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第10話 ~海里くんと美乃梨ちゃん~

Side・新庄海里/その8

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「覗くなよ」

「わっ。僕はそんな事、しないよ」

 してくれないのか。
 内心、相当ガッカリしながら着替えを持ってしきりの中に入った。このまま裸で出て行ったら、政海のヤツどうするかな――なんてバカな事を考えてみたり。

 んー、ちょっと考えてみよう。
 先ずは・・・・忘れ物をした風を装ってタオルを巻いて出てくる。ついでに何かにつまずいた風を装って政海を押し倒す。きゃー・・・・ってそんな乙女な事を私がしちゃうのか!
 政海に押し倒されたら・・・・うわあっ。どうしよう!?
 あれ。押し倒すのは私の方か。間違えた。

 これは危険だ。止めておこう。続いて・・・・美乃梨の事も解決していないのに、こういう事は良くないよな。きちんとカタ付けてから、スッキリして改めてタオル案はどうだろうか(///ω///)
 ああ、ダメだ。(///ω///)な出来事になろうと思ったなら、両想いになるのが先決だよな。政海・・・・アイツ、一体誰が好きなんだろう。こんな状態で美乃梨にライバル宣言されちゃって、どうするべきか。


 うーん。うーん。
 思考がぐるぐると回る。


 あれ。考え事をしていたら、頭がぼんやりしてきたぞ。
 拙い。動けない。
 私は湯船の中で朦朧とした。

 これ、のぼせちゃったパターン?

 さっきから皿を割ったり、風呂でのぼせたり、なんか政海みたいなドジやらかしちゃってるよ。

 
『海里ちゃん、大丈夫?』

 私が風呂からでるのが遅いから、政海が心配して外から声をかけてくれた。

「政海・・・・」

 助けて、と呟いた。もう自力で上がれない。

『ごめんっ、緊急事態だと思うから、入るよ!』

 押戸が開かれ、政海が入ってきた。黒のスウェット、似合ってる。小悪魔政人だ。

「大丈夫!?」

 私に駆け寄ってくれた政海を見ると、グラリと視界が揺れた。

「しっ、失礼します!」

 自分が濡れるのも構わずに、目を瞑って抱き上げてくれた。持ってきてくれたバスタオルで先ずは私を覆い、再び抱き上げようとしたところ――

「わっ」

 お約束。政海が身長差に耐え切れず、どしーん、と派手に転んだ。
 狭いバスルームで、タオル一枚ごしに政海と密着。私が政海を押し倒しているような形だ。

「政海・・・・」

 このまま攻めるの、アリだろ。
 行っちゃえ。


「好きだ」


 私は政海の唇に、自分の唇を押し当てた。
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