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Last office・私の花道
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しおりを挟む「和歌ちゃん。上山とよく話し合って。明日の返事が無理だったら、もう一日だけ待つから。年始になったら、僕も準備でアメリカへ行く。他の何人かにも声を掛けている所だ」
「あ、他の何人かって、だったら真吾君も一緒に行くことは出来ないんですか!? 私の部下だし、補佐も任せられるし、せめて彼と一緒なら・・・・」
そういった所で三輪さんが怪訝そうな顔をし、何かを逡巡する素振りを見せた。
「そうか。・・・・和歌ちゃんは、上山がヒロイに出向で来ている事は知らないんだな。まあ僕がここで黙っていても、いずれ解る事だ。言ってもいいと判断して言うよ。上山は『上山美容整形外科』からヒロイに出向して来ているんだ。彼は上山美容整形外科の院長ご子息だよ。だからヒロイから、アメリカの子会社に行かせることは出来ない」
上山・・・・美容整形外科?
何か、頭パンクする話が次から次へと・・・・。
「一般社員なら、上山の素性を知らないのは当然だけど、君は違う。和歌ちゃんもちゃんと彼の素性を知った上で、今後もつき合った方がいい。結婚を考えているなら、上山はなかなかやっかいな男だと思う。余計なお節介かもしれないけど、そこも含めてよく二人で話し合って。それじゃあ、僕はもう行くよ。返事、期待しているから」
「は・・・・はい・・・・・・・・」
受け取った花束を握りしめ、私は三輪さんの後姿を見送った。
どうしよう、という言葉がぐるぐる回ったまま、控室に戻ると真吾君が来てくれていた。
私へのお祝いなのだろう、花束と小さな包みを持っている。礼装姿、カッコイイ。こんちくしょう。
でもそれより、聞かなきゃいけない事と、言わなきゃいけない事がある。
「お疲れ様でした。和歌子さん。壇上の貴女は、とてもカッコ良かったです」
「ありがと」
「三輪さんが来たんですね?」
「そうよ」
また私の心を読みやがったな。
「俺がヒロイに出向している事と、上川整形外科の事、三輪さんから聞いたんですね? 顔に書いてあります。どうして黙っていたのって」
「解っているなら、さっさと答えてよ! どういうつもりなの? 素性も明かさず私に近づいたの?」
「素性を明かす事は禁じられていましたから。社内秘です。すみません」
「誰にも言わないわよ、そんな大事なコト! どうして・・・・今まで黙っていたの?」
「まあ、社内秘というのは建前です。本当は、一個人の俺を見て欲しかったから。和歌子さん、俺がそんなところの息子だって知ったら、好きになってくれましたか? 敬遠したハズですよ。貴女の性格は、よく解ってる」
「でもっ・・・・隠し事なんてイヤ!」
「それについては謝ります。黙っていてすみませんでした。でも、今言った通りですよ。俺が最初から上川美容整形外科の息子だって知っていたら、貴女の心に、俺は入れて貰えなかった」
「そんなのわかんないじゃない! バカっ! 勝手すぎるよ!!」
こんな大切な事を黙っていられた挙句、それを三輪さんから聞いたことに腹が立った。
「これだけ好きになってから、実は御曹司でした、とか言われて、私はポイされるワケ? ホント、最低よ!! バカっ、顔も見たくないっ」
「和歌子さん、俺がそんな事すると思っているんですか?」
「フツー思うでしょ! 上山美容整形外科なんて、超一流企業じゃない。パンピーの私と、そこの御曹司がどうこうなるって? あはは。笑っちゃう」
「あはは、じゃありませんよ。俺は貴女の事、ホンキなんですけど」
言うが早いか、真吾君は私に近寄ってきた。持っていた花束を傍のテーブルに置いて、更に私に詰め寄る。
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