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第四話・罠を仕掛けた男
Side・秋山 壮太・15
しおりを挟む「一体誰の子か、って思ってるだろう? お前の様子じゃ絶対に真相は解らないだろうから、タネ明かしをしてあげるよ。玲子はね、お前に捨てられることを常に想定していたんだ。だから、何時の頃からか、こっそり気が付かれないように、避妊具に穴を空けるようになったんだ。まだ、玲子がお前の仕掛けた罠だと気が付かない時の、僕との行為の最中でもね。さっき僕が気づいてなかったんだ、って言ったのは、この事だよ。まあ、僕も最初は全然気が付かなかった位だからね。上手に空けるんだ。一度きりの関係じゃあ、気が付かないのも無理はない」
まるで、秘密の内緒話をするかのように、亜貴は、それらの事を楽しそうに語った。
とても恐ろしい話をしているような、そんな風には感じなかった事が、却って恐ろしさを助長させた。
「何で、玲子は・・・・そんな事・・・・」
上手く声が出せなくて、震えた。掠れた声しか出なかった。
「何で? 愚問だろ、壮。玲子の身になってみろよ。用済みになったら、他の女を手に入れた愛する男から捨てられて、たった一人で放り出されるんだ。これからの事を思うと、堪らないだろう? 玲子としては、賭けだったワケだ。勿論、上手く子供が授かることができれば、彼女一人で育てるつもりだったんだろう。誰にも告げずに、黙って一人で。種なんて彼女にすればどっちでも――まあ、お前の方が良いとは思っていたに違いないけど――良かったと思うよ。・・・・あくまでこれは僕の想像だけど、結構核心は突いていると思うな。玲子が、僕や壮以外の男と寝るような女じゃないって事は、僕たちがよく知っているだろう。だから・・・・ね?」
「そんな・・・・だったらちゃんと――」
「言っておくけど、この事は僕とお前だけの秘密だからな!」強い口調で、亜貴に言葉を遮られた。
「赦しを乞う為に、本当の事を玲子や由布ちゃんに一言でも伝えたら、その時点で玲子とお前の子供、殺すよ? 僕は、お前を地獄に堕とす為なら、何を犠牲にしても、殺人犯になることも厭(いと)わない覚悟だ。でもね、お前が僕を殺すことは、絶対にできない。僕を殺せば、これから産まれてくる子供や、由布ちゃんが困ることになるだろう。殺人犯の身内を持つと、この国で生きていくのは、想像以上に大変だ。僕に事を起こさせたら、折角授かった――しかもそれは、彼女が心から愛する男との子供・・・・それを殺された挙句、身内(ぼく)が殺人犯になるんだ。お前の大事な玲子を、そんな酷い目に遭わせたくはないだろう? だからこの秘密は、絶対、誰にも喋るなよ?」
どうして俺は、あの時
「僕を罠にかけたりするから、こういう事になるんだ」
この男の
「子供が育ってお前に似てきたりしたらさ、みんな驚くだろうね。早くその顔、見てみたいなぁ。どんな顔するんだろう。あぁ、楽しみだ」
息の根を止めなかったんだろう
「さあ、どうする、壮?」
美しい悪魔が微笑み、地獄が、俺を待っていた。
――罠を仕掛け、仕留めたのは俺の方だと思っていたのに、本当はこの男の方に、俺が罠に掛けられ、仕留められていたなんて・・・・
-完-
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