら部屋の外に集まってきてたらしい侍女や見目麗しい金髪と銀髪の男性二人がそっと窺うように次々と部屋に入って来た。
いや、私寝衣なんで。入って来ないでほしいんですけど。
布団をかき抱いて身を縮めこめていると、黒髪眼鏡がため息を吐きながら私の状況をみんなに説明してくれた。
うん。でも、先に私にいろいろと説明してほしい。
誰が誰かもわからないのに、こんなに取り囲まれてものすごく身の置き場がないんですけど。
やっと私の怯えた視線に気が付いたのか、黒髪眼鏡は子供に言い聞かせるように、ゆっくりと私に向かって話してくれた。
「あなたの名前は、アイリス=オーロランド様です。十六歳でオーロランド伯爵家の長女。ご家族はご両親の他に、二歳下の妹君がいらっしゃいます。名前はオリビア様」
私が「まったく心当たりがありません」の顔をしたままでいると、黒髪眼鏡は落胆したように再びため息を吐いた。
それから彼は、驚愕したように私の言動を見守っていた金髪の見目麗しい青年をサラン伯爵家の次男ローランド様と紹介し、銀髪の冷たい美貌の青年をユティタス伯爵家の三男イージス様と紹介してくれた。
で、いきなり冒頭の質問をされたわけである。
――わかるかい。
そもそも誰が誰だかもわかってないのに、どっちが好きだったかとか、記憶を失った私に訊いて答えられると思っているのがおかしい。
「申し訳ありません。私には私の名前も、お二方のお名前も今知ったところですので、そのような質問には答えられません」
「まあ、そうでしょうね。記憶がないのですから。ですが、だからこそ、深層心理が見えるのではないかと訊いてみたのですよ。ですがアイリス様の様子を窺う限り、本当にどちらともわからないようですね」
何故そんな試すようなことをされているのか。
そもそも何故二人の青年から縋るような目で「俺を選べ」とでもいうように見つめられなければならないのか。
どういう状況?
私の困惑がわかったのか、黒髪眼鏡が説明してくれた。
「あなたは明日までに、お二人のうちどちらと婚約するのか、答えを出すことになっていたのですよ。明後日、アイリス様の婚約お披露目パーティが開催されることとなっています。この国では、十七歳の誕生日を迎えるまでに婚約をしなければ行き遅れと見做されます。そうなってしまえば、貰い手はなくなります。それなのにあなたは、なかなかお選びにならなかった。そうして今このような状況に陥っているのです」
理解しがたい。
何故十七歳で行き遅れとか言われなければならないのか。
そう思った自分に、些か驚いた。まるで違う文化を知っているようだったから。
「そのようなわけですので、明日までにはどちらと婚約するか、決めなければなりません。その日を逃してはこの公爵家の名に傷がつきます」
黒髪眼鏡が眉間に皺を寄せて言うと、金髪のローレンスがベッドサイドへとやってきて、優雅な仕草で立膝をつき私の手を取った。
「アイリス嬢。記憶を取り戻してほしいとは申しません。また私に恋をしていただけませんか」
銀髪のイージスもつかつかと迷いのない足取りでやってくると、そこにすっくと立ったまま、怜悧な瞳で私を見下ろした。
「アイリス。何も心配せず俺についてくればいい。記憶を失ったままだとしても、どんなお前になろうと、再びお前を愛そう」
乙女ゲームか!
とまた謎のツッコミが沸いた。
ローレンスには背筋がぞわっとしたし(あんまりいい意味じゃない方で)、イージスには随分な俺様加減にキュンともこなかった。
うーん。
こんな美麗な二人に求められたら、一般的な乙女としては「えー、どっちを選べばいいの? 困っちゃう! どっちも~~!」と人差し指をぶんぶん振ってしまうところだと思うのだが。
全然食指が動かない。
困って黒髪眼鏡を見れば、「さあ、選んでください」とばかりにじっと私を見ている。
っていうか、あんたは誰。
いい加減黒髪眼鏡って呼ぶのも面倒なんですけど。
私がじっと見れば、黒髪眼鏡は切れ長の瞳をわずかに見開いて「何か?」という顔をした。
「ええと。あなたはどなた、ですか?」
「ああ、これは失礼しました。私は執事のアーノルドです。幼い頃よりアイリス様と幼馴染のようにして育ち、父の跡を継ぎましてこのオーロランド家にお仕えさせていただいております」
「幼馴染?」
「ええ。アイリス様の遊び相手にと、よく連れて来られていたのです」
「おい、アーノルド。お前のことなどはもうそれくらいでいい。そんなことなど思い出さずとも何の支障もないが、今決めねばならぬのはアイリスの婚約者だ」
「その通りだ。記憶を失くしてしまったのなら、あと一日という短い時間で選んでいただかねばならない。一刻も惜しいところだ」
銀髪と金髪がそれぞれに言って、アーノルドは頭を下げた。
「失礼いたしました」
私が訊いたから答えたに過ぎないのに、アーノルドは二人に場所を譲るように一歩下がってしまった。
途端に何故か心許なくなる。
二人がずずいと一歩近づいてきたけれど、私はアーノルドに助けを求めるように視線を向けてしまった。
いきなり決めろと言われても無理がある。
そもそも自分のことで手一杯なのに。
そんな私の様子に気が付いたのか、侍女の一人がお茶を運んできてくれた。
「アイリス様。よろしければお茶をお飲みになって、気分を落ち着けてください」
「ありがとう」
差し出されたカップを受け取ろうと手を伸ばし、私はちらりと彼女の顔を見上げた。
目が合えば、びくりと肩を揺らした。
その指も小刻みに震えている。
さりげなく飲むそぶりでお茶を覗き込めば、なんか黄色い。
そしてやや白濁している気がする。
これ、お茶か?
再びさりげなく彼女を見れば、その顔はさっと俯けられた。
その態度、絶対お茶じゃないよね。
私の戸惑いに気付いたのか、アーノルドはお盆を抱えていた彼女の腕をさっと掴むと、「アイリーン様、そのカップをこちらへ」と私に片手を伸ばした。
素直に渡すと、顔を近づけ匂いを嗅ぎ、それから長い舌でちろりと舐める。
「これは……」
緊張の走ったその顔に、金髪と銀髪がはっと息を呑み血相を変える。
「まさか、また?!」
「オリビアか……!」
オリビア、って誰だっけ。そうだった、妹だ。
妹?!
妹が私になんか怪しいものを呑ませようとしたってこと?!
私、もしかして命を狙われてたのか。
記憶がないのも、もしやそのせい――?
アーノルドが腕を掴んでいた侍女に顔を向けると、彼女はびくりと肩を揺らし、それからカタカタと目に見えて震え始めた。
「誰の指示ですか」
「あ、あの、私、あの……!」
「あーあ、つまんない。もうバレちゃったのね」
開け放されていた扉から、赤いふわふわの髪が覗いていた。
あなたが好きって。
だけど今は追いかけてくる影から逃げなければならない。
捕まったら、私は――。
だから。
◇
「あなたが記憶を失う前に好きだったのは美しく輝く金髪のローレンスですか? それとも神秘的な銀髪のイージスですか?」
斧じゃないんだから。
目覚めた私が思わずツッコんだその言葉に自分で驚く。
それ何の話だっけ。
えっと……。
待って。
おかしくない? その質問。
だって私は、三日間という些か長すぎる寝坊から目覚めたばかり。まだたったの三十分しか経っていなくて状況把握もロクにできていない。
それどころか、さっきまで自分の名前も、ここがどこかもわからなくなっていたのだから。
最初、そう告げても枕元にいたこの長い黒髪で銀縁眼鏡をかけたこの男の人は、「何の茶番を」としばらく取り合ってくれなくて、やっと私が嘘を言ってるわけじゃないとわかってもらえたのが十分くらい前。
そしたら部屋の外に集まってきてたらしい侍女や見目麗しい金髪と銀髪の男性二人がそっと窺うように次々と部屋に入って来た。
いや、私寝衣なんで。入って来ないでほしいんですけど。
布団をかき抱いて身を縮めこめていると、黒髪眼鏡がため息を吐きながら私の状況をみんなに説明してくれた。
うん。でも、先に私にいろいろと説明してほしい。
誰が誰かもわからないのに、こんなに取り囲まれてものすごく身の置き場がないんですけど。
やっと私の怯えた視線に気が付いたのか、黒髪眼鏡は子供に言い聞かせるように、ゆっくりと私に向かって話してくれた。
「あなたの名前は、アイリス=オーロランド様です。十六歳でオーロランド伯爵家の長女。ご家族はご両親の他に、二歳下の妹君がいらっしゃいます。名前はオリビア様」
私が「まったく心当たりがありません」の顔をしたままでいると、黒髪眼鏡は落胆したように再びため息を吐いた。
それから彼は、驚愕したように私の言動を見守っていた金髪の見目麗しい青年をサラン伯爵家の次男ローランド様と紹介し、銀髪の冷たい美貌の青年をユティタス伯爵家の三男イージス様と紹介してくれた。
で、いきなり冒頭の質問をされたわけである。
――わかるかい。
そもそも誰が誰だかもわかってないのに、どっちが好きだったかとか、記憶を失った私に訊いて答えられると思っているのがおかしい。
「申し訳ありません。私には私の名前も、お二方のお名前も今知ったところですので、そのような質問には答えられません」
「まあ、そうでしょうね。記憶がないのですから。ですが、だからこそ、深層心理が見えるのではないかと訊いてみたのですよ。ですがアイリス様の様子を窺う限り、本当にどちらともわからないようですね」
何故そんな試すようなことをされているのか。
そもそも何故二人の青年から縋るような目で「俺を選べ」とでもいうように見つめられなければならないのか。
どういう状況?
私の困惑がわかったのか、黒髪眼鏡が説明してくれた。
「あなたは明日までに、お二人のうちどちらと婚約するのか、答えを出すことになっていたのですよ。明後日、アイリス様の婚約お披露目パーティが開催されることとなっています。この国では、十七歳の誕生日を迎えるまでに婚約をしなければ行き遅れと見做されます。そうなってしまえば、貰い手はなくなります。それなのにあなたは、なかなかお選びにならなかった。そうして今このような状況に陥っているのです」
理解しがたい。
何故十七歳で行き遅れとか言われなければならないのか。
そう思った自分に、些か驚いた。まるで違う文化を知っているようだったから。
「そのようなわけですので、明日までにはどちらと婚約するか、決めなければなりません。その日を逃してはこの公爵家の名に傷がつきます」
黒髪眼鏡が眉間に皺を寄せて言うと、金髪のローレンスがベッドサイドへとやってきて、優雅な仕草で立膝をつき私の手を取った。
「アイリス嬢。記憶を取り戻してほしいとは申しません。また私に恋をしていただけませんか」
銀髪のイージスもつかつかと迷いのない足取りでやってくると、そこにすっくと立ったまま、怜悧な瞳で私を見下ろした。
「アイリス。何も心配せず俺についてくればいい。記憶を失ったままだとしても、どんなお前になろうと、再びお前を愛そう」
乙女ゲームか!
とまた謎のツッコミが沸いた。
ローレンスには背筋がぞわっとしたし(あんまりいい意味じゃない方で)、イージスには随分な俺様加減にキュンともこなかった。
うーん。
こんな美麗な二人に求められたら、一般的な乙女としては「えー、どっちを選べばいいの? 困っちゃう! どっちも~~!」と人差し指をぶんぶん振ってしまうところだと思うのだが。
全然食指が動かない。
困って黒髪眼鏡を見れば、「さあ、選んでください」とばかりにじっと私を見ている。
っていうか、あんたは誰。
いい加減黒髪眼鏡って呼ぶのも面倒なんですけど。
私がじっと見れば、黒髪眼鏡は切れ長の瞳をわずかに見開いて「何か?」という顔をした。
「ええと。あなたはどなた、ですか?」
「ああ、これは失礼しました。私は執事のアーノルドです。幼い頃よりアイリス様と幼馴染のようにして育ち、父の跡を継ぎましてこのオーロランド家にお仕えさせていただいております」
「幼馴染?」
「ええ。アイリス様の遊び相手にと、よく連れて来られていたのです」
「おい、アーノルド。お前のことなどはもうそれくらいでいい。そんなことなど思い出さずとも何の支障もないが、今決めねばならぬのはアイリスの婚約者だ」
「その通りだ。記憶を失くしてしまったのなら、あと一日という短い時間で選んでいただかねばならない。一刻も惜しいところだ」
銀髪と金髪がそれぞれに言って、アーノルドは頭を下げた。
「失礼いたしました」
私が訊いたから答えたに過ぎないのに、アーノルドは二人に場所を譲るように一歩下がってしまった。
途端に何故か心許なくなる。
二人がずずいと一歩近づいてきたけれど、私はアーノルドに助けを求めるように視線を向けてしまった。
いきなり決めろと言われても無理がある。
そもそも自分のことで手一杯なのに。
そんな私の様子に気が付いたのか、侍女の一人がお茶を運んできてくれた。
「アイリス様。よろしければお茶をお飲みになって、気分を落ち着けてください」
「ありがとう」
差し出されたカップを受け取ろうと手を伸ばし、私はちらりと彼女の顔を見上げた。
目が合えば、びくりと肩を揺らした。
その指も小刻みに震えている。
さりげなく飲むそぶりでお茶を覗き込めば、なんか黄色い。
そしてやや白濁している気がする。
これ、お茶か?
再びさりげなく彼女を見れば、その顔はさっと俯けられた。
その態度、絶対お茶じゃないよね。
私の戸惑いに気付いたのか、アーノルドはお盆を抱えていた彼女の腕をさっと掴むと、「アイリーン様、そのカップをこちらへ」と私に片手を伸ばした。
素直に渡すと、顔を近づけ匂いを嗅ぎ、それから長い舌でちろりと舐める。
「これは……」
緊張の走ったその顔に、金髪と銀髪がはっと息を呑み血相を変える。
「まさか、また?!」
「オリビアか……!」
オリビア、って誰だっけ。そうだった、妹だ。
妹?!
妹が私になんか怪しいものを呑ませようとしたってこと?!
私、もしかして命を狙われてたのか。
記憶がないのも、もしやそのせい――?
アーノルドが腕を掴んでいた侍女に顔を向けると、彼女はびくりと肩を揺らし、それからカタカタと目に見えて震え始めた。
「誰の指示ですか」
「あ、あの、私、あの……!」
「あーあ、つまんない。もうバレちゃったのね」
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