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第二話・壊れた男
Side・松田 亜貴・3
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由布ちゃんだって、僕の事を普通の優しい男と思っているだろう。
僕の表側しか好きじゃない筈だ。
玲子みたいな女ならきっと本当の裏側の僕を理解して、愛してくれるかもしれないけれど。
僕は自分が裏表のある人間だって昔から理解しているし、どんな風にすればその人間が喜ぶのか手に取るように解るから、罠に嵌めるのは簡単なんだよ。
由布ちゃんもそう。
ふわふわの柔らかい、栗色のカールがかった髪。
髪と同じで柔らかな優しいくりくりっとした大きな瞳。
笑うと誰よりも可愛い、太陽のような天使みたいな女の子。
初めて僕が欲しいって思った女の子。
その可愛い羽根をむしり取って、可愛い笑顔を叩き壊して、もがき苦しむ姿を何時までも見ていたいって、僕の心の琴線を震わせた女の子。
君を罠に嵌めて僕に気持ちを向けさせるのは、赤子の手をひねるのと同じくらい簡単だった。
本当は由布ちゃん、最初は壮の事が気になっていたクセに、僕が優しくするとすぐ勘違いしちゃって、ずっと僕に恋をして僕が好きなんだって、思っちゃったんだよね。
僕は器用で頭も良かったしスポーツもそれなりに出来たから、多分この歪んだ性格以外は完璧なんだと思う。色々出来る分、人間として一番大切な部分が欠損しているんだろうな。
人間としては一番やっかいな男だけど、この性格を知られなかったら大抵の女の子なら好きになると思う。
自分で言うのもなんだけど、僕は王子様みたいだったから。そう見える様に計算して立ち振る舞っていたし。
男っぽくガサツに振舞うより、ずっと良かった。その方が友人と呼べるような人間関係も、大人からの人望も手に入る。
僕そのものが、由布ちゃんをおびき寄せる罠みたいなものだったからな。
由布ちゃんは中学生の時から君に恋をしている壮を、幾度も傷つけながら僕の事を愛してくれたよね。
知ってた? 壮は未だに君の事、愛しているんだ。由布ちゃんは既に僕のものだというのに、未だにだよ。一途で凄い男だと思う。
壮はきっと今でも君を想って、どこかで傷ついているんだろうな。
考えただけで、ゾクゾクする。
親友の壮が傷つく姿を見る度に、僕はこんなにも震えるんだ。
僕は多分、壮の事も好きなんだと思う。
好きって言うと誤解されてしまうかもしれない。男が好きな訳ではないんだ。肉体的に好きなのは女性だけど、僕の場合好きとか愛してるとか、そういう次元の話ではないんだ。
壮は何故か、僕の琴線を震わせるんだ。
彼は由布ちゃんを誰よりも想いながら、それでも言い出せなくて諦めて譲ってくれるような、そういう性格の持ち主だからだろうと思う。いつまでも一途に由布ちゃんを想い続けて、キラキラしているから、僕はそれを叩き壊したくて仕方なくなるんだ。
自分のキモチに蓋をして、由布ちゃんの為に、僕に由布ちゃんを譲ってくれる壮にも、それに気が付かないで無邪気に僕の事を相談しながら壮を傷つけている由布ちゃんの事も、ずっと見てた。
僕の仕掛けた罠にいとも容易く二人共引っかかって、傷ついて、もがいて――壮の苦しむ姿を見るのは、本当に最高だった。
でもあんまりこの状態で放っておくと、壮が由布ちゃんに手を出して二人が結ばれたりしたら困るから、頃合いを見計らって釘を刺した。
由布ちゃんは僕のものだから、壮にはあげないよ。
だから彼女を誘導して告白までさせた。思い通り、僕の罠にかかった君を手に入れたんだ。
毒のある蜘蛛の糸に引っかかって捕らえられてしまった、綺麗な羽をした蝶の様に。
可哀想だなぁ。僕に見つけられて、捕まってしまって。
もしかしたら由布ちゃんは、壮と幸せになっていたかもしれないのに。
だって壮は普通の男だから、きっと由布ちゃんが欲しいって思う愛を、惜しみなく与えてくれるだろうから。
でも、ごめんね?
