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スマイル35・王様のいない日々
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ノックがかかったので出ると、噂の『恭さん』だった。
「菫さん、時間大丈夫かな? そろそろ帰ろうか?」
そうやって気を遣ってんのが、菫ちゃんの心を追い詰めているのよね。
超絶説教してやる。
「あっ、菫ちゃん」わざと菫ちゃんを強調してやった。「子供たちともう少し遊びたいって言ってたから、時間大丈夫よね? 遊戯室で、もうちょっとだけ遊んできてよ」
「ええ、いいわよ」
菫ちゃんは笑顔を見せて、応接室を出て行った。
私は恭ちゃんに自分の向かい側に座るよう、指で指示した。
「驚いた。二人は随分仲良くなったんだな」
感心したように恭ちゃんが笑顔を見せた。
「恭ちゃん、一体どういうつもり?」
「どういうつもりって、何が? それに美羽、一体何をそんなに怒っているんだ」
その言葉に、プチっと何かが切れた。
「ほんっっっっと鈍感! 菫ちゃん、さっき恭ちゃんと結婚止めるって泣いてたのよ!? 何であんな素敵な菫ちゃんに、そんな事言わせんのよ!」
「いや、美羽、落ち着いて・・・・」私の剣幕に、恭ちゃんは逃げ腰だ。
「落ち着けないわ! 菫ちゃんを泣かせたら赦さないって言ったでしょ! 何で未だに『菫さん』なんて呼んでるのよ。年齢もさっき初めて聞いたわ。私と同じ歳だって! 旦那になる年上の男に『さん』付けで呼ばれる女の気持ち、考えた事無いでしょ!? 施設に来る時、菫ちゃんが良く思わないだろうから、あれほど気を付けろって言ったのに、それも全然出来てない! 私みたいな女がいるんだから、もっと配慮してあげなきゃ。相当思い詰めてたのよ! 恭ちゃんの責任だからね!!」
恭ちゃんにムカついてたから、一気にまくしたてた。
「もっと言葉でも示してあげなきゃダメよ。私たちみたいに、何でもツーカーで解ると思ったら大間違いよ。菫ちゃんとの信頼関係は、これから築いていくんでしょ。築いている最中なんだから、もっとしっかり心をサポートしてあげないと。それには、きちんと菫ちゃんと向き合う事。信頼し合っている義理の妹なんかが自分の婚約者の傍にいたら、いい気はしないわ。ちゃんと配慮してあげて」
「・・・・面目ない」
「菫ちゃん、恭ちゃんが私の事好きだって思っているみたいだから、勘違い解いておいてよね!」
「・・・・」
恭ちゃんがじっと私の事を見た。まさか・・・・それはダメでしょ。
ふっと息を吐いて、まいったな、と恭ちゃんは呟いた。
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