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スマイル29・王様と双子の兄妹

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「ガキ共は、俺が見とくから。遊戯室で遊ばせとく」

 機嫌の悪い声だったけど、とりえあず返事をしてくれた。
 良かった。とりあえず後で事情を説明して、解ってもらうしかないわ。

 今は、狙っている女にちょっかいをかける男が現れて面白くない――貴方の考えは、そんな所でしょう。
 去り際、王雅は真秀君を思い切り睨みつけ、子供たちを連れて施設内に入って行った。


「なんだアイツ、失礼なヤツだな」真秀君も、王雅が消えた施設の玄関の方を睨みつけた。


 どっちもどっちだと思うけど。
 敢えてツッコまずに、私たちも仕事部屋の方に向かった。

 真秀君と真凛ちゃんが二人でプリンターを運んでくれて、指定位置に設置し、更に真秀君が私の使っているパソコンでプリンターが使えるように設定してくれた。
 ものの十分程でそれは完了し、試し刷りした写真も綺麗に印刷できた。

「すごい! こんな一瞬で!! ありがとう、二人とも」

 手厚くお礼を言って、応接室の方に案内した。お茶淹れて来るから、待ってて欲しい旨を伝え、キッチンにお茶とお菓子を取りに行った。
 二人とも和菓子が好きだったから、丁度恭ちゃんが施設のみんなにお土産だって、数日前に持参してくれた『銘菓高田』のお菓子を出す事にした。
 王雅に惚れてからは、恭ちゃんを見ても辛くなくなった。心から婚約者の女性――高田菫(たかだすみれ)さんと上手く行って欲しいと思う。
 まだそんなにお話した事は無いけれど、施設に一度、きちんとご挨拶に来て下さった時にその姿を見た事を思い出した。
 亜麻色の髪を背中辺りまで伸ばして、目は大きくて愛らしく、鼻立ちは整っていて、とても品のあるお嬢様だった。綺麗で、美しくて、儚げで、守ってあげたくなるような女性だった。ガサツで乱暴な私とは、大違いよ。

 そんな菫さんと婚約中の恭ちゃんは、その経営手腕が認められ、正式に高田家の跡取りとして迎えられる事になって、きちんと結婚が正式に決まったの。今までは婚約という形で何時でも後戻り――実際はそう簡単にはいかないけれど――できる形に収まっていたけど、いよいよそうじゃなくなった。この前恭ちゃんが施設に来てくれたのは、その事を報告する為だったのよ。


 本当に、これでもう恭ちゃんが施設に戻ってくることは無くなった。


 あ、違うのよ。戻って来て欲しいって思っているんじゃないの。

 私ね、思うの。
 きっと恭ちゃんも、菫さんと一緒にいて、彼女に心を傾けて行ってるんじゃないかな、って。
 何時までも過去は引きずらず、振り返らず、今日という日を一生懸命生きたいと思うもの。

 それが、真崎家の教えだから。
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