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Office16・ヤキモチ
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しおりを挟むしまった。ハチ合わせなんてっ。
テーブルが一つ空いているけど、一人じゃテーブルが使えないから、カウンターに座るしかない。
でも、カウンターは一つおきに席が埋まっているから、一番奥の背の高いイケメンの隣か、悪魔の隣か、土曜日だというのに仕事上がりで、くたびれたカッターシャツ姿のサラリーマンのおじさん達二人組の隣か、ちょっと小汚い熱燗を飲んでいるおじいさんの隣か、どれかしか無い。
無視するのもムカつくわねっ。
そうよ。どうせだったら、どういうつもりで私にちょっかいかけているか、この際だから聞いてやろう。
私はわざわざ真吾君の右隣に座って、生ビールの大を頼んだ。「大将、生大」
「はいよー、生大一丁、いただきましたー」
隣に座った私に気が付いた真吾君が、あれ、という顔を一瞬したけれど、次に嬉しそうな笑顔を見せ名前を呼ばれた。「和歌子さん!」
つーん、と無視してやった。
「あれ? 今日は三輪さんとお食事されなかったんですか?」
「別にいいでしょ」
「いやー、嬉しいなあ。あ、折角だから一緒に食べませんか? 俺もさっき来て注文したところなんです」
「あっそ」
「どうされたんですか? やたらツンツンしてますけど?」
「誰のせいよっ」
「えっ、俺のせいですか?」
他に誰がいるってのよ!
イライラしていると、大将が生の大ジョッキを持ってきた。いつも通り泡が少ない。ていうか、殆ど泡が無いわ。
昨日飲んだバーの生ビールとは大違いね!
「ちょっと大将、泡少ない。入れ直して。多めに」
「あっ、ハイハイ、ただいま」
持ってきた大ジョッキを引っ込めて、慌てて泡を足しに行った。
本当にもう、わかってない!
泡多めって言ったのに、大将は普通位に足された泡のビールを持ってきた。
大将にしたら、これが限界なのかしら。
仕方なくこれを受け取って、グビ飲みした。
あぁー、美味しいわ!
適当に焼き鳥を注文して、再びビールを流し込んだ。
「あぁー、いい飲みっぷりですねぇ。惚れ惚れします」
横の男(真吾君)が馴れ馴れしく話しかけて来た。
「うるさいっ。それより、なんでこんなトコにいるのよ」
「この前、和歌子さんとの電話で焼き鳥の話したでしょう? 食べたくなったので、来ました。それだけですけど、何か?」
「なにもないわよっ」
再びつーん、と無視すると、真吾君は楽しそうに笑っている。
「なに笑ってんのよっ」
「さっきの女性、真澄さん、そんなに気になります?」
「はあっ!? 何で私がっ! 気にならないわよ!! それより、あんな美人なキープか彼女か知らないけど、傍にいるなら私にちょっかいかけないでよっ!! 浮気はしないとか何とか言っておいて、どういうつもりよっ!?」
残っていたビールを流し込んで、ガン、と空になった大ジョッキをカウンターに叩きつけ、大将におかわりを要求した。
今の私の姿、まるで仕事でイヤな事があった、酔っぱらいのオヤジだわ。
いーのっ。
どーせ三輪さんには明日フラれるし、女子力低くっても、オヤジでも、もうどーでもいいわ!
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