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第四話・罠を仕掛けた男
Side・秋山 壮太・12
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良かった。入院して離れるとか言われたら、どうしようかと思った。
俺は一日だって、ゆっちゃんと離れるのはイヤだからな。
「じゃあ何っ!?」
「もうっ、ちゃんと聞いてよねっ。あのねっ、私・・・・壮くんとの赤ちゃんができたの。今、五週目だって・・・・」
「ほっ、本当・・・・?」
「うん・・・・ほんとう」
「やったぁ――っ!! すごいっ、すごいよゆっちゃん!! 俺達に・・・・もう一人家族が出来るんだっ!」
お腹には力を入れないように気を付けて、ゆっちゃんを抱きしめた。
「あぁ、信じられないっ、凄いよ、ゆっちゃん! 俺、本当に・・・・何て言っていいか・・・・胸いっぱいです。ありがとう。これからも、ずっとゆっちゃんの事は大切にする。だから、ずっとずーっと、俺の奥さんでいて下さい」
「はい。かしこまりましたっ!」
ゆっちゃんが敬礼したので、思わず笑顔が零れた。
彼女を見つめていると、愛しさが溢れてきて、そのまま彼女の可愛いピンクの唇に口づけた。
「あぁ・・・・暫く、夜はおあずけになるのかぁ・・・・でも、しょうがないよな、我慢するっ! それより赤ちゃん、今すぐ出てきて、産まれてくれないかな。もう、すごく楽しみだ!! 早く会いたいなぁ!」
俺は、ゆっちゃんのぺたんこのお腹を撫でた。見た目は全く変化が無いから、良く解らない。五週目だから当然とは思うけど。
今触れているこの先に、新しい命があるんだと思うと、何とも言えない不思議な、とても幸せな気持ちになった。
俺が親に愛されなくてとても辛い思いをした分、産まれてくる自分の子供には、絶対、絶対に沢山の愛情を注いで、大切に育てようと思った。
早く大きくなって出てこーい、お父さんも早く会いたいぞー、と、お腹に向かって叫んだ。
「もうっ、何言ってるの、壮くんたらっ。気が早いわね。ふふっ、赤ちゃん優先だけど、同じくらい、壮くんも優先だよ?」
ゆっちゃんが俺の首に腕を絡めて来て、耳元で囁いた。「できない分は、したくなったら、私がしてあげる」
「――っ!!」
色っぽく囁かれて、俺は真っ赤になってしまった。
そんな俺を、ゆっちゃんはじっと見つめてくれた。
「壮くん。あのね、貴方にちゃんと伝えておこうと思っていることがあるの。聞いてくれる?」
「はい、何でしょうか、奥様」
この状況で、俺と別れたいとか言わないだろうな――不安が頭をよぎった。
ありもしない不安な事を、俺はどうしても考えてしまうんだ。
そんな訳ないだろうけど、ちょっとの事で不安になるのは、本当に、自分でもどうしようかと思うくらい酷い。
でもそれは、君と過ごす毎日が本当に幸せすぎて、怖くなる時があるんだ。俺が極度の心配性になってしまったのは、きっとそのせいだろうな。
「私ね、飾らずに、ありのままの自分でいられることが、こんなに楽しくて幸せな事だとは思わなかったの。亜貴くんと一緒に居る時は、あの人に嫌われないようにって、それだけを必死で、自分の気持ちも、何も言いたい事も言えずに、ずっと取り繕って過ごして来たの。毎日が凄く苦しくて、辛かったわ。でも、壮くんは違う。貴方と居る時、私はどんな時でも、遠慮なく本音で話せる――その事がどれだけ大切だっていう事を、十三年前に気づかなくて、貴方を沢山傷つけてしまって、本当にごめんなさい。壮くんに愛して貰って、こんなに幸せな毎日を送ることが出来ている事、本当に、感謝しているの。ありがとう。これからは私がいっぱい、今まで以上に、壮くんの事を愛していきたいの。だから壮くんも、ずっと私の事だけ愛していてね・・・・」
ゆっちゃんの唇が、俺の唇と重なった。
幸せだ。本当に幸せだ。
十三年間も耐えてきて、多くの犠牲を払って、悪魔に魂を売って、亜貴を罠に掛けて、君を取り返す事が出来て、本当に良かった。
この時間が壊れないように、大切にしよう。絶対に、何があっても。
ずっと君だけを大切にして、君だけを愛していくから。
