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第16話 ~海里くんと卓くん~
Side・新庄海里/その1
しおりを挟む「え――。俺たち、今日から付き合う事になりました! ヨロシク」
休憩から戻って来た琉斗が、突然梅香と付き合う宣言をしやがった!
さらっとヨロシクなんて、なんつー羨ましい・・・・。私だって政海と・・・・。
いや。ダメだ。政海は今、卓といい仲になっているのだ。
さっきのアレ、見ただろ。思い出せ。落ち込む政海に、優しく微笑みかける卓。ああ、そこはずっと私のポジションだったのに。早くも違う男に奪われてしまうなんて!
しかし卓のヤツ、一体どういうつもりなんだ?
琴里(わたし)が好きだったんじゃないのか?
あ“――――もやもやする――――!!
私はさっきからコレの繰り返しだ。歌にも身が入らないし、最悪だ。合宿なんか来なきゃ良かった。今から帰ろうかな。
そんで、琴里の恰好して卓を誘惑して、こっぴどくフってやろうか・・・・って、ちょっと待て。イカン。そんなことをしたら・・・・――(以下私の想像)
――政海。もうだめだ。琴里さんにフラれて、俺はもう生きて行けない。
(大げさな。大の男が何を弱気な発言してんだ、って想像でもイラつく)
――大丈夫? 卓君。元気出してよ。
(政海は優しいから、きっとこう言うだろう。卓如きに愛想振りまかないで欲しい)
――政海、お前いいやつだな。琴里さんよりずっといいや。
(いきなり鞍替えか!)
――そんな事ないよ。
(ここできゃるん発動)
――政海いいいいい!
(がばっ。政海を押し倒しにかかる)
いか―――――――んっ!
いかん、いかん。I・KA・N!
おのれ卓! 私の政海に手を出すとはいい度胸してんなあああ――――っ!
どーいう見解だコラぁ!
めっためたのぎったぎたにしちゃうぞ――――!
半端ないお仕置きしちゃうからな――――!!
「よーし。重要発表も終わった事だし、練習再開といくか! さ、やろう」
琉斗がパンパンと手を叩き、ギターを肩から下げ、定位置に着いた。私も自分のマイクスタンドの定位置に立ち、正面を睨みつけた。
クソ。すっきりしない。
琉斗や梅香はともかく、政海と卓のいーかんじぶりを見せつけられ、己の妄想ではもっとイラつかされ、こんなんじゃ歌えない。
でも、ただでさえ折角の合宿で練習が上手く行っていないんだ。しかも政海と私のせいで。
琉斗に何回止められたか。アイツ、チャラい癖して音にはウルセーからな。
「おーい、海里」
「あ?」
卓に呼ばれて、鬼の形相で返事をしてしまった。
「海里、何怒ってんだよ。あ、アレか? 琉斗に梅香盗られたから腹が立って――」
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