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Office09・長電話

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『はい決まり―。やったぁ! 和歌子さんとデート!! 凄く嬉しいです!』

 真吾君は本当に嬉しそうな声を出した。
 なんか、調子狂う。


 貴方みたいな仮にもイケメンが、そんな焼き鳥屋で大ジョッキのビールグビ飲みするような女に、惚れたりするものなのかしら?

 だとしても、どうせ一時の気の迷いに決まってるわ。
 珍しいからちょっと手に入れて、珍獣を手懐けようとでも思っているんじゃないの。




 誰が珍獣よ! 失礼ねっ!!




 想像で不愉快になった。

 
『来週の金曜日辺り、行きましょうか! 次の日休みだから遅くなっても構わないし、もう三輪さんとの約束も終わっている頃でしょう? ご都合いかがですか?』

「行かない」

 不愉快になったから、思わず断ってしまった。

『えっ、ダメですよ。さっき行くって言ったじゃないですか!』

「どーせ手懐け・・・・いや、餌付け? して、ちょっとつまみ食いしたらポイするんでしょー。解っているのよ!」

『何を怒っているんですか。つまみ食いなんてしませんよ。ガッツリ食べますよ、俺』

「えっ・・・・ガッツリ肉食系なの!?」

『いけませんか?』


 い・・・・いけなくなけどさ。
 インテリ草食系みたいな顔してるクセにっ。


 そういえばやたらとキスも巧いし、そうよね。イケメンだから遊び人よね。
 否が応でも、そんな顔じゃ肉食系になるわよねっ。



 言っておくけど、遊び人なんかに私は食べさせないわよっ!!



 
『色々注文できますから。好きなホルモン。店主が目の前で焼いてくれるんですよ。またコレが、凄く美味いんです。和歌子さん、絶対気に入りますから! 和歌子さんも肉食系でしょう? ガッツリ行きましょう! 肉食系同士、俺達気が合いますよ、絶対』


 あ、ソッチ?

 やだ。一人ヤラシー想像してしまって、赤面した。

 電話で良かった。顔見られてたら、何をよからぬ事を想像しているんですか、そんなに俺としたいんですか、何なら試してみましょうか、とか言われて、絶対からかわれる所だった!


『来週金曜日、予定空けておいてくださいね。キャンセルしたら、キャンセル料を和歌子さんの身体で払ってもらいますからね』

「えーっ!? 外せない用事とかできたらどーすんのよっ。残業とかさっ」

『そんな用事や残業、作らないでくださいね。楽しみにしています。おっ、もうこんな時間だ。そろそろ寝ましょうか』

「あ、ホントだ。明日からナイトワンプロジェクト始まるから、早めに出社してアイディアまとめようと思っているのよ。じゃ、もう切るわ。お休み、また明日」


 時計を見ると、もう十一時近かった。一時間近くもグダグダお酒飲みながら喋ってたのね。

 早く寝よう。
 男の人とこんなに長電話したの、久しぶりだ。
 なんだかんだで、楽しかった。
 真吾君なら素で喋れるのがいい。櫻井さんや三輪さんだったら、絶対こんな事できないもんねー。


 悪魔は、貴重な存在なのかもしれない。


『はい、お休みなさい。和歌子さん、好きです』

「もういいって。お休み!」

 乱暴にスマホをタップして電話を切った。受話器タイプなら、間違いなく叩きつけて切っていたと思う。


 よく解らない男だわ。
 本心なのか、からかっているのか、掴めないから腹が立つ。
 本当なら嬉し――・・・・くないわっ!!


 もう寝よっ。


 私は缶チューハイの残りを流し込み、シャワーを浴びてスキンケアして眠りに就いた。
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