1 / 96
Office01・片思いはつらいよ
1
しおりを挟む「はぁ――――ぁ」
花の社会人・OL生活にあこがれて、この会社に就職して早三年。
未だに彼氏、出来ません。
そんな私――久遠時 和歌子(くおんじわかこ)は、お昼休憩中に自作のお弁当に箸を突き刺しながら、思い切りた大きなめ息をついたトコ。
最近、合コンもお呼びが掛からない。
というより、開いてくれる幹事も減った。
だからといって、この自分の重い腰を上げようとも思わないけど。
最初は沢山居た同僚も早々に結婚や、仕事がイヤとかで辞めて行ったし。
うらやましいぜ、チクショウ。
寿退社――そんな三文字、私には無縁だ。
今日は同僚のアヤネ――江藤 綾音(えとうあやね)も居ないし。
一人で淋しいランチを取っているところだった。
「久遠時君、一人かい?」
会議室でダークオーラを放ちながらあまり箸の進まない食事をしていると、声を掛けられた。
この声は・・・・!!
声を聞くだけで、ドキドキしてしまう。
私が彼氏出来ないのは、この人のせいだっ!!
「三輪さんっ・・・・」
体温が上昇するのが解る。
「隣、いいかな?」
「あっ、ハイ、どーぞ!!」
慌てて食べかけの弁当を隅に押しやり、三輪さんが座れるスペースを作った。
「気にしないで、食事続けてね。ん、もしかして久遠時君の手作り弁当?」
はっ・・・・恥ずかしい!!
昨日の残り物を詰め合わせただけの残り物弁当を、憧れの三輪さんに見られるなんて・・・・。
穴があったら入りたいよ・・・・。
「こんな美味しそうなお弁当を作ってもらえる、久遠時君の彼氏がうらやましいな」
爽やかな笑顔を見せられ、コレは残り物詰め合わせ弁当なんです、とはモチロン言えずに笑ってごまかした。
彼氏なんて、居ませんってば。
「僕もお昼一緒したいところだけど、もうすぐ会議が始まるんだ。だから・・・・」
少し言葉を濁しながら、言い難そうにする三輪さん。
「どうかしましたか? 雑用があるようでしたら、片付けておきますけど?」
彼の意図がよく解らない。
とりあえず三輪さんの雑用なら引き受けよう。嫌な顔せずに。
「いや・・・・実は。あの、久遠時君」
またまた言い難そうに三輪さんが続ける。
めずらしなぁ。何時もハキハキ話す人なのに。
「今日の夜、時間無い? 食事に行かないか?」
「しょっ、食事っ!?」
突然の事だったので、大声を上げてしまった。
三輪さんと、私が?
ナンで!?
「あ、やっぱりダメか」
「い、いいえっ、あのっ、ダメなんかじゃないです! 全然OKです! メチャクチャ、ヒマなので!!」
バカバカ、私!
何「メチャクチャ、ヒマなので」とか余計な事言って、淋しいオンナアピールしてるのよっ!!
しかも今日、アヤネと飲み約束あったような気が・・・・。
ゴメン、アヤネ! 今度、何か奢る!!
「急に悪いけど、久遠時君に時間があると聞いて安心したよ」三輪さんは安心したように、ちょっとだけ微笑んだ。「じゃあ、詳しいことはその時に。午後七時に駅前で待ち合わせしよう。もし遅くなるといけないから、駅前のホテルのバーでお茶飲んでて? 僕がご馳走するから」
「はっ、はい! 解りました!!」
「じゃあ、ランチ邪魔してごめんね」
そう言って、三輪さんは去っていった。
ちょっ・・・・
ちょっとちょっと・・・・・・・・
三輪さんに食事誘われちゃったよ―――――!!
ど、っどどどど、どーしよっ!
既にパニック状態に陥ってるわ、私!!
とにかく落ち着けっ。
それより今日会社に着て来た服っ、私的にビミョーだったわ!
あっ、じゃあ何か可愛い服、持ってきてたっけ!?
・・・・アヤネと飲みに行くだけで、そんな可愛い服なんて持って来てないわ。
しかもスカートじゃなくて、パンツルックだし。
そうだ! 合コン用の服は!?
・・・・って、合コンも最近サボリがちだから、ロッカーに置き服してるヤツ、シワシワでカビでも生えてるんじゃないっ!?
ダメっ、使えないわ!!
――残り物弁当ランチしてる場合じゃないっ!!
私は急いで会社を飛び出した。
夢中で駅前まで走って、昼休みいっぱい使って三輪さんとのデートに着ていく服を選び悩んだ。
会社が駅前で良かったと、今日ほど感謝した事はないお昼休みだった。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる