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第16話 ~海里くんと卓くん~

Side・新庄海里/その10

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「おーい、政海――っ」


「チッ。イイトコなのに。邪魔だなぁ」

 これ、普段の政海なら絶対に言わないであろう台詞だ。完全に身も心も政人化してるぞ、政海。
 政人化した政海は(ややこしいな。これもリバースか?)読者様の予言通り、私達を探しに来た卓を疎(うと)んでいる。

 
「卓君に海里ちゃんのこんな姿見られたら困るから、直しておこうね」

 さっとジャージのジッパーを引き上げ、元の状態に戻された。
 私の方は、火照りが収まらない。

「その可愛い顔、僕以外に見せたらお仕置きだよ?」

 王子(©恋愛レッスン)さながらの、ドS発言まで飛び出す始末。どこでどうなった? 政海はずっと政人でリバース状態なのか!? 何かのスイッチが入っているのか?
 あれか? 君だけのヤル気スイッチ的な? ヤルだけに?
 って、何も笑えんぞ、このジョーク。


 ・・・・私には、この終着駅がさっぱりわからない。


 戸惑っていると政海が、『大丈夫だから、卓君も来るし、そんな挙動不審な事しないで』ってまともな事を言いだすんだ!


 くそっ。
 私が政海に迫って、ひんむいて舐めて転がして、完全掌握する筈だったのに!!

 どういう訳か転がされたのは、私の方なのだ。


 悔しい!
 悔しい!!


 恋愛というのは、やっぱりうまく行かないものだ。
 私は、政海が手を離した隙に逃げ出した!
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