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スマイル31・王様に惚れた女

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 とりあえず怒っているフリをして、私は一人で食堂の後片付けとキッチンで洗い物をした。一人になりたかった。


 本当にバカよね。
 なんであんな男が好きなんだろう。さっさと止めれば、真凛ちゃんのコトだって、気にならないのに。
 バーベキューの時は、あんな人畜無害で今現在も高山直哉さん(彼女の好きな人)に一途なまりなちゃんにまで、モヤっとしてしまう始末だし。
 もう、どーしてくれんのよ。真凛ちゃんにまでヤキモチとか、本当にイヤだわ。王雅を取り合うなんて、もっとイヤだし。最低じゃない。


 誰か、王雅に「あーん」してあげたら、ってメッセージくれているけど、私がそんな恥ずかしいコト出来るワケないでしょ。もう。
 でも、何時もメッセージ嬉しいのよ。ありがとう。


 それより、王雅に女の影が見えない事で、今だけは私の方を向いてくれているのだと勘違いしていたけど、彼は容姿もいいし、言い寄るオンナも山程いるでしょうから、真凛ちゃんだって例外では無いと思う。
 マサキ施設を一歩出れば、どんなに他のオンナと遊んで抱いても、私には解らないし、咎める権利も無い。

 それに、あんな美人で若くてナイスバディ―(真凛ちゃんは結構男性受けする身体よ)に迫られたら、物珍しい貧乏女を追い回すのも、そのうち飽きるでしょう。そしたら抱かれる前にポイされるかもしれない。
 もうポイというか、そのまま音信不通になるかも。
 まあ、当然よね。仕方ないわ。

 ただ、施設の土地だけはキッチリ貰っておかなきゃ。他の人に売られたり譲渡されたりしたら、それこそ私は生きていけなくなる。
 好きな男とどうこうなるというのは、早々に諦めているのだから、マサキ施設だけは私のものであり続けて欲しい。他に何も要らないから。

 様々な思惑を頭に駆け巡らせながら洗った食器を拭いていると、ライタ君がやって来た。


「ミューせんせーい」

「ライタ君、どうしたの? 歯磨きはちゃんと終わった?」

「まだーのカッパー」

 ライタ君の台詞に思わず笑ってしまった。「早く済ませちゃいましょうね。虫歯になっちゃうわよ」

「はぁーい」

 素直な返事を寄こしてくれた。可愛いわね。ライタ君は、本当にヤンチャ坊主だけど。


「ねえねえ、ミュー先生。あのさー、王雅にぃのコト、好き?」

「うんっ!?」

突然王雅が好きかと聞かれて、驚いた声を返してしまった。


「あのさー、王雅にぃがね、ミュー先生のコト、キュウと同じくらいすっごい好きなんだって!! 真凛ねぇじゃなくて、ミュー先生と結婚したいって、ずっとずっとミュー先生だけが好きだって言ってんの! 王雅にぃが、間違えないようにミュー先生に言って欲しいって! だから先生は、王雅にぃのコトどう思ってんのかなーって!」

 
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