125 / 287
スマイル23・王様お菓子の家を作る
4
しおりを挟む
私は他の片づけや用事をすることにして、子供たちの相手は王雅に任せた。
お昼ご飯は何にしようかしら。とりあえずお米を炊く準備をしておこう。
そんな風に用事をこなしていると、午前十時前になった所で、キンコーン、と来客の呼び鈴が鳴った。
誰かしら、と思いながら外へ出ると、何かの業者みたいな人が二人、大きな荷物を運んできていて、門の前に立っていた。
「すみません、櫻井王雅様はこちらにいらっしゃいますか?」
「ええ。少々お待ちください」
遊戯室まで行って、子供たちと遊んでいた王雅に声を掛けた。「王雅にお客様よ」
「ああ。来たんだな。よしっ! 今からこの遊戯室は少しの間封鎖だ。面白いモン作るから、絶対に覗くなよ!! 覗いたヤツはお仕置きだ」
「はぁーいっ」
「とりあえず食堂にでも行っておいてくれ。いいか、絶対に覗いたらダメだかんな」
遊戯室は王雅によって封鎖されたので、遊戯室にあった紙芝居や絵本を何冊か持ち出して食堂に行った。
丁度いいわ。子供たちに何か絵本読んであげよう。
とりあえず子供たちを前の方に集合させて、持ってきた本の一番上にあった童話『ヘンゼルとグレーテル』を読んだ。
この話は、早い話が貧乏な四人暮らしの親子が、いよいよ食べるものが無くなってしまい、苦渋の決断をした親が、子供を傍の薄暗い森の奥へ捨ててしまおうとするの。
何時の時代も、貧困は実の親でさえ悪魔に変えるのね。ため息をつきたくなるような冒頭だわ。
私にしたら、考えられない決断だけどね。
何をさしおいてでも守らなきゃならない存在だと思うのよね、子供って。
私は絶対にそんな事しないわよ!
食べるものがあるなら、私の分は全部子供にあげる。どうしようもなくなって子供を捨てるくらいなら、一緒に心中するわ。
そんな酷い両親に捨てられた、兄――ヘンゼルと、妹――グレーテルが力を合わせて家に戻ろうとするけど結局戻れなくて、暗い夜の森を彷徨っていると、森の奥に建っているお菓子の家を見つけるの。
お菓子の家は、彼等の理想そのもの。でも、これは罠なの。悪い魔女が、子供を食べようとして捕まえる為のものなのよ。
最初は悪い魔女に捕らえられてピンチになるけど、再び兄妹で力を合わせて魔女を退治するというお話。
その後は描かれていないから、この兄弟がどうなったかは分からない。
でも、この物語の彼等が何時までも二人で仲良く幸せに暮らせたらいいのに、と、読むたびに思う。
この物語は暗い話だと思うけど、子供たちに夢を持たせるための童話なのだから、努めて楽しく読んだ。
子供たちは目を輝かせて、悪い魔女をやっつけたぞー、とか、二人が助かって良かったー、とか、物語の結末に満足して喜んでいる。
その様子を王雅は、優しい笑顔を浮かべて始終見つめていた。
絵本というのは、どんな物語でも私達の時間を楽しいものに変えてくれるのね。
マサキ施設の物語も、そうであったらいいわね。
私は、大切なこの城――マサキ施設が、何時でも誰でも幸せになれる、そんな場所であり続けられるように、これからも努力するわ。
お昼ご飯は何にしようかしら。とりあえずお米を炊く準備をしておこう。
そんな風に用事をこなしていると、午前十時前になった所で、キンコーン、と来客の呼び鈴が鳴った。
誰かしら、と思いながら外へ出ると、何かの業者みたいな人が二人、大きな荷物を運んできていて、門の前に立っていた。
「すみません、櫻井王雅様はこちらにいらっしゃいますか?」
「ええ。少々お待ちください」
遊戯室まで行って、子供たちと遊んでいた王雅に声を掛けた。「王雅にお客様よ」
「ああ。来たんだな。よしっ! 今からこの遊戯室は少しの間封鎖だ。面白いモン作るから、絶対に覗くなよ!! 覗いたヤツはお仕置きだ」
「はぁーいっ」
「とりあえず食堂にでも行っておいてくれ。いいか、絶対に覗いたらダメだかんな」
遊戯室は王雅によって封鎖されたので、遊戯室にあった紙芝居や絵本を何冊か持ち出して食堂に行った。
丁度いいわ。子供たちに何か絵本読んであげよう。
とりあえず子供たちを前の方に集合させて、持ってきた本の一番上にあった童話『ヘンゼルとグレーテル』を読んだ。
この話は、早い話が貧乏な四人暮らしの親子が、いよいよ食べるものが無くなってしまい、苦渋の決断をした親が、子供を傍の薄暗い森の奥へ捨ててしまおうとするの。
何時の時代も、貧困は実の親でさえ悪魔に変えるのね。ため息をつきたくなるような冒頭だわ。
私にしたら、考えられない決断だけどね。
何をさしおいてでも守らなきゃならない存在だと思うのよね、子供って。
私は絶対にそんな事しないわよ!
食べるものがあるなら、私の分は全部子供にあげる。どうしようもなくなって子供を捨てるくらいなら、一緒に心中するわ。
そんな酷い両親に捨てられた、兄――ヘンゼルと、妹――グレーテルが力を合わせて家に戻ろうとするけど結局戻れなくて、暗い夜の森を彷徨っていると、森の奥に建っているお菓子の家を見つけるの。
お菓子の家は、彼等の理想そのもの。でも、これは罠なの。悪い魔女が、子供を食べようとして捕まえる為のものなのよ。
最初は悪い魔女に捕らえられてピンチになるけど、再び兄妹で力を合わせて魔女を退治するというお話。
その後は描かれていないから、この兄弟がどうなったかは分からない。
でも、この物語の彼等が何時までも二人で仲良く幸せに暮らせたらいいのに、と、読むたびに思う。
この物語は暗い話だと思うけど、子供たちに夢を持たせるための童話なのだから、努めて楽しく読んだ。
子供たちは目を輝かせて、悪い魔女をやっつけたぞー、とか、二人が助かって良かったー、とか、物語の結末に満足して喜んでいる。
その様子を王雅は、優しい笑顔を浮かべて始終見つめていた。
絵本というのは、どんな物語でも私達の時間を楽しいものに変えてくれるのね。
マサキ施設の物語も、そうであったらいいわね。
私は、大切なこの城――マサキ施設が、何時でも誰でも幸せになれる、そんな場所であり続けられるように、これからも努力するわ。
0
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
メイドから家庭教師にジョブチェンジ~特殊能力持ち貧乏伯爵令嬢の話~
Na20
恋愛
ローガン公爵家でメイドとして働いているイリア。今日も洗濯物を干しに行こうと歩いていると茂みからこどもの泣き声が聞こえてきた。なんだかんだでほっとけないイリアによる秘密の特訓が始まるのだった。そしてそれが公爵様にバレてメイドをクビになりそうになったが…
※恋愛要素ほぼないです。続きが書ければ恋愛要素があるはずなので恋愛ジャンルになっています。
※設定はふんわり、ご都合主義です
小説家になろう様でも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる