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スマイル29・王様と双子の兄妹

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「それより今までどうしていたの? 聞かせてよ。二人の話――・・・・」


 私たちはそれから、二人の時間が許す限り話をした。
 施設を出てからの事、引き取り先が見つかったのに馴染めなかった事、今までの生活は大変だった事、やっと仕事が決まって施設の近くに住んでいる事、もう少し落ち着いたら施設に来ようと思っていてくれていた事なんかを聞いた。

 私の事も話をした。
 久信おとうさんと美幸おかあさんが、事故で亡くなってしまった事、恭ちゃんが施設を出た事、結婚が決まった事、今までの事、色々話をした。


 そろそろ帰る時間になったので、玄関先まで二人を見送った。


「ミューちゃん、またね! また来るから!!」

 真凛ちゃんが名残惜しそうに手を振って、何度も何度も振り返り、やがて帰って行った。
 久々の二人との再会に、心が躍った。私やマサキ施設の事を覚えていてくれて、また来ようと思っていてくれた事、本当に嬉しかった。

 マサキ施設から送り出した子供たちも、そうやって施設や私の事を思い出してくれたら嬉しいな。
 引き取り先や他の施設の手前、遊びに来るのはなかなか難しいけれどね。


 それより、子供たちの事を王雅に押し付けたままだった。謝らなきゃ。
 急いで遊戯室に行くと、子供たちの声が聞こえて来た。


「王雅にぃ、やめてーっ! きゃぁはははははーっ」

「はははははっ、もう、ごめんなさーいっ、まいったぁ―!」


 楽しそうな声が聞こえた。遊戯室を覗くと、キャー、とアイリちゃんが楽しそうな悲鳴を上げながら、ドタドタ遊戯室を走り回っていた。アイリちゃんだけじゃなくて、他の子供たちも。
 王雅が子供たちを追い回している。鬼ごっこでもしているのね。本当に楽しそう。

 思わず笑みが零れた。

「みんな、今日はごめんね! 急にお客様がいらっしゃったから、お遊戯できなくて。もう帰られたから、今からいっぱいお遊戯しましょう」

 大騒ぎしている子供たちに声を掛けた。

 
「先生、別にいーよー! 王雅にぃと遊んでるからー」

「きゃあーっ、おーちゃんが来たーぁ」
 
「逃げろーっっ」


 子供たちは、遊びに夢中で私は眼中にない。


「美羽先生を捕まえろ! キューマ、いけっ」


 王雅の掛け声で、悪い顔をしたキューマ君が私の方に向かってよろよろと歩いてきた。
 
「もう少し、頑張って!! 先生はここよ」

 一生懸命一人で歩くキューマ君を、両手を広げて待った。やがてキューマ君が私にたどり着いて、つー(捕まえた)と嬉しそうに笑顔を見せてくれた。王雅の方を向いて、得意気な顔を見せている。

「捕まえた」

 大股で私の方にやって来た王雅に、突然抱きしめられた。


 止めてよ。ドキドキしちゃうから。
 思わず、貴方を受け入れてしまいたくなるでしょう。


「絶対、離してやんねーからな。他の男のトコなんて、行くなよ?」耳元で囁かれた。


 離さないとか、他の男の所へ行くな、なんて、軽々しく言わないでよ!
 どうせ飽きたら、ポイするクセに。
 そうやって今までも散々、オンナを泣かせてきたんでしょ。

 でも私、まだ捨てられたくないの。
 覚悟が出来ていないの。


 本当、どうしてくれんのよ。


 私の方から捨ててやろうと思っていたのに。




 こんなにも貴方に、この私が惹かれてしまうなんてね――




 
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