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スマイル31・王様に惚れた女
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しおりを挟む「楽しそうね。順調?」
声を掛けると、王雅がぱっと満面の王様スマイルを浮かべて私に報告してきた。
「あっ、美羽、見てくれよ! アイリのお陰でこんな大きな親子芋が掘れたんだっ! スゲーだろっ?」
予想通りね。すごくいい顔しているわ、王雅。
貴方、気づいてる?
私の好きな、その笑顔。本当の、本物の笑顔が溢れている事。
素直で、ステキな笑顔を見せている事を。
「アイリちゃんのお陰ね。ありがとう。王雅お兄さん、とっても喜んでるわね」
「いいよぉー。おーちゃんとはオトモダチだから、色々アイリが教えてあげるのぉー」
オトモダチね。いい響きね。歳の差があっても、オトモダチになれるのはいい事だわ。
「王雅、どうしたの? 凄く嬉しそうだけど」
王雅も『オトモダチ』と言われて、アイリちゃんに嬉しそうな眼差しを向けている。
まあ、オトモダチというより、兄妹か下手すれば親子に見えてしまうわ・・・・。若いパパも最近は多くなったし、王雅ほどのセクハラ大王なら、子供の一人や二人、隠し子でいてもおかしくないとは思うけど。
王雅の場合、お金持ちだから養育費の滞りなんかはなさそうだし、万が一の事があっても女性は安心ね。
それより捨てられて修羅場になって、刺されたりしなきゃいいけど。
あ、捨てられること前提で考えているけど、私はそんな事しないわよ。
王様と結婚なんて、出来るワケ無い事は解っているから。
勝手なヤキモチを焼いてしまうのは、自分の未熟さ故の事よ。それについては反省しているわ。
貧乏人はしゃしゃり出たりしないから、安心してね。
慰謝料の土地だけを頂いて、借金をチャラにしてもらって、もうそれで十分だから。
私は、マサキ施設さえあればいい。おとうさんとおかあさんが私の為に遺してくれた、この施設があれば、何も望まない。
それだけでいいの。
「あ、うん。アイリが色々教えてくれてスゲー楽しかったからさ、嬉しいんだ。それから今日、俺をここに連れてきてくれて、ありがとう。お陰で、スゲー大切な事に気が付いたんだ。予定もわざわざ俺の為に変えてくれたんだろ? 感謝してる」
「・・・・改まってお礼なんて、いいのに」
王雅は真剣に喜んでくれて、心から楽しんでくれているのね。
それは、本当に良かったわ。
改めて言われちゃったから、少しくすぐったくなった。
はにかむと、王雅が私の方を向き直った。
「ありがとう。俺、お前達がスゲー好きなんだ。どんなコトしてても、どんな時でも俺を包んでくれて、あったかくなれるから」
王雅が深く息を吸い込んだ。目が反らせない。真剣な顔で私を見つめてくれている。
目が反らせず、王雅を見つめ返した。
一体、何を伝えようとしてくれているの?
高鳴る鼓動を押さえ、彼の言葉を待った。
一度王雅の瞳が閉じられ、再び目が開けられた。
心臓が、ドキドキと早鐘を打ったように私の中で煩く鳴り響く。
聞いてしまうと、王様と奴隷の関係に終止符を打たれてしまうかもしれない。
でも真剣な王雅の顔から、目を反らす事なんて出来なかった。
「美羽、お前が――」
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