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Office09・長電話

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『それは和歌子さん次第です。じゃ、今度俺とデートしてくれますよね?』

「・・・・行けばいいんでしょ、行けば! 言っておくけど、いっぱい食べるからね。それでもいいの? お財布に優しくないわよ、私」

『勿論、大歓迎です。一緒にビールグビ飲みしましょう』

「ビール飲むの?」

 何か意外ー。
 真吾君って知的でインテリなイメージだから、ビールよりもワイン飲んでウンチク垂れてそう。

『世の中であんなに美味い飲み物はありませんよ。大好きです』

「ふうん。真吾君ってワインとか飲みそうだけど。ビール好きなんだ。意外―」

『和歌子さんが、あんまりにも美味しそうに飲むから、俺も好きになったんですよ』

「もしかして焼き鳥屋で目撃したのぉ?」

『正解』

「えーっ! 黙って見てないで、声掛けてよーっ!!」

 っていうか、ハズカシー!
 三輪さんの事ベラベラ愚痴りながら、アヤネに絡んでビール美味しーって言いながら、大ジョッキをグビグビ・・・・。そんなところを目撃されたに違いない!!


 わー、最悪っっ。


 
『眼鏡外すと、結構見つからないんですよ、俺。こっそり人間ウォッチングするのも好きだし』

「くっらーい! 人間ウォッチングなんて、やっぱり本業探偵じゃないのぉー?」

『暗いですかね? 楽しいですよ。人間ウォッチング』

 私の暴言もサラリとかわす真吾君。なんか、酔っぱらって絡んでるみたいになってきている気がする。


 なんかもう、クダ巻いてダベるのが楽しくなってきた。
 真吾君は私が唯一、繕わずにズケズケ言っても可能な男だ。
 飲み足りないし、クダ巻きながらお酒飲もう。


 私はキッチンに行って、冷蔵庫から缶チューハイを取り出してプルタブを思い切り引っ張った。
 プシ、と小気味の良い音を立てて缶が開く。
 中に入った冷たい液体を、グビグビと飲んで一気に身体に流し込んだ。



 あーっ、うまーいっ!!



 最高だわ。この瞬間。





 
『何一人で美味しいの出してきて飲んでいるんですか。ビールですか?』

「ブブー、はっずれー。レモンチューハイでしたー」

 ふふっ。流石のエスパーも、私がチューハイ飲むとは思わなかったのね。
 というのも、単に好物のビールを切らしているだけだったりして。
 三輪さんとのデートが忙しくて、しかも家の近くまでちゃんと送ってくれるから、ビールを買う暇が無かっただけ、というのが本当は正解。


『俺も飲もうっと』


 受話器の向こうでゴソゴソする音が聞こえて来た。バタン、と冷蔵庫が閉まる音がして、私と同じく、プシ、と小気味の良いプルタブが開く音が聞こえた。

『和歌子さん、かんぱーい』

 何故か電話越しで乾杯することになった。
 変なの。


「あのさー、真吾君。さっきの話だけどね、そんな焼き鳥屋でビールグビ飲みしてるハズカシー女のドコがいいワケぇ? そんな場面に遭遇したなら、フツー引くでしょ。もう、私にアプローチなんかしないでね。からかってるだけなんでしょ」

『からかうなんて心外ですね。その豪快さに惚れたというのに』

「はあっ!? 意味わかんないっ」

『俺、裏表のある取り繕う女、嫌いなんです。ありのまま、包み隠さない和歌子さんが好きになったんですから。ビールグビ飲み、大いに結構じゃないですか。さっきも言いましたけど、あんまり和歌子さんがビール美味そうに飲むから、俺も好きになったんですよ、ビール』

「ふーん」

『それより、今度のデート、ちょっと遠出しませんか? 美味いホルモン食べれる店があるんです。最高にビールと合いますよ。行きますよね?』

「行くっ」

 ホルモンが美味くて最高にビールに合うなんて聞いたら、行くしかない。
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