それは、中学のあの時よりもずっと、恐らく一生のうちの俺の中で、本当に一番、幸せな時間だった――
俺は一日だって、ゆっちゃんと離れるのはイヤだからな。
「じゃあ何っ!?」
「もうっ、ちゃんと聞いてよねっ。あのねっ、私・・・・壮くんとの赤ちゃんができたの。今、五週目だって・・・・」
「ほっ、本当・・・・?」
「うん・・・・ほんとう」
「やったぁ――っ!! すごいっ、すごいよゆっちゃん!! 俺達に・・・・もう一人家族が出来るんだっ!」
お腹には力を入れないように気を付けて、ゆっちゃんを抱きしめた。
「あぁ、信じられないっ、凄いよ、ゆっちゃん! 俺、本当に・・・・何て言っていいか・・・・胸いっぱいです。ありがとう。これからも、ずっとゆっちゃんの事は大切にする。だから、ずっとずーっと、俺の奥さんでいて下さい」
「はい。かしこまりましたっ!」
ゆっちゃんが敬礼したので、思わず笑顔が零れた。
彼女を見つめていると、愛しさが溢れてきて、そのまま彼女の可愛いピンクの唇に口づけた。
「あぁ・・・・暫く、夜はおあずけになるのかぁ・・・・でも、しょうがないよな、我慢するっ! それより赤ちゃん、今すぐ出てきて、産まれてくれないかな。もう、すごく楽しみだ!! 早く会いたいなぁ!」
俺は、ゆっちゃんのぺたんこのお腹を撫でた。見た目は全く変化が無いから、良く解らない。五週目だから当然とは思うけど。
今触れているこの先に、新しい命があるんだと思うと、何とも言えない不思議な、とても幸せな気持ちになった。
俺が親に愛されなくてとても辛い思いをした分、産まれてくる自分の子供には、絶対、絶対に沢山の愛情を注いで、大切に育てようと思った。
早く大きくなって出てこーい、お父さんも早く会いたいぞー、と、お腹に向かって叫んだ。
「もうっ、何言ってるの、壮くんたらっ。気が早いわね。ふふっ、赤ちゃん優先だけど、同じくらい、壮くんも優先だよ?」
ゆっちゃんが俺の首に腕を絡めて来て、耳元で囁いた。「できない分は、したくなったら、私がしてあげる」
「――っ!!」
色っぽく囁かれて、俺は真っ赤になってしまった。
そんな俺を、ゆっちゃんはじっと見つめてくれた。
「壮くん。あのね、貴方にちゃんと伝えておこうと思っていることがあるの。聞いてくれる?」
「はい、何でしょうか、奥様」
この状況で、俺と別れたいとか言わないだろうな――不安が頭をよぎった。
ありもしない不安な事を、俺はどうしても考えてしまうんだ。
そんな訳ないだろうけど、ちょっとの事で不安になるのは、本当に、自分でもどうしようかと思うくらい酷い。
でもそれは、君と過ごす毎日が本当に幸せすぎて、怖くなる時があるんだ。俺が極度の心配性になってしまったのは、きっとそのせいだろうな。
「私ね、飾らずに、ありのままの自分でいられることが、こんなに楽しくて幸せな事だとは思わなかったの。亜貴くんと一緒に居る時は、あの人に嫌われないようにって、それだけを必死で、自分の気持ちも、何も言いたい事も言えずに、ずっと取り繕って過ごして来たの。毎日が凄く苦しくて、辛かったわ。でも、壮くんは違う。貴方と居る時、私はどんな時でも、遠慮なく本音で話せる――その事がどれだけ大切だっていう事を、十三年前に気づかなくて、貴方を沢山傷つけてしまって、本当にごめんなさい。壮くんに愛して貰って、こんなに幸せな毎日を送ることが出来ている事、本当に、感謝しているの。ありがとう。これからは私がいっぱい、今まで以上に、壮くんの事を愛していきたいの。だから壮くんも、ずっと私の事だけ愛していてね・・・・」
ゆっちゃんの唇が、俺の唇と重なった。
幸せだ。本当に幸せだ。
十三年間も耐えてきて、多くの犠牲を払って、悪魔に魂を売って、亜貴を罠に掛けて、君を取り返す事が出来て、本当に良かった。
この時間が壊れないように、大切にしよう。絶対に、何があっても。
ずっと君だけを大切にして、君だけを愛していくから。
それは、中学のあの時よりもずっと、恐らく一生のうちの俺の中で、本当に一番、幸せな時間だった――
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