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スマイル21・王様とお寿司パーティー
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早速お米屋さん――片山精米店に行って、お米を大量に買った。このお店は、初老の片山さんご夫婦がお二人で営んでいる、商店街の中にある小さなお米屋さんだ。
沢山お米を買ったのはいいけれど、私と王雅では持ちきれないから、ご主人の方がすぐ施設に届けてくれると言ってくれた。ついでにお酢三本、お酒二本、お砂糖三袋、昆布一パック、焼海苔二十パックも頼んでおいた。
片山精米店は簡単な物品も売っているし、一緒に持ってきてもらえたら助かるわ。足りないものは後からスーパーで買いましょう。
おかあさんがツケでもいいよって言ってくれたけど、すぐ現金で払うから、って王雅が全部支払ってくれた。
「釣りとかめんどくせーから、施設の米、とりあえずこの釣りで買っておいてやる」
「えっ!?」
また王雅が驚くことを言い出した。
王雅は五十万円の現金が入っていたうちの、残りの現金を全ておかあさんに押しつけた。「足りなくなったら、俺にまた請求してくれ。支払いはこれから、俺が全部するから」
「あらー、ありがとう! いっぱいサービスしておくわねっ」
おかあさんは、大喜びだ。
「ホントか!? いい店だな。また買いに来るから」
王雅が満面の笑みで愛想を振りまいたら、おかあさんが、きゃあああ、ステキー、と悲鳴を上げた。
美羽ちゃんちょっと、と手招きされて、カウンターの奥へ呼ばれた。
「ちょっとちょっと、美羽ちゃんのカレシ、凄いねえっ! カッコイイし、ニコニコ現金払いでお金払ってくれるし、いい男捕まえたねっ!!」
「いや、カレシじゃない・・・・」
「美羽ちゃんっ!!」食い気味で詰め寄られた。「あんないい男、何としてもゲットしておかなきゃ!! さっさと既成事実でも作って、すぐにでも結婚しちゃいな!」
「け・・・・」
おかあさんパワー、凄い。
「あんな大物、逃がしちゃいけないよ! 笑顔が素敵じゃないか! カレシが美羽ちゃんについてくれてたら、片山精米店も安泰だ。私達夫婦も助かるし、美羽ちゃんも助かるし、いいことづくめだよ! 今日はいっぱい買ってくれて、ありがとうねぇ」
手を取って感謝された。
そりゃ、そうよね。
一日で五十万円も売り上げたら、片山精米店も嬉しいわよね。
複雑な気分になった。
でも、これ以上はもう遣わせないわ!
そう思っていたら、スーパーに寄る前に王雅が駄菓子屋さんの前で足を止めた。
ここは糸井さんというもうすぐ御年八十歳のおばあちゃんが営む、小さな駄菓子屋さん。子供たちのおやつを買いに来るのは、何時もここなの。
イヤな予感がした。
このまま駄菓子屋さんのお菓子を買い占められたりしたら、子供たちが虫歯になっちゃう!!
「王雅、お菓子の買い占めはダメよ」
買われる前に牽制を掛けた。
「なんでだよ」
「お菓子ばっかり子供たちに食べさせたら虫歯になっちゃうし、御飯食べなくなっちゃうわ」
「あ、そっか。んー・・・・でもアイツ等にお菓子いっぱい買って帰るって約束したからさー、何も無しっつーのはガッカリさせちまうから・・・・何か買ってもいい?」
「わかった。一人一個ずつね。ケンカになるから、種類は同じのでいいわ」
「じゃあ、そうする」
王雅が選んだお菓子は、一個六十円のスナック菓子だった。ライタ君が好きなウルトライダーQのヒーローが描かれたお菓子、アイリちゃんが好きなプリンセスアラモードのヒロインが描かれたお菓子を、男の子の人数分、女の子の人数分、それぞれを購入した。
「もっと買いたかったのになぁー」
千円にも満たない金額を万札で支払って、糸井さんがそろばんを弾いて奥へお釣りを取りに行くのを名残惜しそうに王雅が見つめた。他にもいっぱい買ったらガキ共もっと喜んだのに、ってブツブツ言ってる。
沢山お米を買ったのはいいけれど、私と王雅では持ちきれないから、ご主人の方がすぐ施設に届けてくれると言ってくれた。ついでにお酢三本、お酒二本、お砂糖三袋、昆布一パック、焼海苔二十パックも頼んでおいた。
片山精米店は簡単な物品も売っているし、一緒に持ってきてもらえたら助かるわ。足りないものは後からスーパーで買いましょう。
おかあさんがツケでもいいよって言ってくれたけど、すぐ現金で払うから、って王雅が全部支払ってくれた。
「釣りとかめんどくせーから、施設の米、とりあえずこの釣りで買っておいてやる」
「えっ!?」
また王雅が驚くことを言い出した。
王雅は五十万円の現金が入っていたうちの、残りの現金を全ておかあさんに押しつけた。「足りなくなったら、俺にまた請求してくれ。支払いはこれから、俺が全部するから」
「あらー、ありがとう! いっぱいサービスしておくわねっ」
おかあさんは、大喜びだ。
「ホントか!? いい店だな。また買いに来るから」
王雅が満面の笑みで愛想を振りまいたら、おかあさんが、きゃあああ、ステキー、と悲鳴を上げた。
美羽ちゃんちょっと、と手招きされて、カウンターの奥へ呼ばれた。
「ちょっとちょっと、美羽ちゃんのカレシ、凄いねえっ! カッコイイし、ニコニコ現金払いでお金払ってくれるし、いい男捕まえたねっ!!」
「いや、カレシじゃない・・・・」
「美羽ちゃんっ!!」食い気味で詰め寄られた。「あんないい男、何としてもゲットしておかなきゃ!! さっさと既成事実でも作って、すぐにでも結婚しちゃいな!」
「け・・・・」
おかあさんパワー、凄い。
「あんな大物、逃がしちゃいけないよ! 笑顔が素敵じゃないか! カレシが美羽ちゃんについてくれてたら、片山精米店も安泰だ。私達夫婦も助かるし、美羽ちゃんも助かるし、いいことづくめだよ! 今日はいっぱい買ってくれて、ありがとうねぇ」
手を取って感謝された。
そりゃ、そうよね。
一日で五十万円も売り上げたら、片山精米店も嬉しいわよね。
複雑な気分になった。
でも、これ以上はもう遣わせないわ!
そう思っていたら、スーパーに寄る前に王雅が駄菓子屋さんの前で足を止めた。
ここは糸井さんというもうすぐ御年八十歳のおばあちゃんが営む、小さな駄菓子屋さん。子供たちのおやつを買いに来るのは、何時もここなの。
イヤな予感がした。
このまま駄菓子屋さんのお菓子を買い占められたりしたら、子供たちが虫歯になっちゃう!!
「王雅、お菓子の買い占めはダメよ」
買われる前に牽制を掛けた。
「なんでだよ」
「お菓子ばっかり子供たちに食べさせたら虫歯になっちゃうし、御飯食べなくなっちゃうわ」
「あ、そっか。んー・・・・でもアイツ等にお菓子いっぱい買って帰るって約束したからさー、何も無しっつーのはガッカリさせちまうから・・・・何か買ってもいい?」
「わかった。一人一個ずつね。ケンカになるから、種類は同じのでいいわ」
「じゃあ、そうする」
王雅が選んだお菓子は、一個六十円のスナック菓子だった。ライタ君が好きなウルトライダーQのヒーローが描かれたお菓子、アイリちゃんが好きなプリンセスアラモードのヒロインが描かれたお菓子を、男の子の人数分、女の子の人数分、それぞれを購入した。
「もっと買いたかったのになぁー」
千円にも満たない金額を万札で支払って、糸井さんがそろばんを弾いて奥へお釣りを取りに行くのを名残惜しそうに王雅が見つめた。他にもいっぱい買ったらガキ共もっと喜んだのに、ってブツブツ言ってる。
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