5 / 47
第一話・壊れた女
Side・松田 由布子・5
しおりを挟む
そろそろ本格的に寒くなる十一月がやって来た。
今日は、先月申し込みをした同窓会の日だ。
あれから亜貴くんとは何も変わることなく、地獄の日々を続けていた。
毎日同じことの繰り返し。貴方に愛されない事も繰り返し、繰り返し。
素敵になった同級生の誰かと、浮気のひとつでもしてやろうかしら――そうは思っても、出来るわけないか、とため息を吐く繰り返しだった。
とりあえず今日は、亜貴くんの事は忘れて、純粋に楽しもう。
今回の同窓会は、中学二年生の時、同じクラスだった人が集められた。人数にして四十人弱。まあまあな人数だから、ホテルの宴会場を貸し切って、結構豪華に行われた。
二の腕当たりまで伸びた髪を切りそろえてセットしてもらい、うんとお洒落して、私は会場に足を踏み入れた。
こういう華やかな場に来るのは、本当に久しぶり。
亜貴くんは出かける事さえ文句も言わず、口を挟まないんだから、これからはもう少し亜貴くんから離れよう。じゃなきゃ、心がおかしくなる。もう壊れかけ寸前だもの。早く自分で、何か夢中になれる楽しい事を見つけなきゃ。
「ゆっこ、久しぶり~!」
「あっ、みーな! 元気だったぁ!?」
声をかけてくれたのは、同級生の八馬三奈子(やまみなこ)。中学の時、同じクラスで一番仲良かった友達だ。でも、就職して結婚したりすると、女友達とは疎遠になる。お互い忙しいから、仕方ない。
「また会おうよ! ゆっこ、連絡先教えてっ」
「うん、女子会しよーっ!」
実現できるかは別として、他にも何人か久々の顔ぶれに、心が弾んだ。
こんなに楽しいって思ったのは、久しぶりだった。
「あ、ゆっちゃんだ。久しぶり! 綺麗なお姫様、シャンパンはいかがでしょうか?」
目の前に長身の素敵な男性が現れて、慣れた手つきで私にシャンパンのグラスを渡してくれた。
柔らかそうな少し天然パーマのかかった短くて黒い髪、亜貴くんとは違った魅力のある鋭い切れ長の瞳。この声、このしぐさ――・・・・
「えっ・・・・そ、壮くんっ?」
「ザッツライト」
彼は秋山壮太。中学二年の時、彼が転校してきて、同じクラスになった時から仲良くしている、私の大切な友達だ。私を介して亜貴くんとも仲良くなって、壮くんと亜貴くんは、親しい友人として今も付き合っている。
ザッツライト、と言った英語が綺麗な発音で、流石何年もアメリカで仕事していただけの事はある。
彼はとても話上手、聞き上手で、大学では心理学を専攻し、今は名だたるカウンセラーとして活躍している。かくいう私も、亜貴くんの事、片思いをしていた中学生の時から、彼がアメリカに行くまで相談に乗ってもらっていた。壮くんは、ずっとアメリカで仕事してるって聞いていたけど・・・・。
「うそーっ、何時海外から戻ったのぉ!? やだー、久しぶり! 元気だった!?」
まさか壮くんに会えると思っていなかったから、テンションが上がった。
「あ、亜貴のヤツ、俺がこっちに戻ったこと、何もゆっちゃんに言ってないんだな」
「聞ーてないーっ!」
もうっ、亜貴くんたら、何時も肝心な事は何も私に話してくれないんだから!
「戻ったのは二年くらい前かな。ま、ゆっちゃんも無事に亜貴と結婚したんだし、何も俺に相談することなんて、無いだろ」
「えーっ、あるよ、あるある! いっぱいあるー!」
壮くんには、何でも話せる間柄だ。かといって、亜貴くんとのセックスレスを話す訳にはいかないけど。
「えっ、どんなコトだよ?」
「それはヒミツ! 男の人には教えられなーい」
相談したいことがあるとか言いながら、矛盾したセリフを吐いた。
「あ、解ったぞ。当ててやろうか?」壮くんはニヤニヤしている。
えっ、亜貴くんのこと、私、顔に出てたかなっ!?
