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Office11・悪魔とランチ

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「さあ、お昼時ですから、何か食べに行きましょう。俺、ご馳走しますから」


 今、ミリオンドラッグを出た所でーす。
 悪魔と車に乗ってまーす。
 今から帰社しまーす。

 悪魔がランチに誘ってくるけど、断りまーす。

「いらなーい。早く会社に帰るー。今日の夜は三輪さんとデートがあるもーん。ランチは帰って一人で食べるから。あ、アヤネと合流しようかなー」

「了解です。寿司でいいですか?」

「食べたくなーい」

「ちょっとしたポケットマネーが入ったんで、奢りますから、食べに行きましょう」

「きーてんのっ!?」

「どのお店がいいですか? 行きたい所あったら、教えてください」

 爽やかな笑顔が返ってきた。絶対聞こえてるのに、わざと無視してるっ。
 私に断る権利は無いらしい。

「あっ、和歌子さん、パスタ好きですよね?」

「うん、好きだけど」

「美味いパスタ食べれるって評判の所があるんです。先月この近くにもオープンしたんですよ。行ってみませんか?」

 パスタかー。ちょっと食べたいなー。
 でも、真吾君と行くのはちょっとなー。
 

「ちょっと食べたいなら、行きましょう!」


 ヤツがまた私の心を読みやがった。
 真吾君がハンドルを切り返して、無茶なUターンをした。警察に見つかったらアウトなヤツで、結構なドリフトターンをかましてくれた。
 意外に豪快なのね。だから、私みたいなガサツな女でも、平気なのかもしれない。


 車に乗っている以上、この男がちゃんと会社まで運転してくれなきゃ帰れないし、ランチ奢ってくれるというなら、仕方が無いから奢らせてあげましょう。
 財政難だから、一食分浮くのは有難い事には変わりない。

 でも、ちょっとしたポケットマネーが入ったとか言って、年上の上司にランチご馳走しちゃうなんて、一体何してんのかしら。
 本当に副業で探偵やって、ちゃっかり稼いでるんじゃないの!?


 それに、前から思っている事をヤツに言いたかったから、遠慮なく言ってやった。


「真吾君ってさー。浮気とかしたらすーぐ気がついちゃうタイプよねー。エスパーだもん」

「俺は別にエスパーじゃありませんよ。和歌子さんが解りやす過ぎるだけです。全部顔に書いてありますから」

「顔に書くかっっ」

 
「まあでも、浮気されたらすぐ解りますね。挙動で解りますよ。普段とは微妙に違うニュアンスとかで、俺、解っちゃうんです。前の彼女もそうでした。結構悲惨ですよ、俺。何故か浮気されちゃうんですよねー。フリーだったら、とりあえず告白されたら別に誰でもいいから付き合っちゃうんですよ。折角俺を好きになってくれたんですから、俺も彼女を好きになる努力はするんですよ? それでも、努力中にも関わらず、冷たいとか何考えてるかわからない、とか何とか言われて、他のオトコに走られて、俺がまだ彼女が好きかどうか、試されちゃうんですよね。そんなことしたら、余計冷めるというのに。だから俺、今までの彼女のお陰で、恋愛凝りたんですよ」


 浮気されるのは、真吾君の性格に問題があるからなんじゃ・・・・?


「俺の性格のどこに問題があるというのですか。教えてくださいよ」

「心を読むところよっ!」

 細部まで読むな、細部まで!
 やっぱり誰の心でも読めるんじゃないの!?
 そりゃー、心読まれたら怖いって。イケメンマスクに騙されて、悪魔とお付き合いすることになった彼女の目が覚めただけでしょ。

 まあ、だからと言って、浮気は良くないと思うけど。
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