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Office14・週末のバー
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しおりを挟む『こらこらー。和歌子さん、酔ってます? お持ち帰りオーケーなんてダメですよ。イイ女は、貞操を大事にしないと。俺の為に大事な操、取っておいてくださいよ。解禁許可頂けたら、いっぱい、愛してあげますから』
「結構でーすっ。もう、寝まーすっ。おやすー」
『ちょっと待ってください。明日、ドコ行かれるんですか? まだ聞いていません。それから、門限までには帰って来てくださいよ?』
「明日はお昼に銀座でショッピングして、三輪さんの奥様のお誕生日プレゼント見てぇー、それから、天空のおさかなを見るのでーす! じゃあ、そういうコトで!」
『奥様にプレゼント・・・・そうですか。和歌子さん・・・・そしたら週明けの月曜日、美味い飯でも一緒に食いに行きま――』
ヤツが話している最中だったけど、声のトーンが変わったので電話を切った。
酔ってたのもあるけど、私がバカで可哀想なオンナなんて、真吾君に言われたくなかった。言われなくても、バカだって自分で解ってるから。
他人に指摘されて、これ以上惨めになりたくない。
同情して、慰めの言葉をかけるソレの雰囲気の声だったから。私はそんなの、要らない。
もう寝よ。
でも、デートがあるからスキンケアは欠かせない。こんなに日本酒飲んじゃって、明日お肌がむくんだりしないかしら。
心配する自分の心を別の自分が見つめて、笑いがこみ上げた。
バカじゃないの。
どうしたいのよ、私。
どうせね、どうにもならないんだから、たとえブサイクなパンパンのむくんだ顔でデートに行ったって、好きになってもらえないんだから、それでもいいじゃない。
でも、やっぱり好きな男の隣を歩くなら、最高の自分でいたい。
綺麗にお洒落して、誰にも負けない自分でいたい。
それが、私。
ガサツでオヤジで豪快でも、やっぱりお洒落は手抜きしたくない。
銀座で三輪さんの隣を歩くなら、彼に恥ずかしい思いをさせないように、綺麗にしておかなきゃって思い直した。
酔ってるから少しぬるめのシャワーを浴びて、さっぱりして、何時もより時間をかけてスキンケアをした。待ち合わせは昼からだし、少しくらい朝寝坊できるから。
諸々をようやく終え、寝ようと思ってベッドに入り、充電器にスマホを挿そうと思って本体を見ると、いつの間にかラインのメッセージが入っていた。真吾君だった。
――相手のペースにばかり合わせないで、たまには振り回してやりましょう。月曜日、飯行きましょうね。おやすみなさい。最高のイイ女(和歌子さん)を早く彼女にしたい、最高のイイ男(真吾)より愛を込めて
ブッ、と噴き出した。
真吾君は私のコト、バカにもしていないし、それでも好きだって思ってくれてるんだ。
たまには振り回してやりましょう、か。
いい言葉だ。
下手な慰めとか、同情とか、そんなのは要らない。
何だか真吾君の一言のお陰で、どん底に惨めにならずにすんだ。
悩んだ挙句、ありがとう、とだけ返事を入れておいた。
イイ女は、追いかけて貰ってナンボよね。
そうよ。私は、私らしく。
豪快に、図太く、輝いてやるんだから――
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