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スマイル27・王様は無敵
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門だけじゃなくて玄関にも施錠して、急いで応接室に戻った。
施設には廊下に二台、キッチン、応接室、仕事部屋、遊戯室と複数の子機が設置してあるから、電話をするのに不便はない。
早速、佳奈美さんのお世話になっている先に電話を掛けると、すぐに友人の方が出てくれて、佳奈美さんに取り次いでくれた。
「佳奈美さん? 美羽です。あの・・・・さっき、来ました。彼です。チイちゃんのお父さん」
ひっ、と息を呑む声のようなものが受話器の向こうから聞こえて来た。
佳奈美さんは、相当恐怖を感じているハズよ。
何とかしなきゃ。でも、どうやって?
『・・・・あの・・・・信夫さんに・・・・間違いないの・・・・です・・・・か?』
恐る恐る尋ねられた。現実を受け入れたくないのだと思う。
「・・・・はい。どうにか追い返しましたが、コチラの事をかなり疑っています。非常に拙いです。早く手を打たなきゃ。とりあえずチイちゃんは渡さないようにします」
『あの・・・・智衣は無事ですか? 元気に・・・・していますか?』
「はい」
『・・・・でしたら今すぐに、智衣を迎えに行きます!』
「すぐ? いえ、もう少し様子を見られた方が・・・・今来られても、まだ近くにいるかもしれないし・・・・」
『でも、あの人の手に智衣が渡ってしまったら、きっともう私は智衣に会わせてもらえないか、家に連れ戻されて監禁されると思います。信夫さんの手に渡る前に・・・・どうにか・・・・・・・・』
お母さんが、切羽詰まった声で私に懇願した。
「わかりました。すぐ来ていただけるよう、準備だけはしておいてください。様子を見て、また連絡します。それでは、失礼します」
受話器を置いた所で、おい、と呼ばれた。
施設内にいて私に声をかけるのは王雅に決まっているのに、敏感になり過ぎていて、肩をすくめてしまった。振り返って確かめると、王雅だったのでほっと安堵の息を吐いた。
「脅かさないでよ」
「悪いな。電話中だったから声をかけずに入ったんだ。脅かそうと思ったワケじゃねーんだ」
「ううん、いいの。それより・・・・チイちゃんは?」
「ああ、布団収納のトコに隠しておいたんだ。寝ちまったから、布団敷いて遊戯室に寝かせて来た」
「そう、ありがとう」
大きなため息が漏れた。どうしよう。早急にこの問題を解決する方法を考えなくちゃ。
「どうしたんだよ。さっきの男、やっぱり本当の、本物のチイの親父なのか?」
「そうよ。何度も写真見て顔を覚えておいたから、間違いないわ。会うのは初めてだけど」
「写真? どういう事だ?」
王雅が不思議そうな顔をして、私にいきさつを尋ねた。
「ごめんなさい、まだ色々説明してなかったわね――」
王雅にこれまでの経緯を話す事にした。
チイちゃんとお母さんの事、今までの出来事を。
「今電話してたのは、チイちゃんのお母さんよ。この事を話したら、すぐ施設に来るって言ったけど、危ないからめどが立つまでもう少し様子を見ましょうって言ったの。グズグズしてたら、チイちゃんを取り返されて、お母さんも家に連れ戻されちゃうわ。そうなったらきっと、凄く酷い目に遭うと思う。だから、早く別の施設に移れるように手配しないといけないんだけど、でも・・・・私の所みたいにすぐ対応して受け入れてくれるような施設って、殆ど無いのよ。どうしよう・・・・」
広げてはみたものの、無駄だという事は解っている。他の施設の一覧名簿。
今すぐ連絡して、チイちゃんをすぐに受け入れてくれる先なんて、無い。
軽く相談はしていたけど、今はどこもいっぱいで、今すぐの対応なんて無理。
どうしたらいいの?
どうしたら・・・・。
施設には廊下に二台、キッチン、応接室、仕事部屋、遊戯室と複数の子機が設置してあるから、電話をするのに不便はない。
早速、佳奈美さんのお世話になっている先に電話を掛けると、すぐに友人の方が出てくれて、佳奈美さんに取り次いでくれた。
「佳奈美さん? 美羽です。あの・・・・さっき、来ました。彼です。チイちゃんのお父さん」
ひっ、と息を呑む声のようなものが受話器の向こうから聞こえて来た。
佳奈美さんは、相当恐怖を感じているハズよ。
何とかしなきゃ。でも、どうやって?
『・・・・あの・・・・信夫さんに・・・・間違いないの・・・・です・・・・か?』
恐る恐る尋ねられた。現実を受け入れたくないのだと思う。
「・・・・はい。どうにか追い返しましたが、コチラの事をかなり疑っています。非常に拙いです。早く手を打たなきゃ。とりあえずチイちゃんは渡さないようにします」
『あの・・・・智衣は無事ですか? 元気に・・・・していますか?』
「はい」
『・・・・でしたら今すぐに、智衣を迎えに行きます!』
「すぐ? いえ、もう少し様子を見られた方が・・・・今来られても、まだ近くにいるかもしれないし・・・・」
『でも、あの人の手に智衣が渡ってしまったら、きっともう私は智衣に会わせてもらえないか、家に連れ戻されて監禁されると思います。信夫さんの手に渡る前に・・・・どうにか・・・・・・・・』
お母さんが、切羽詰まった声で私に懇願した。
「わかりました。すぐ来ていただけるよう、準備だけはしておいてください。様子を見て、また連絡します。それでは、失礼します」
受話器を置いた所で、おい、と呼ばれた。
施設内にいて私に声をかけるのは王雅に決まっているのに、敏感になり過ぎていて、肩をすくめてしまった。振り返って確かめると、王雅だったのでほっと安堵の息を吐いた。
「脅かさないでよ」
「悪いな。電話中だったから声をかけずに入ったんだ。脅かそうと思ったワケじゃねーんだ」
「ううん、いいの。それより・・・・チイちゃんは?」
「ああ、布団収納のトコに隠しておいたんだ。寝ちまったから、布団敷いて遊戯室に寝かせて来た」
「そう、ありがとう」
大きなため息が漏れた。どうしよう。早急にこの問題を解決する方法を考えなくちゃ。
「どうしたんだよ。さっきの男、やっぱり本当の、本物のチイの親父なのか?」
「そうよ。何度も写真見て顔を覚えておいたから、間違いないわ。会うのは初めてだけど」
「写真? どういう事だ?」
王雅が不思議そうな顔をして、私にいきさつを尋ねた。
「ごめんなさい、まだ色々説明してなかったわね――」
王雅にこれまでの経緯を話す事にした。
チイちゃんとお母さんの事、今までの出来事を。
「今電話してたのは、チイちゃんのお母さんよ。この事を話したら、すぐ施設に来るって言ったけど、危ないからめどが立つまでもう少し様子を見ましょうって言ったの。グズグズしてたら、チイちゃんを取り返されて、お母さんも家に連れ戻されちゃうわ。そうなったらきっと、凄く酷い目に遭うと思う。だから、早く別の施設に移れるように手配しないといけないんだけど、でも・・・・私の所みたいにすぐ対応して受け入れてくれるような施設って、殆ど無いのよ。どうしよう・・・・」
広げてはみたものの、無駄だという事は解っている。他の施設の一覧名簿。
今すぐ連絡して、チイちゃんをすぐに受け入れてくれる先なんて、無い。
軽く相談はしていたけど、今はどこもいっぱいで、今すぐの対応なんて無理。
どうしたらいいの?
どうしたら・・・・。
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