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Office19・本当のキモチ
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しおりを挟む「そうよ、そこに居るわ。じゃ、迎えに来させてあげる。飲みたい気分なの。つきあって」
『「了解です」』
電話と普通に会話で聞こえる音声がハモった。途端、背後からいきなり抱きしめられた。
何時もの、香り。
――ジョーマローンの、香り。
途端に、身体が熱くなった。
ドキドキと心拍数が跳ねあがる。
「どう・・・・してココに?」
「さあ、どうしてでしょう?」
耳元で囁かれて、ゾクゾクした。何時ものエキゾチックな香りが、私を惑わそうとする。
魅惑の、悪魔の香り。
危険だったのね、この香り。
全然知らずに無警戒だったから、知らない間に誘惑されて、捕らえられてしまっていたのね。
「お二人の行動パターンなんて、大体わかりますよ。デートのシメといえば観覧車でしょう。横浜でデートする事は、昨日の水族館でお二人の会話が聞こえてましたから、事前にリサーチ済でした。それで、横浜で観覧車ならコスモクロック21辺りで待っていたら間違いないと思いまして。見覚えのある三輪さんの車、駐車場に止まっていましたし、予想通りでした。それにさっき、和歌子さん一人で歩いていくのが見えましたからね。俺、自分でも思いますよ。探偵向いてるなって。どういうワケか、勘が働くんです」
悪魔はクスクス笑っている。でも、そんな悪戯な笑顔はすぐ消えた。
「三輪さんのトコ、行かなかったんですね。良かった」
悪魔が、安堵のため息を吐いた。「和歌子さんを盗られたら、どうしようかと思った」
「盗られるって・・・・そんな、私は・・・・」
「フッたのか、フラれたのかは知りませんが、もう終わりですよね? もう、三輪さんとデートなんて、しませんよね?」
どこまでも、この男は解っているのね。
エスパーだから、私がもう既に貴方の手に堕ちてるって、見抜いているんだろうな。
悔しい。
悔しいのに――触れられて、ドキドキする。
だからせめて、少しくらい、意地悪言ってもいいでしょっ。
何時も年下の貴方に言われっぱなしなんだもん。
年上の威厳が崩れちゃうのよ。
「三輪さんと、またデートするって言ったら?」
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くすぐるように、耳たぶにキスされた。「三輪さんと終わったなら、さっさとこの目障りなピアス、外してくれませんか? 噛みちぎりますよ」
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「これに付け替えてくださいね。俺がやってあげますから、こっち向いて下さい」
「ダメ」
「じゃあ、向かせるまでだ」
耳たぶに舌が伸びて、くすぐられたと思ったら、軽く噛みつかれた。
勿論加減はしてくれてるけど、怒らせたら本気で噛みちぎられそうで怖い。
でも今は、貴方のキモチに気づいてしまった今なら、そんな甘美な痛みを伴う刺激でさえ、私に火をつける。
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むしろ、もっと――・・・・
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