34 / 96
Office08・次期社長候補登場
4
しおりを挟む「こちらが無礼を働いたのです。申し訳ありません。頭を上げて下さい。久遠寺和歌子さんでしたね。今日はサプリのプレゼンされたようですが、俺にその試作品のサプリ、見せて頂けませんか? どんなコンセプトがあるんですか?」
「あ、はい。サンプルは先ほど水口さんに預けました。今回のものはビューティードリームと姉妹品みたいに考えています。このサプリは『ナイトワン』といって、一日の疲れが貯まった身体を優しくほぐしてくれる、血液循環の促進効果のあるサプリなんです。色も女性ウケするように可愛らしく水色の小粒にして、ほんの少しシトラスの香りを付けて、リラックス効果も取り入れています」
「成程」櫻井さんは暫く長く細い指を口元に当て、何やら考えている。
「これがそのサンプルです」
水口さんがさっき預けたサンプルを、資料と一緒に櫻井さんに渡した。資料は、成分内容等の細かいものと、デザインパッケージも水色の可愛らしいパターンのものを渡してあるから、それにも櫻井さんが目を通している。
やがて、考えがまとまったのか、櫻井さんが私を見た。
「良く考えられていますね。でも、勿体ない」
「勿体ない・・・・?」
何が勿体ないのだろう。
「まず、コンセプトは良いと思います。名前もいい。でも、これって完全にターゲットが女性限定ですよね?」
「あ、はい。姉妹品ですから」
「男に売る気は無いんですか?」
「男?」
「メンズですよ。顧客層を広げるなら、女性だけでは限界がある。男にも売り込むんですよ。このナイトワン」
男か。考えもつかなかった。
「久遠寺さん、このままじゃナイトワンはビューティードリームみたいには売れませんよ。だから、ミリオンドラッグと提携してこのサプリ、共同企画で売り出しませんか? 大ヒットしますよ、絶対。俺が売り出します。その代わりミリオンドラッグにしかこの商品は扱わせない。他の会社やドラッグストアには卸さない。これを条件に、一緒に企画しませんか? 悪い話ではないと思いますけど」
「あっ・・・・でも私の一存では・・・・。上司に相談しないと・・・・」
「では、俺が上司と話を付けますから、その上司をここへ今すぐ呼んで下さい」
「櫻井さん、ちょっといいですか」
私と櫻井さんの間に水口さんが割って入って来て、櫻井さんに耳打ちした。
「ふうん。上司は三輪さんか。彼なら俺の提案に賛成してくれるだろうから問題ないな。そういえば三輪さん、今日水口に会いに来るって言ってなかったか?」
「あ、はい。新しい商品の事で僕に挨拶に来てくれて、プレゼンまではいらっしゃったのですが・・・・そういえば先ほどからお姿が見えませんね」
そういえば三輪さん、取引先に電話するって言って、まだ戻って来てない。
「三輪さんなら、先ほど取引先に連絡を取ると電話をされに行きました。もう戻られると思いますが」
真吾君が状況を説明してくれた。
「私、探して来ます」
三輪さんに色々報告しなきゃ。何かこの短時間で色々進展があり過ぎて、どーにもこーにも・・・・。
「俺が行きますよ。見てきます」
真吾君がさっとその場を離れた。
ちょっ・・・・あの二人を二人きりにして、大丈夫!?
そっちの方が心配になった。
「久遠寺さん、上司が三輪さんだったら問題ありません。彼のことはよく知っています。俺の提案なら必ず首を縦に振ってくれますよ。お気に入りの部下が頑張って進めている案件なら、尚更だ。さ、打ち合わせしましょう。時間が勿体ない」
櫻井さんは、ソファーに座るよう私に勧めて来た。早速渡した資料とサプリをテーブルに広げ、水口さんに筆記用具を持ってくるように指示した。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる