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第3話 ~政人くんと海里くん~

Side・斎賀政海/その8

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「止めろっ! 彼女が嫌がっているだろ!」

「あぁ? 何だテメーには関係ねーだろぉー」

「彼女は僕の知り合いだ。手を離せ!」

「ンだよこのチビが! すっこんでろっ」

 声を掛けていきなりパンチが飛んでくるとは思わなかったので、油断した。一応チンピラ男が放ったパンチは辛うじて避けたが、バランスを崩して尻もちをついてしまった。

「政人さん! ナンパを断ったらこの人急に怒り出して・・・・助けてっ!!」

 美乃梨ちゃんが悲愴な顔で僕に訴えてきた。
 向こうがその気なら――


 もう、今はやっていないから、いいよね。
 どうせ地元じゃないし、バレないだろ。姿も全然違うし。


 僕は素早く立ち上がってグッと踏み込んで、大男との間を詰めた。
 素早く懐に入り込み、彼の腕を手刀で叩き、美乃梨ちゃんの腕を解いた後に襟ぐりを掴み、一気に男を投げ飛ばした。

 僕が投げ飛ばした彼は一回転して、路地裏の地面に背中からどーんと着地して倒れた。
 見た目がブ男でひ弱そうだから、僕は昔から色々な人に虐められたり、カツあげされそうになったり、絡まれていたんだ。だから、護身術でも習って自己防衛しろよって海里ちゃんに散々言われていたから、中学に上がった頃から、高校卒業するまで合気道をやっていたんだよね。
 お陰で強くなった。合気道は理に適っていて、小さい身体でも相手に勝てる武術だから、僕でも色々な相手に勝てるようになったんだ。力は結構ついたと思う。
 強くなると、こういう時に女の子を守れるからいいね。一般人に技をかけたりしちゃいけないとは思うけど、向こうが勝手に美乃梨ちゃんをひどい目に遭わせようとしたんだ。しかもパンチを繰り広げてきたんだから、構わないだろ。正当防衛は成立する筈だ。


「逃げようっ」


 僕は素早く美乃梨ちゃんの手を取って、別の方へ走って逃げた。
 駅の方面に走って、別の路地へ身を潜めた。「ここまで来れば大丈夫だろ」

 政人で在る事を忘れないように、低い声を出す事を心掛けた。美乃梨ちゃんに政海だってバレたら大変だからね。

 
「怪我はない?」

 しかし政人で在る事しか頭に無かった僕は、執事としての敬語を使う事を忘れてしまった。店じゃないから、ま、いっか。

「あ、は、はいっ」

「怖かっただろ? ごめんね。もう少しスマートに守りたかったんだけど」

「い、いいえっ、あの、十分です! その・・・・助けて下さって、ありがとうございました。でも、どうして私を追いかけてくれたのですか?」

「あ、これ。店に忘れただろ。海里が気づいてくれたから、俺が持ってきた。俺の方が君の事を解っているからさ」

 ブレスレッドを手渡した。
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