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第一話・壊れた女
Side・松田 由布子・9
しおりを挟む「いやぁあぁあぁぁあぁあ――――っ!!」
私は発狂した。
「ゆっちゃん!」
「いやっ、いやぁっ、いやあぁあ――っ!! こんなのってないっ! ひどいよおっ・・・・いやあぁあぁあぁぁ――――っ!!」
亜貴くんが
「いやぁあぁぁ――っ!!」
亜貴くんが私を
「ゆっちゃん!!」
裏切って――――・・・・
「ゆっちゃん! しっかりしろっ!!」
私の地獄の日々は
「ううっ・・・・あぁあぁ――っ! 亜貴くんっ、亜貴くん――っ!!」
一体
「ゆっちゃん!」
何だったの
「こんなのってない!! こんな・・・・酷い・・・・酷いよおっ・・・・あぁっ、あ きくんが わたっ・・・・わ た しをっ・・・・」
ただただ涙が溢れ、過呼吸みたいになって、まともに喋ることもできなくなった。唇を強く噛みしめすぎて、うっすら血の味がしてきた。
それが、夢でないと私に現実を突きつける。
写真を握りしめたまま、私は崩れ落ちた。
「ううっ・・・・うあぁあ――っ・・・・いやぁあぁ・・・・あき、くっ・・・・あぁっ・・・・」
酷い嗚咽が漏れた。
泣き崩れた私を、壮くんが傍にやって来て、強く抱きしめてくれた。
「ゆっちゃん・・・・俺なら、君にこんな辛い思いさせないっ! 俺、何の為にゆっちゃんを諦めたんだよ・・・・。こんな時にごめん。でも、聞いて欲しい」
壮くんにしがみついて泣いている私の背中を優しく撫でながら、彼が話を続けた。
「俺、ずっとゆっちゃんが好きだったんだ! 中学の時、転校してきてすぐ、独りぼっちだった俺を助けてくれた、あの時からずっと、優しいゆっちゃんの事、好きだったんだよっ!! でも、君は亜貴の事、何時も大切に思っていたから、応援しよう、俺のキモチは言わないで心にしまっておこうって・・・・亜貴だから、俺は君の事諦めて・・・・やっと、別の大切にできる女性を見つけたっていうのに・・・・! それを・・・・それをっ・・・・こんな形で裏切られるなんて!!」
好きだった?
私を?
何を言ってるの、この人。
「ううっ・・・・うあぁっ・・・・いや あぁっ・・・・」
頭がメチャクチャで、壮くんの言ってる事が、全然理解できない。
ショックなことがありすぎて、思考回路がどうにかなりそうだ。
泣き叫んで発狂している筈なのに、頭は冷静で、どこか違う視点から自分を見つめたりしてる。
壮くんの言葉も、よくわからない。私を好きだったなんて・・・・。
でも、もしそれが本当だったなら、中学の時からずっと、今まで私に優しくしてくれたのも、亜貴くんの事を励まし続けて応援してくれたのは、全部・・・・私が好きだったからなの?
私、そんな事何も知らなくて、最低だったのね。いつもいつも、私の愚痴とか、相談とか、嫌な顔せず聞いてくれて、応援してくれた壮くんの事、知らずに傷付けちゃってたんだ・・・・。
私、一体何考えてるの。
今、考えなきゃいけないのは
亜貴くんのことでしょう。
でも
だめ
むり
もう
なにも
かんがえられない
――――・・・・
私はただ、放心した。
「ごめん、このことは一生ゆっちゃんには言うつもりなかったんだけど・・・・気にすんなよ? 俺が勝手に好きだったんだ。でも、やっとゆっちゃんの事諦めて、やっとゆっちゃん以外の女を好きになれて、結婚までしたってのに・・・・酷いよなあ? 俺、親友と奥さんから、いっぺんに裏切られてっ・・・・悔しい、もう死にたいって思った。この事を知ってからはずっと、地獄の日々だった」
壮くんは淡々と話しているけど、多分、すごく苦しんだだろうな。
自分の事があまりうまく考えられなくなったから、壮くんの苦しい表情を見て、そう思った。
私は黙って涙を流し続けた。
「苦しみばかりが溢れて、俺も最初この事知った時、一人で取り乱したんだ。全部忘れたくて暴れて・・・・そのうちだんだん、二人が赦せなくなった。だから、ゆっちゃんにこの事伝えて、どうするか相談したかったんだ。でも君は、俺以上に亜貴にひどい目に遭わされてて・・・・亜貴と一緒になって、君は幸せだって勝手に思ってた。気づけなくて、本当にごめんな。こんな事なら、亜貴に託すんじゃなかった。遠慮しないで、俺が攫ってれば良かった・・・・」
頬に手を当てられ、溢れる涙を拭ってくれたかと思うと、壮くんの顔が近づいた。
「そうく――・・・・っん・・・・」
あっ、と思った瞬間だった。壮くんの唇が優しく私の唇に触れた。熱くて、柔らかい唇。
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