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第三話・罠になった女
Side・秋山 玲子・1
しおりを挟む暗い、暗い、闇の中にいた。
助けて!
怖い!
もうやめてっ!!
私に触らないでっ!!
黒い手が伸びて来た。
――静かにしていたら、すぐすむからね
黒い手が、私の裸体を撫でまわした。
いやぁあっ! もう、やめてっ、いやあぁあぁ――っ!!
中学生だった時の、私が泣いている。
――オーケー。もう、大丈夫だ。俺が助けてやる。だからもう、泣くな。
本当?
もう大丈夫?
目を開けたら、壮太が居た。
良かった。壮太だったら大丈夫だ。
私は笑って、
壮太に向かって手を伸ばした――・・・・
――・・・・
目が覚めた。
気が付くと、部屋のベッドの上だった。
一人の暗い部屋でベッドに身体を投げ出して、ぼんやりと天井を見つめているうちに夢を見てしまったのね。
涙で頬が濡れていた。
壮太の顔が見たくて家中を探したけれど、彼は居なかった。
そうだ。今日は亜貴との決戦の日。
壮太は、亜貴に話をつけてくると言って、さっき家を出て行ったんだっけ。
ということは、もう、私の役目もお終いなのね。
心に、ぽっかり穴が空いてしまったよう。もともと空っぽの心だから何もないと思っていたのに、淋しいと思うのはどうしてかしら。
これで、壮太にも亜貴にも逢えなくなる――・・・・。
そう考えると、どうしても淋しさは拭えない。
亜貴の事を考えた時、私は酷く彼が心配になった。
あんなに脆くて崩れそうな男、子供みたいに必死で抱え込んでいる大事な女を壮太に取り上げられたりしたら、本当に狂ってしまうんじゃないかしら。
もともとクレイジーな人だし。
ずっと閉じ込めていたお城のお姫様に捨てられて、一人ぼっちで淋しくなったら、私が抱きしめてあげるわ、亜貴。
一緒に首でも絞めて、イキながら果てましょう。亜貴ならそれ、満足するんじゃない?
私達、狂った者同士で、お似合いの末路よ。
そういえば、久々に見た。子供の頃の夢。
私の心をこんなにも黒く塗りつぶしてしまった
悪夢が終わりを告げた あの夏の事――・・・・
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