そんなに欲求不満に見えるの、私!?
今日は、先月申し込みをした同窓会の日だ。
あれから亜貴くんとは何も変わることなく、地獄の日々を続けていた。
毎日同じことの繰り返し。貴方に愛されない事も繰り返し、繰り返し。
素敵になった同級生の誰かと、浮気のひとつでもしてやろうかしら――そうは思っても、出来るわけないか、とため息を吐く繰り返しだった。
とりあえず今日は、亜貴くんの事は忘れて、純粋に楽しもう。
今回の同窓会は、中学二年生の時、同じクラスだった人が集められた。人数にして四十人弱。まあまあな人数だから、ホテルの宴会場を貸し切って、結構豪華に行われた。
二の腕当たりまで伸びた髪を切りそろえてセットしてもらい、うんとお洒落して、私は会場に足を踏み入れた。
こういう華やかな場に来るのは、本当に久しぶり。
亜貴くんは出かける事さえ文句も言わず、口を挟まないんだから、これからはもう少し亜貴くんから離れよう。じゃなきゃ、心がおかしくなる。もう壊れかけ寸前だもの。早く自分で、何か夢中になれる楽しい事を見つけなきゃ。
「ゆっこ、久しぶり~!」
「あっ、みーな! 元気だったぁ!?」
声をかけてくれたのは、同級生の八馬三奈子(やまみなこ)。中学の時、同じクラスで一番仲良かった友達だ。でも、就職して結婚したりすると、女友達とは疎遠になる。お互い忙しいから、仕方ない。
「また会おうよ! ゆっこ、連絡先教えてっ」
「うん、女子会しよーっ!」
実現できるかは別として、他にも何人か久々の顔ぶれに、心が弾んだ。
こんなに楽しいって思ったのは、久しぶりだった。
「あ、ゆっちゃんだ。久しぶり! 綺麗なお姫様、シャンパンはいかがでしょうか?」
目の前に長身の素敵な男性が現れて、慣れた手つきで私にシャンパンのグラスを渡してくれた。
柔らかそうな少し天然パーマのかかった短くて黒い髪、亜貴くんとは違った魅力のある鋭い切れ長の瞳。この声、このしぐさ――・・・・
「えっ・・・・そ、壮くんっ?」
「ザッツライト」
彼は秋山壮太。中学二年の時、彼が転校してきて、同じクラスになった時から仲良くしている、私の大切な友達だ。私を介して亜貴くんとも仲良くなって、壮くんと亜貴くんは、親しい友人として今も付き合っている。
ザッツライト、と言った英語が綺麗な発音で、流石何年もアメリカで仕事していただけの事はある。
彼はとても話上手、聞き上手で、大学では心理学を専攻し、今は名だたるカウンセラーとして活躍している。かくいう私も、亜貴くんの事、片思いをしていた中学生の時から、彼がアメリカに行くまで相談に乗ってもらっていた。壮くんは、ずっとアメリカで仕事してるって聞いていたけど・・・・。
「うそーっ、何時海外から戻ったのぉ!? やだー、久しぶり! 元気だった!?」
まさか壮くんに会えると思っていなかったから、テンションが上がった。
「あ、亜貴のヤツ、俺がこっちに戻ったこと、何もゆっちゃんに言ってないんだな」
「聞ーてないーっ!」
もうっ、亜貴くんたら、何時も肝心な事は何も私に話してくれないんだから!
「戻ったのは二年くらい前かな。ま、ゆっちゃんも無事に亜貴と結婚したんだし、何も俺に相談することなんて、無いだろ」
「えーっ、あるよ、あるある! いっぱいあるー!」
壮くんには、何でも話せる間柄だ。かといって、亜貴くんとのセックスレスを話す訳にはいかないけど。
「えっ、どんなコトだよ?」
「それはヒミツ! 男の人には教えられなーい」
相談したいことがあるとか言いながら、矛盾したセリフを吐いた。
「あ、解ったぞ。当ててやろうか?」壮くんはニヤニヤしている。
えっ、亜貴くんのこと、私、顔に出てたかなっ!?
そんなに欲求不満に見えるの、私!?
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる