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スマイル30・王様の事情聴取
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しおりを挟む「買い物先のショッピングモールで迷子になっていた二人に声をかけて、迷子センターに預けて帰ったんだけど、その日の夜遅くに、ショッピングモールから連絡があったの。ご両親からのお迎えが無いって」
「迎えが無い? 迷子なのに親は探しに来ねーのか?」
「迎えが来ない――それはね、実のご両親から二人がそのショッピングモールに、置き去りにされたからなの」
「・・・・酷い話だな」
王雅が端正な顔をしかめた。赦せない、という顔で怒りを露にしている。
貴方も、子供を大切にしてくれるものね。酷い親は赦せないって思ってくれているのね。
「すぐ警察に連絡して、二人のご両親を探す努力はしたわ。でも、簡単には見つからないし行先も解らないから、とりあえず施設で預かる事になったの。身に着けていたお洋服に、真秀君と真凛ちゃんの名前だけが、書いてあったの。住所なんかも解らなかったわ。届けを出してもご両親は現れなくて、警察と何度もやり取りをしたわ。随分長い間頑張ったんだけど、結局、真秀君達のご両親を見つける事は出来なかった。放置されてた事が多かったからだと思うけど、二人は見知らぬ大人や子供がいるこの施設に来ても、殆ど泣かなかったのよ。幼いから両親の事も殆ど覚えてなかったし、施設にすぐ慣れたから、そのままマサキ施設で預かることになったの」
王雅は神妙な顔で、私の話に耳を傾けている。
時々、端正な顔を苦痛に歪めながら。
「二人は、マサキ施設に五年くらい居たと思う。今みたいに小さな子ばかりを沢山預かるんじゃなくて、当時は小学生くらいまでの子供も、ここでは預かっていたから、二人は割と長く居たのよ。でも、預かる人数が増えて来ちゃったから、マサキ施設では小学生以下限定で預かる事に特化したの。丁度、真凛ちゃんや真秀君の引き取り先が見つかって、彼等がマサキ施設を出て行ってから、今のスタイルになったのよ。マサキ施設は小さいし、あまり大きな子供を沢山預かれる、金銭的な余裕も無かったから」
王雅は私の言葉を聞いて、あれこれ何か考えているみたいだった。
「まあ、キノコ――あ、いや、真秀達のいきさつは解った。それで、何時、どのように、キノ・・・・じゃなくて、アイツに結婚申し込まれたんだよ」
あ、やっぱりそれ、忘れてなかった。
「それは・・・・施設を出ていく時に・・・・」
「何て?」
鋭い眼光を向けられた。
「あの・・・・だから・・・・美羽ねーちゃんが好きだから、結婚しよう、迎えに行くから待ってて、約束だよ、って言われただけよ。でも、それは真秀君が七歳か八歳くらいの時の話だし、私だって・・・・その後・・・・ずっと恭ちゃんが好きだったから、真秀君の事は忘れてたというか・・・・彼に会うのも十年以上ぶりだし・・・・」
ごにょごにょと、つぶやくように言った。
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