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スマイル23・王様お菓子の家を作る

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 私は他の片づけや用事をすることにして、子供たちの相手は王雅に任せた。
 お昼ご飯は何にしようかしら。とりあえずお米を炊く準備をしておこう。

 そんな風に用事をこなしていると、午前十時前になった所で、キンコーン、と来客の呼び鈴が鳴った。
 誰かしら、と思いながら外へ出ると、何かの業者みたいな人が二人、大きな荷物を運んできていて、門の前に立っていた。

「すみません、櫻井王雅様はこちらにいらっしゃいますか?」

「ええ。少々お待ちください」

 遊戯室まで行って、子供たちと遊んでいた王雅に声を掛けた。「王雅にお客様よ」

「ああ。来たんだな。よしっ! 今からこの遊戯室は少しの間封鎖だ。面白いモン作るから、絶対に覗くなよ!! 覗いたヤツはお仕置きだ」

「はぁーいっ」

「とりあえず食堂にでも行っておいてくれ。いいか、絶対に覗いたらダメだかんな」

 遊戯室は王雅によって封鎖されたので、遊戯室にあった紙芝居や絵本を何冊か持ち出して食堂に行った。
 丁度いいわ。子供たちに何か絵本読んであげよう。
 とりあえず子供たちを前の方に集合させて、持ってきた本の一番上にあった童話『ヘンゼルとグレーテル』を読んだ。

 この話は、早い話が貧乏な四人暮らしの親子が、いよいよ食べるものが無くなってしまい、苦渋の決断をした親が、子供を傍の薄暗い森の奥へ捨ててしまおうとするの。
 何時の時代も、貧困は実の親でさえ悪魔に変えるのね。ため息をつきたくなるような冒頭だわ。
 私にしたら、考えられない決断だけどね。
 何をさしおいてでも守らなきゃならない存在だと思うのよね、子供って。
 私は絶対にそんな事しないわよ!
 食べるものがあるなら、私の分は全部子供にあげる。どうしようもなくなって子供を捨てるくらいなら、一緒に心中するわ。


 そんな酷い両親に捨てられた、兄――ヘンゼルと、妹――グレーテルが力を合わせて家に戻ろうとするけど結局戻れなくて、暗い夜の森を彷徨っていると、森の奥に建っているお菓子の家を見つけるの。
 お菓子の家は、彼等の理想そのもの。でも、これは罠なの。悪い魔女が、子供を食べようとして捕まえる為のものなのよ。
 最初は悪い魔女に捕らえられてピンチになるけど、再び兄妹で力を合わせて魔女を退治するというお話。

 その後は描かれていないから、この兄弟がどうなったかは分からない。

 でも、この物語の彼等が何時までも二人で仲良く幸せに暮らせたらいいのに、と、読むたびに思う。
 この物語は暗い話だと思うけど、子供たちに夢を持たせるための童話なのだから、努めて楽しく読んだ。
 子供たちは目を輝かせて、悪い魔女をやっつけたぞー、とか、二人が助かって良かったー、とか、物語の結末に満足して喜んでいる。



 その様子を王雅は、優しい笑顔を浮かべて始終見つめていた。



 絵本というのは、どんな物語でも私達の時間を楽しいものに変えてくれるのね。
 マサキ施設の物語も、そうであったらいいわね。



 私は、大切なこの城――マサキ施設が、何時でも誰でも幸せになれる、そんな場所であり続けられるように、これからも努力するわ。
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