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Office08・次期社長候補登場

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「こちらが無礼を働いたのです。申し訳ありません。頭を上げて下さい。久遠寺和歌子さんでしたね。今日はサプリのプレゼンされたようですが、俺にその試作品のサプリ、見せて頂けませんか? どんなコンセプトがあるんですか?」

「あ、はい。サンプルは先ほど水口さんに預けました。今回のものはビューティードリームと姉妹品みたいに考えています。このサプリは『ナイトワン』といって、一日の疲れが貯まった身体を優しくほぐしてくれる、血液循環の促進効果のあるサプリなんです。色も女性ウケするように可愛らしく水色の小粒にして、ほんの少しシトラスの香りを付けて、リラックス効果も取り入れています」

「成程」櫻井さんは暫く長く細い指を口元に当て、何やら考えている。

「これがそのサンプルです」

 水口さんがさっき預けたサンプルを、資料と一緒に櫻井さんに渡した。資料は、成分内容等の細かいものと、デザインパッケージも水色の可愛らしいパターンのものを渡してあるから、それにも櫻井さんが目を通している。

 やがて、考えがまとまったのか、櫻井さんが私を見た。

「良く考えられていますね。でも、勿体ない」

「勿体ない・・・・?」

 何が勿体ないのだろう。
 
「まず、コンセプトは良いと思います。名前もいい。でも、これって完全にターゲットが女性限定ですよね?」

「あ、はい。姉妹品ですから」

「男に売る気は無いんですか?」

「男?」

「メンズですよ。顧客層を広げるなら、女性だけでは限界がある。男にも売り込むんですよ。このナイトワン」

 男か。考えもつかなかった。

「久遠寺さん、このままじゃナイトワンはビューティードリームみたいには売れませんよ。だから、ミリオンドラッグと提携してこのサプリ、共同企画で売り出しませんか? 大ヒットしますよ、絶対。俺が売り出します。その代わりミリオンドラッグにしかこの商品は扱わせない。他の会社やドラッグストアには卸さない。これを条件に、一緒に企画しませんか? 悪い話ではないと思いますけど」

「あっ・・・・でも私の一存では・・・・。上司に相談しないと・・・・」

「では、俺が上司と話を付けますから、その上司をここへ今すぐ呼んで下さい」

「櫻井さん、ちょっといいですか」

 私と櫻井さんの間に水口さんが割って入って来て、櫻井さんに耳打ちした。
 
「ふうん。上司は三輪さんか。彼なら俺の提案に賛成してくれるだろうから問題ないな。そういえば三輪さん、今日水口に会いに来るって言ってなかったか?」

「あ、はい。新しい商品の事で僕に挨拶に来てくれて、プレゼンまではいらっしゃったのですが・・・・そういえば先ほどからお姿が見えませんね」


 そういえば三輪さん、取引先に電話するって言って、まだ戻って来てない。


「三輪さんなら、先ほど取引先に連絡を取ると電話をされに行きました。もう戻られると思いますが」

 真吾君が状況を説明してくれた。

「私、探して来ます」

 三輪さんに色々報告しなきゃ。何かこの短時間で色々進展があり過ぎて、どーにもこーにも・・・・。

「俺が行きますよ。見てきます」

 真吾君がさっとその場を離れた。

 ちょっ・・・・あの二人を二人きりにして、大丈夫!?
 そっちの方が心配になった。


「久遠寺さん、上司が三輪さんだったら問題ありません。彼のことはよく知っています。俺の提案なら必ず首を縦に振ってくれますよ。お気に入りの部下が頑張って進めている案件なら、尚更だ。さ、打ち合わせしましょう。時間が勿体ない」

 櫻井さんは、ソファーに座るよう私に勧めて来た。早速渡した資料とサプリをテーブルに広げ、水口さんに筆記用具を持ってくるように指示した。
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