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スマイル35・王様のいない日々
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しおりを挟む「美羽ちゃん、ご存知でした? 私たち、同じ歳なんですよ。もう、敬語も止めていいでしょうか? 私、美羽ちゃんと、もっと仲良くなりたい」
「私だって! す・・・・菫ちゃんって、呼んでもいい?」
お義理姉さんでもなく、菫さんでもなく、特別な、友達のような――そんな関係になれたら、どんなに楽しいだろうって思った。
っていうか、同じ歳って・・・・一体この世はどうなっているの!?
とても同じ歳に見えないんだけど!
上品すぎるわ! 育ちが違いすぎるからね、きっと!
「モチロンです!」
私のさっきの返事を真似して、涙を拭いながら菫ちゃんが笑った。
可憐で、花のように美しい笑顔。
恭ちゃんだって、気が付いているハズ。彼女の魅力、ステキな所。
「ねえ、菫ちゃん。今日、マサキ施設に来ようっていったのは、恭ちゃんの方から?」
「ええ。そうです」
結局敬語抜けて無いし。抜かしたのは、私だけ。
まあ、いいか。そのうち無くなるでしょう。
「恭ちゃんがマサキ施設の中を見せて私に案内させたのは、自分の一番大切な領域に踏み込ませたってコトよ。私だってそう。この施設に関わって来たから、ここを紹介したり、見せるのには勇気がいるの。兄は、きっと菫ちゃんにここを見て欲しかったんだと思う。どんな風に育って、どんな風に関わって来たか、未だに援助を続ける理由も含めて」
「恭さんの・・・・一番大切な場所・・・・」菫ちゃんが息を呑んだ。
「最初結婚を決めたのは、確かに施設の為だったかもしれない。でも兄は今、菫ちゃんをとても大切にしていると思う。説教クサイし堅苦しいから、解り難い人だけど」
「説教クサイ・・・・」菫ちゃんはその言葉に、思わず笑顔を見せた。「恭さんって、お父さんみたいな所が沢山あります。高田に入っても、他の社員への配慮や面倒見がとてもよくて・・・・私には勿体ない位の素敵な人・・・・」
「大丈夫、菫ちゃんだって素敵よ! 義理妹(いもうと)の私が保証する!! だから、結婚を止めるなんて言わないで。ワガママいっぱい言って、兄を困らせてもいいのよ。遠慮しちゃダメ。思ってる事ちゃんと言わなきゃ。ガンコオヤジで鈍い『恭さん』には伝わらないよ?」
「はい。では、家に戻りましたらしっかり伝えます」
「敬語止めるんじゃなかったっけ?」
「はい、そうでした。ついうっかり」
私達はお互いに顔を見合わせて笑った。
菫ちゃん――私の、お義理姉ちゃん。
でも、そんな堅苦しいんじゃなくて、友達みたいになれたらいいな。
呼び名を変えただけで、ぐっと親密度が上がったと思う。敬語が無くなったのもいいわ。
そうだわ。恭ちゃんだって『菫さん』って未だに呼んでいるのがいけないのよ。
説教ついでにここ、変えさせよう。
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