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スマイル22・王様が女王の恩人を救う
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しおりを挟む「みんなーっ、玄関に集合してーっ!! 王雅お兄さん、もう帰って来るってーっ!!」
大声で叫ぶと、子供たちがドタドタと足音を立てて、ヤッター、とか、キャッホー、とか、イエーイ、待ってましたー、とか言いながら玄関に集まってきた。
王雅が戻って来るのが、みんなもそんなに嬉しいのね。
全員で息を呑んでスタンバイしていると、ギイイイという錆びた門の開く音が外から聞こえて来た。
帰ってきたっ!
ガラガラと横開きの玄関の扉が開けられて――
「お帰りなさーいっ!!」
子供たちが王雅を取り囲んだ。
「なんだよ、お前等・・・・」王雅は驚いて目を開いている。
「お帰りなさい、王雅」
貴方が帰って来てくれて、とっても嬉しいわ!
「お兄さん、待ってたよ~っ! お帰り~っ!!」
「僕と遊んでっ!」
「私と一緒に遊ぼうっ!」
王雅を取り囲んでいる子供たちが、口々に思いのたけを伝えている。
彼は子供たち全員を手いっぱい抱きしめて、ぽつりと呟いた。
「ただいま」
戸惑っているけど、でも、凄く嬉しそうな顔で。
「よーし、全員まとめてかかってこい! 俺様が相手してやる」
張り切って王雅が叫んだ。
「わーい!!」
子供たちが走り出し、王雅がその後を楽しそうに追いかけて走って行った。
「楽しく生きている事と、美味しいご飯が食べられる事に感謝して・・・・いただきます」
夕飯の時間。何時ものお祈りをして、食事を開始した。
土日は王雅がいるから、食卓がいつも以上ににぎやかになる。おかずのおかわり争奪戦が繰り広げられるの。王雅も遠慮しないで子供たちに混じって争奪するから、結構本気のバトルが繰り広げられる。
王雅に早速、エビピラフとポテトサラダのおかわりを求められた。そうなると子供たちもこぞって私におかわりのお皿を向けてくる。
「順番に入れるから待ってね」
最近、結構な量を作る割に何も残らない。王雅が何でも好き嫌いせずに食べてくれるから、子供たちも負けずに食べるのよ。
作り甲斐があって嬉しいけど、王雅はエビピラフなんかよりももっと高級なエビリゾットとか、ポテトサラダでない何か複雑な高級なものを食しているだろうと予想している。こんな庶民の私が作った食事で、満足できているのかしら。
夕食が終わると、後片付けをしている間に王雅が子供たちといっぱい遊んでくれて、手分けしてお風呂に入れ、遊戯室にお布団を引いて、全員を寝かせた。
電気を消して暗くすると、あっという間にみんな眠ってしまった。
応接室で王雅が横山さんの為に契約書類を作ってくれるというので、私も一緒に内職をすることにした。
王雅は持参したノートパソコンを開いて、慣れた手つきで作業を進めていく。スピードもなかなかのものね。仕事が早く、出来る男なのだと感心した。
そうだわ。ちゃんとお礼を言っていない。
王雅が私の恩人を助けてくれた事、そのお礼を。
「王雅、色々、本当にありがとう」
「何がだよ」王雅が作業の手を止め、画面から顔を上げて私を見た。
「王雅が帰ってくる前、横山さんから連絡があったの。王雅のおかげで、工場を手放さなくてすみそうだって。手厚く礼を言っておいてくれって」
「ああ、別に。さっきもお前に伝えたと思うけど、俺は、見込みのない会社には投資なんて絶対しないからな。横山の製品が良かったんだ。それに、おかげで今後の明確なプランも立てれたし、俺としても、横山のトコ行けて良かったぜ」
そうだったの。同情とかじゃなくて、ちゃんと貴方が横山さんの製品を認めて、投資を決めてくれたのね。何だか救われた。
そうじゃなかったら、約束を反故にされたりしないよう、最低な取引を持ち掛ける覚悟で口を開いたから。
「そう。でも、王雅ってスゴイね。ちょっと話聞いただけで、色々判っちゃうんだもの。横山さんが施設の前の土地の持ち主だったなんて、貴方に話してないのに」
「前に美羽が言ってただろ。花井の前の持ち主は、金も取らずにこの土地を貸してくれてたって。だから、話の内容や、優しそうな容姿からして、横山の事だろうなって思った。それだけの事だ」
「そっか・・・・」
もの凄く勘がいいのね。ただの道楽息子だとバカにしていたけど、本当は全然違うのね。
そんな一面、知りたくなかった。もうこれ以上、貴方に惹かれたくない。
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