壮にだけは絶対にあげたくないんだ。だから取り上げた。
だけどね、由布ちゃん。
もし君が壊れてしまっても、大丈夫だよ。ずっと僕が傍にいて大切にしてあげるから。
永遠に――
僕の表側しか好きじゃない筈だ。
玲子みたいな女ならきっと本当の裏側の僕を理解して、愛してくれるかもしれないけれど。
僕は自分が裏表のある人間だって昔から理解しているし、どんな風にすればその人間が喜ぶのか手に取るように解るから、罠に嵌めるのは簡単なんだよ。
由布ちゃんもそう。
ふわふわの柔らかい、栗色のカールがかった髪。
髪と同じで柔らかな優しいくりくりっとした大きな瞳。
笑うと誰よりも可愛い、太陽のような天使みたいな女の子。
初めて僕が欲しいって思った女の子。
その可愛い羽根をむしり取って、可愛い笑顔を叩き壊して、もがき苦しむ姿を何時までも見ていたいって、僕の心の琴線を震わせた女の子。
君を罠に嵌めて僕に気持ちを向けさせるのは、赤子の手をひねるのと同じくらい簡単だった。
本当は由布ちゃん、最初は壮の事が気になっていたクセに、僕が優しくするとすぐ勘違いしちゃって、ずっと僕に恋をして僕が好きなんだって、思っちゃったんだよね。
僕は器用で頭も良かったしスポーツもそれなりに出来たから、多分この歪んだ性格以外は完璧なんだと思う。色々出来る分、人間として一番大切な部分が欠損しているんだろうな。
人間としては一番やっかいな男だけど、この性格を知られなかったら大抵の女の子なら好きになると思う。
自分で言うのもなんだけど、僕は王子様みたいだったから。そう見える様に計算して立ち振る舞っていたし。
男っぽくガサツに振舞うより、ずっと良かった。その方が友人と呼べるような人間関係も、大人からの人望も手に入る。
僕そのものが、由布ちゃんをおびき寄せる罠みたいなものだったからな。
由布ちゃんは中学生の時から君に恋をしている壮を、幾度も傷つけながら僕の事を愛してくれたよね。
知ってた? 壮は未だに君の事、愛しているんだ。由布ちゃんは既に僕のものだというのに、未だにだよ。一途で凄い男だと思う。
壮はきっと今でも君を想って、どこかで傷ついているんだろうな。
考えただけで、ゾクゾクする。
親友の壮が傷つく姿を見る度に、僕はこんなにも震えるんだ。
僕は多分、壮の事も好きなんだと思う。
好きって言うと誤解されてしまうかもしれない。男が好きな訳ではないんだ。肉体的に好きなのは女性だけど、僕の場合好きとか愛してるとか、そういう次元の話ではないんだ。
壮は何故か、僕の琴線を震わせるんだ。
彼は由布ちゃんを誰よりも想いながら、それでも言い出せなくて諦めて譲ってくれるような、そういう性格の持ち主だからだろうと思う。いつまでも一途に由布ちゃんを想い続けて、キラキラしているから、僕はそれを叩き壊したくて仕方なくなるんだ。
自分のキモチに蓋をして、由布ちゃんの為に、僕に由布ちゃんを譲ってくれる壮にも、それに気が付かないで無邪気に僕の事を相談しながら壮を傷つけている由布ちゃんの事も、ずっと見てた。
僕の仕掛けた罠にいとも容易く二人共引っかかって、傷ついて、もがいて――壮の苦しむ姿を見るのは、本当に最高だった。
でもあんまりこの状態で放っておくと、壮が由布ちゃんに手を出して二人が結ばれたりしたら困るから、頃合いを見計らって釘を刺した。
由布ちゃんは僕のものだから、壮にはあげないよ。
だから彼女を誘導して告白までさせた。思い通り、僕の罠にかかった君を手に入れたんだ。
毒のある蜘蛛の糸に引っかかって捕らえられてしまった、綺麗な羽をした蝶の様に。
可哀想だなぁ。僕に見つけられて、捕まってしまって。
もしかしたら由布ちゃんは、壮と幸せになっていたかもしれないのに。
だって壮は普通の男だから、きっと由布ちゃんが欲しいって思う愛を、惜しみなく与えてくれるだろうから。
でも、ごめんね?
壮にだけは絶対にあげたくないんだ。だから取り上げた。
だけどね、由布ちゃん。
もし君が壊れてしまっても、大丈夫だよ。ずっと僕が傍にいて大切にしてあげるから。
永遠に――
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