上 下
125 / 170
第13話 ~政海ちゃんと琉斗君~

Side・斎賀政海/その8

しおりを挟む
 

「あぁ? 琉斗が梅香を好きぃ?」


 帰宅後、商店街で買ってきた総菜にプラス僕が野菜炒めを作り、炊いたご飯と一緒に出した。
 海里ちゃんと合掌して食べ始めてすぐ、今日の出来事を海里ちゃんに報告した。

「へえー。これで政海が狙われなくてすむんだな。よかった」

 海里ちゃんは心底安心したように、僕を優しい眼差しで見つめてくれた。
 おぉう。その優しい海里ちゃんの顔を見て、勘違いしそうになる!

 海里ちゃんが心底安心している→ライバルが減った→じっくり僕を攻略できる

 みたいな方程式を考えちゃう!
 そんなわけない。そんなわけない。

 こっちが正解。

 海里ちゃんが心底安心している→政海にちょっかいかける男が減って私の気苦労も減る→はー、やれやれ。政海と一緒だと気苦労が絶えん。


 ううっ。何時も迷惑かけてばかりの僕。情けない。
 
「なに暗い顔してんだよ。もしかして政海・・・・琉斗に追いかけまわされなくて残念とか思ってるんじゃ――」

「思っている訳ないよ!!」

 海里ちゃんの言葉をブッた切り、怒った顔を見せた。そんな誤解しないで欲しい!!

「あ、そっか。だよなー」

 あはは、と海里ちゃんが笑った。そして誤魔化すように話を逸らせた。「あ、この野菜炒め美味い。政海、まーた料理の腕上げた?」

「ホント? 美味しい? 良かったー」

 現金な僕は、その言葉に思わず笑顔を見せた。
 というのも、GWに一日、近所の施設で開催されたお料理体験教室に行ってきたんだ。前から商店街に貼ってあるチラシが気になっていたので、ちょっと覗いてきた。無料で体験出来て、しかも先生はとても優しい女性だった。確か名前は、櫻井美羽(さくらいみう)先生。
 僕は一度、彼女を見かけた事がある。商店街でブリを大量購入していた女性だと、その場ですぐに気が付いた。
 美羽先生は料理が本当に上手で、その日、肉じゃがの作り方を教えてくれたんだ。
 早速帰って海里ちゃんに披露したら、美味しいって喜んでくれて、全部食べてくれた!

 今は色々、練習中。また今度、施設でお料理教室があるから、行ってみようかと思っている。

 
「私も料理やってみようかな」

「えっ? 海里ちゃんが?」

 突然の海里ちゃんの発言に、僕は驚きだ。

「政海にばっかり食事作らせんの、悪いし」

「えー。そんなの気にしなくていいのに。僕、海里ちゃんとこうやって一緒にご飯食べられる事が、嬉しいんだ。まだまだ下手だけど、いっぱい練習して美味しいご飯食べて貰えるように頑張るから!」

「だから、だよ。政海と一緒にやりたいんだ」

「海里ちゃん・・・・」

「自分でもやっていけるようにしておかなきゃな。何時までもこの状況って訳にはいかないだろうし」

「それって・・・・」

 DKS(同居 解消 するってコト)?
 嫌だよ、そんな・・・・。
 海里ちゃーん・・・・。

 しょんぼりしていると、海里ちゃんが慌てて言った。

「違うから! 今の生活に不満はない! けど、健全な男女(?)がひとつ屋根の下にずっと暮らすのも、どうかと思うし・・・・。その・・・・私が堪えられるか・・・・」

「えっ?」

「とにかく! 私も料理始めるから! よろしく!」

 という訳で、今度のお料理教室に海里ちゃんも付いてくることになった。
 ううっ。どうなる事やら!?
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

上司は初恋の幼馴染です~社内での秘め事は控えめに~

けもこ
恋愛
高辻綾香はホテルグループの秘書課で働いている。先輩の退職に伴って、その後の仕事を引き継ぎ、専務秘書となったが、その専務は自分の幼馴染だった。 秘めた思いを抱えながら、オフィスで毎日ドキドキしながら過ごしていると、彼がアメリカ時代に一緒に暮らしていたという女性が現れ、心中は穏やかではない。 グイグイと距離を縮めようとする幼馴染に自分の思いをどうしていいかわからない日々。 初恋こじらせオフィスラブ

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

なし崩しの夜

春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。 さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。 彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。 信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。 つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。

小野寺社長のお気に入り

茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。 悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。 ☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。

処理中です...