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スマイル40・王様の王様VS女王とお供
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それにしても、つまらない男たち。
ここへ一体何しに来ているのよ。仕事で来ているんじゃ無いの?
女性漁りにでも来ているつもりなのかしら。私の旦那(王雅)と全然違うわ。
そう思っていると、一人思い詰めた顔をしてブツブツ言っている男が目に入った。
あら。何か物騒なものを持っているわね。いけない。止めなきゃ。
その男は、小さなペティナイフを脇腹に隠し持っていたの。一瞬だったけど、ナイフの反射が見えたから、気が付いた。
こんな所で事件を起こして騒ぎになったら、大変だわ。
物騒なものを持って震えている若い男は、見るからに気の弱そうな、優しそうな男性なのよ。髪の毛も短くおでこも広い。目も大きくて愛らしい顔をしていた。コック服を着ているから、コックさんかしら。ふわふわの顔に似て優しく柔らかそうな黒い髪を、かなり短くしているわ。清潔感もある。さっき私に声をかけてきた男たちとは違って、毒々しさとかそういうのは無かった。
真面目そうな感じが内藤さんに似ていて、放っておけない雰囲気があった。
きっと何かトラブルでもあったのね。あんなに真っ青な顔をして、かなり思い詰めているわ。
「あの、顔色が良くないようですけど、どうかされました?」
ポン、と肩を叩いて声を掛けると、男性は飛び上がる程驚いて、更に挙動不審になった。
「あ、あ、あのあの、その、だ、だだ、大丈夫ですっ」
とても大丈夫に思えない慌てぶりだった。
「大丈夫なら」私は彼の耳元で囁いた。「その物騒なもの、早く片付けた方がいいですよ。騒ぎを起こしても、貴方の人生を損させるだけ」
私の一言で、目の前の彼は目を見張って震え出した。
「貸して」
さっと彼の手からナイフを取り上げると、持ってきたクラッチバッグの中にそれを片付けた。
「折角美味しい料理が並んでいるのです。こんな所で騒ぎを起こさず、ご相伴に預かりませんか? さっき食べた小エビのリゾット、本当に美味しくて。貴方も召し上がったらいかが?」
「そのリゾット、僕が作ったんです」
震えていた彼は、ぱっと表情を明るくさせ、幾分喜びを含んだ声で教えてくれた。
「貴方が? スゴイじゃない。とっても美味しかったわ!」
お世辞抜きで美味しかった。イタリアン料理なんかは結構濃い味付けが多いけれど、上品で優しい味付は女性向きでいいと思ったのよ。
「ありがとうございます」
褒めると彼は嬉しそうにはにかみ、頬を染めた。素直な人ね。
「でも、もうすぐ作れなくなります。だから・・・・直談判をしようと思いまして」
「直談判なら、尚更こんな物騒なものはダメでしょう」
「解っています。でも・・・・社長に話をしたくても、取り次いでもらえなくて・・・・ここならお話ができると思って・・・・」
肩を落としてうなだれる彼は、本当に切羽詰まっている様子が見える。
ここへ一体何しに来ているのよ。仕事で来ているんじゃ無いの?
女性漁りにでも来ているつもりなのかしら。私の旦那(王雅)と全然違うわ。
そう思っていると、一人思い詰めた顔をしてブツブツ言っている男が目に入った。
あら。何か物騒なものを持っているわね。いけない。止めなきゃ。
その男は、小さなペティナイフを脇腹に隠し持っていたの。一瞬だったけど、ナイフの反射が見えたから、気が付いた。
こんな所で事件を起こして騒ぎになったら、大変だわ。
物騒なものを持って震えている若い男は、見るからに気の弱そうな、優しそうな男性なのよ。髪の毛も短くおでこも広い。目も大きくて愛らしい顔をしていた。コック服を着ているから、コックさんかしら。ふわふわの顔に似て優しく柔らかそうな黒い髪を、かなり短くしているわ。清潔感もある。さっき私に声をかけてきた男たちとは違って、毒々しさとかそういうのは無かった。
真面目そうな感じが内藤さんに似ていて、放っておけない雰囲気があった。
きっと何かトラブルでもあったのね。あんなに真っ青な顔をして、かなり思い詰めているわ。
「あの、顔色が良くないようですけど、どうかされました?」
ポン、と肩を叩いて声を掛けると、男性は飛び上がる程驚いて、更に挙動不審になった。
「あ、あ、あのあの、その、だ、だだ、大丈夫ですっ」
とても大丈夫に思えない慌てぶりだった。
「大丈夫なら」私は彼の耳元で囁いた。「その物騒なもの、早く片付けた方がいいですよ。騒ぎを起こしても、貴方の人生を損させるだけ」
私の一言で、目の前の彼は目を見張って震え出した。
「貸して」
さっと彼の手からナイフを取り上げると、持ってきたクラッチバッグの中にそれを片付けた。
「折角美味しい料理が並んでいるのです。こんな所で騒ぎを起こさず、ご相伴に預かりませんか? さっき食べた小エビのリゾット、本当に美味しくて。貴方も召し上がったらいかが?」
「そのリゾット、僕が作ったんです」
震えていた彼は、ぱっと表情を明るくさせ、幾分喜びを含んだ声で教えてくれた。
「貴方が? スゴイじゃない。とっても美味しかったわ!」
お世辞抜きで美味しかった。イタリアン料理なんかは結構濃い味付けが多いけれど、上品で優しい味付は女性向きでいいと思ったのよ。
「ありがとうございます」
褒めると彼は嬉しそうにはにかみ、頬を染めた。素直な人ね。
「でも、もうすぐ作れなくなります。だから・・・・直談判をしようと思いまして」
「直談判なら、尚更こんな物騒なものはダメでしょう」
「解っています。でも・・・・社長に話をしたくても、取り次いでもらえなくて・・・・ここならお話ができると思って・・・・」
肩を落としてうなだれる彼は、本当に切羽詰まっている様子が見える。
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