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スマイル24・王様を翻弄する女王

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 あら。誰か私が小悪魔だって言ってるわね。
 ありがとう。小悪魔なんてカワイイわね。そんな程度でいいなんて。うふふ。


 それより王様の様子よ。もう、必死。
 私のセリフで緊張したのかかなり力が入ってしまい、透明のフィルムが折れ曲がりそうな程強くそれを握りしめている。

 百戦錬磨の王様が、恋愛オンチのチェリーボーイみたいになっているわよ。
 こんな貧乏女に振り回されて、笑っちゃうわ。
 

 面白いのでもう一度囁いた。「あっ、ダメっ、そんなに乱暴にしちゃ・・・・」


 ふふっ。王雅ったら、今までにないくらい焦っているわ。
 エロく囁いたりして俺を誘ってんのか、とか、どういうつもりだ、とか諸々考えているんでしょう。
 プルプル身体も震えているし。あはは。

 その調子でもっと考えてよ、私のコト。
 貴方が暴走するまでは、超鈍感女でいてあげる。
 貴方が好きだなんて誰にも気が付かれないように、鈍感でバカなフリしておくわ。

 今は、貴方を誰にもやりたくないの。私だけが独占しておきたい。
 意地悪してごめんね。


 貴方が私に飽きるまでは、こうして楽しませてよ。


 どうせすぐに飽きて、捨てられるんだから。
 こんなお遊びは、ほんの短い間だけだって解っているから。
 

「はい、できたっ」


 ブラック女王、今日はここまでにしておくわ。
 また、楽しませてよね。

「一緒にやったら、ちゃんとできたでしょ?」

「ああ、うん」

 心ここにあらず状態で、王雅が震えている。きっと手を出すのを堪えているんでしょう。
 貴方、相当なセクハラ大王ですもんね。
 まあそういうのは、私の知らない所で発散しておいてよ。女の影とか見せないで欲しい。顔も知らない女に、ヤキモチなんか焼きたくないし。


「どうしたの? さっきから怖い顔して」


 あまりに王雅の反応が面白くて、つい覗き込んでしまった。

「やっ、べ、別にっ! なっ、な、何でもねーって! それ以上、近寄るなっっ」

 解っているわよ。貴方の顔に書いてある。
 私に嫌われないように、我慢して手を出すのを堪えているんでしょう?

「なによ、近寄るな、なんて失礼ね。人をバイキンみたいに」

 すっとぼけた女を演じて、怪訝そうな顔を見せた。

「頼むから離れろっ。俺は、出禁になりたくねーんだ!」

「出禁って何よ」

 よく解らないけど、王雅ルールなのかしら。
 私に手を出したりしたら、施設に出入り禁止になるとか?
 それ、面白いわね。手を出されたら捨てられる前に、そうしてやろうかしら。
 更に顔を近づけようとしたら、ストップが掛けられた。

「いーからっ! 何でもねーよっ! ほらっ、あ、あの、そうだっ、ノド乾いたっ! 飲み物くれっ、持ってきてくれ、早く! 今すぐっ!!」

「エラソーね」

「今に始まったことじゃねーだろっ! 俺がエラソーなのは生まれつきだっ。早く、何でもいーから、とにかく持ってきてくれ!」

 必死で叫ぶ王雅が可愛くて、これ以上は笑いを堪えられる自信が無かったので、私の方から離れた。

「しょうがない王様ね」

 セクハラ大王が、セクハラを堪えるのは大変でしょう。
 まあ、頑張ってよね。


 立ち上がって応接室を出て飲み物を取りにキッチンへ向かう時、アイリちゃんがこっそり応接室を覗いているのが目についた。
 物陰から様子を見ていると、王雅が応接室から出て来て、アイリちゃんを中に入れてくれていた。

 アイリちゃんたら、また眠れなかったのかしら。
 彼女は相当酷いネグレクトに遭ったおかげで、随分治ってきているけど、眠れなかったら必ず起きて私の傍にやって来る。なぜかは解らないけど、甘えさせてくれる大人に縋っていくんだと思う。
 置き去りにされたくないっていう、キモチの表れなのかもしれない。
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