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スマイル36・王様の帰還

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「マサキ施設は、何の血の繋がりも無い私の為に、子供を望めなかった美幸おかあさんと、久信おとうさんが私を育てる為に建ててくれた、大切な施設なの。だから私はどんな事をしてでも、この施設を守ろうと誓った。美幸おかあさんの娘になりたくて頑張って似せていたから、アンタが素性も調べず勘違いして、私に執着してくれて助かったわ。誰かにこの土地を売られたり手放されたりしたら、困るもの」

 花井は事実から目を反らしたいようで、嘘だ、を連発して震えている。

「そういう訳だから私にもう用は無いでしょ、早くここから出て行って」

 花井を一瞥し、血筋の他にもう一つ、彼に伝えていなかった大切な事を思い出した。

「そうだ。肝心な事を言い忘れていたわ、花井」

 血筋だけだと思ったら大間違いよ。これを聞いたら、どうなるんでしょうね。


 膝をついて放心している花井を覗き込んで、言ってやった。「美幸おかあさんが死んだのは、アンタのせいよ。アンタがしつこく美幸おかあさんを追いかけて付きまとうから、おかあさん、ノイローゼになっちゃったのよ。おとうさんに付き添われて一緒に病院行く途中で・・・・雪が降っていたから、スリップして歩道に突っ込んできた車に巻き込まれて二人共死んだのよ。クリスマスなのに、悲惨だったわ。何時かアンタに教えようと思ってたの」



「そんなっ・・・・うそだ・・・・ウソだぁあぁあ――っ!!」



 花井の絶叫が、狭い部屋にこだました。
 やったわよ、おとうさん、おかあさん!
 二人を死に追いやった男の惨めな末路、確かに見届けたわよ!!


「ううっ・・・・美幸さん・・・・美幸さんが・・・・私のせいで・・・・」


 あまりの衝撃に、花井は涙を流している。
 ざまあみなさい。
 二人の敵は、取ったわよ!

 泣いている花井を爽快な気分で見つめていると、王雅が動きを見せた。


「コイツ、連れて出てくれ。後は頼む」


 きっと、SPの人達に連絡を入れたのでしょうね。すぐさま黒づくめの男たちがやって来て、花井を連れて行った。
 暫く、妙な沈黙が流れた。


「これで、解ったでしょう」私から切り出した。さあ。王様ともお別れね。「聞いての通りよ。私、素性がどこの誰かもわからない女なの。だから――」

「もう知ってるけど」王雅は間髪入れずに答えた。

「えっ?」

「横山さんから美羽の素性について、アメリカ行く前にもう既に聞いてる。花井の事や施設の事、徹底的に調べる為だ。悪く思うな。それは花井をぶちのめす最後の切り札にしようと思ってたんだけど、まさかお前からヤツに話すなんてな。驚いた」

 知っていたの。
 王雅は、私が誰の子か解らない、素性不明の女だって事――
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